表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_30 プロの彼女ら、学生のおれたち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

319/1358

30-3 おれの失敗、または、五ツ星昇格記念ショーバトルのときのこと

2020.07.20

誤字修正いたしました。

パワー減→パワー源


 ――炎をくぐったイツカの胸元、真っ赤に染まった魔晶石が砕け散る――


 その時の記憶はあんまりなかった。

 しかし、いざ作業台のまえに立てば、まざまざとよみがえってきた。

 おれがむりやりに閉じ込めていた、この光景が。

 そしてその時に感じた、衝撃が。



 先週金曜のショーバトル。

 おれたちのまえに立ちはだかるのは、真っ赤な巨体に、長い首、太い四つ足。頭の所在は地上5mに達しようかという、そろそろレッサー卒業サイズのフレイムレッサードラゴン。

 力を溜め、背中の竜翼を広げれば、その周囲にスイカほどの炎弾が無数に現れる。

 燃える礫は咆哮とともに、バラバラとこちらに飛んできた。


 イツカはかわし、しのぎ、あるいは払って距離を詰めていく。

 最後にひときわ大きな炎弾に自ら突っ込み、そのまま駆け抜け右前脚を狩ろうとした。

 そのときだ。これが、起きたのは。



 そのときのおれは我ながらすごかったと思う。

 ボーゼンとしながらも、イツカの声を聴き分け。ボーゼンとしながらも、正確に『斥力のオーブ』二発を撃ちだし。ボーゼンとしながらも、イツカに声をかけ。

 全部、正確無比にこなしていたのだ。

 動画の中のおれは、動揺をひとつも出さないままだった。



 実況は『おれの作ったお守りが、イツカの身代わりになって勝利を呼んだ』と絶賛していた。

 膝から崩れかけたおれを、駆け戻ったイツカが抱いて支えれば、場内は割れんばかりの歓声に揺れた。

 しかしおれにはどれもこれも、ぜんぜん聴こえていなかった。

 ああ、おれの力作が。三日三晩かけて精錬した『深淵の魔晶石』がこんなことで。設計ミスだ。すぐ直さなきゃ。魔力回路を炎弾のパワーが逆流、結晶に集中し破壊してしまったのだ。まずは、う回路を作り、そこに魔力吸収用のカラ結しょ……


「カーナタ! スマイルスマイル!」


 そのとき、イツカの声が聞こえた。

 それだけは、不思議と聞こえた。

 おれは一つ深呼吸し、気持ちを切り替える。

 支えてくれる腕を頼りに体勢を立て直し、晴れやかな笑顔で手を振った。



 おれはあのとき、強引に気持ちを切り替えた。動揺とその源を押し込めた。

 そうだ、いまは勝利者として、五ツ星としての笑顔を。仮メンテはチームで引き受けてもらっているから、まずは仮眠してごはんたべて試験勉強の――


 だから、その時の記憶はあんまりなかった。

 しかし、いざ作業台のまえに立てば、まざまざとよみがえってきた。

 おれの失敗。そして、挽回のためにやるべきことも。



 * * * * *



 さきの海合宿の直後。おれは、イツカとおれの防具に『ある機構』を組み込んでいた。

 その名も『きせかえ強化機構』。

 ざっくり言うと、ブローチの石をつけ替えることで、防具の属性チェンジができるようにするしくみ。

 防具にミスリル糸を織り込み、その糸につながったブローチに魔力結晶をセットすると、結晶からひきだされたパワーが防具全体に広がって、強化をしてくれるのだ。


 ぱっと見は、子供向けアニメっぽい感じもするが……

 いいとこづくめのこれは、全冒険者のあこがれといっていいものだ。


 結晶を付け替えることで属性を変えられ、付け外しにより強化をオンオフでき、結晶を再利用することができるというのは、実際きわめて有用なのだ。

 魔法や護符、ポーションによる強化は、用済みとなっても効果が切れるのを待つか、破棄しかない。つまり『まるごと使い捨て』なのだ。それとくらべれば、その経済性はけた違い。

 さらにはインベントリも圧迫しない。パワー減となる結晶は、モンスタードロップなどやアイテム店で、割とたやすく入手できる。


 これや、これを組み込んだ防具はもちろん市販されている。が、すっごく高い。なにより手入れが自力でできないようになっている。いつか自作したい、夢のシステムだったのだ。

 それゆえ先週、これを組み込んだアーマーと服を装備したとき、イツカとおれは子供のように大はしゃぎしたものだった。



 しかしその喜びもつかの間。エキシビションバトルでまさかの弱点が露呈した。

 レッサードラゴンの炎弾をもらったイツカの胸元、機構全体にパワーを供給する結晶が、バリンと砕け散ったのだ。


 どうしてなのか。あまりに強い属性攻撃を受けると、アーマー全体に這わせたミスリル糸の魔力経路パスを伝い、結晶に力が逆流・集中。最終的には破壊してしまうのだ。

 黄金龍とのバトルでは、『ハイパー・ムーンサルト・バスター』のパワーが展開し、イツカを守っていたが今回は、それなしでモロにくらった。そのため、ああなったというわけだ。



 結晶が身代わりになってくれて、イツカが無事ですんだ、と言えば美しい。

 が、あの時のイツカはすでに、レッサードラゴンのブレス一発程度普通にしのげる男だった。つまり、せっかく手間暇かけた結晶は、無駄に割られてしまったことになる。


 それ以上によくないのが、イツカが傷を負う可能性があることだ。今回はバリンだったからまだいいが、もしもドカンとなったなら。

 本当を言えば、判明してすぐにも着手したかったのだが、とうのイツカになだめられて今日になったのだ。新しい結晶を作る時間も必要だし、そこからにしよう、今日はせめてのんびりしようぜと言われて。


なぜかまとめるのにめっちゃ苦労しました。

三回くらい順番入れ替えました(遠い目


次回は作業に移れます。なんつうスローライフ(誤用)。

のんびりお付き合いいただければ幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ