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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_28 ふたつの再訪

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Bonus Track_28_2-3 俺が見られなかったそのシーン~ミズキの場合~(3)

『愛し合う者たちよ。シャスタの名のもとに未来を誓いし者たちよ。

 我は汝らに祝福を与えよう』


 いずこからか響く、鈴を振るような澄み切った声。どこか『マザー』のそれに似ている。女神シャスタのものと、言われずともわかった。

 神々しさを感じさせる宣言ののち、いつもトラオたちが使う『シャスタの祝福』の比ではない、壮麗そのもののエフェクトがフィールド上に展開された。


 天空に広がった水の波紋から、透き通るようなつま先が下りてくる。

 長い長い、ゆるやかなウェーブを描く水色の髪、幾重にも重なるドレープがふわりと重なる。

 そうしてゆっくり、ゆっくりと中空に降臨したのは、清楚で神秘的な、若い女性の姿。

 彼女からあふれるやわらかな青の光は、フィールドを水底のように染め上げた。


 水色の世界の中、まるで時が止まったように、人も魔物も動けない。

 ひとり、女神だけが神威を放つ。

 やさしく広げた両手からあふれだす、きらきらと輝く聖なる水。

 意志あるがごとく曲線を描き、トラオとサリイさんにくるくると巻き付く。

 一瞬の閃光を発してそれらは、すきとおる青の武装となった。


 かたや、チアキのそれににた軽武装と剣。

 かたや、女神シャスタのそれににた、ドレスのようなローブと杖。


 それでも、杖の先の赤い宝玉はそのまま。サリイさんの得意分野は尊重してくれるようだ。

 女神はふわりと微笑むと、彼女が見染めた戦士たちに告げる。


『さあ、ふたり手を取りあい、力を合わせるがよい。

 汝らの前途に、豊かなる水の加護があらんことを!』


 女神の姿は霧散。あとには水神の寵をうけた二人が寄り添いあって立っていた。

 我に返った緑の龍は、地から梢から植物を差し向け、二人に猛攻を仕掛けはじめた。

 そのうちのいずれも、ほとんどが打ち払われ、焼き払われる。

 しかしフォルドもさすがは森のヌシ。衰えを見せず攻め続け、このままでは終わりが見えない。


「きりがないわ。あれをやりましょう!」

「わかった。しっかりつかまれよ!」


 サリイさんは杖を収め、トラオの背後に回る。

 そのまま、腰に手を回してぎゅっと抱え込むと同時に、二人の姿が炎に包まれた。

 一瞬驚いたが、熱そうな様子はない。ダメージポップアップも上がっていない。


 炎の間にちらりと水色のものがのぞくところから推測するに、体の表面に水の力でバリアを張り、その周囲に炎をまとわせているのだろう。

 もちろん杖や『シャスタの指輪』も使ってのことだが、とんでもないコントロール力だ。通常の三ツ星昇格試合で見られるようなレベルを優に超えている。


 ともあれその状態のまま、トラオが地を蹴り、サリイさんが羽ばたけば、二人の姿は一気に上昇。

 もしかして、これは!


「黒騎士ィ! お前の技、超えてやったぜ――!

『コメット・ブラスト』ォ!!」


 トラオが叫びとともに天井を蹴る。

 それまでまっすぐと上昇していた二人は、一転大地に向けて降った。


 サリイさんが、二つのバリアと姿勢の制御を担い。

 トラオは、全力で剣にパワーをこめて。

 二人一体の輝きが、森の主の上に降りそそぐ!


 圧倒的な光が消えたその後には、元の姿に戻って倒れ伏す二人と、ふわふわと浮かぶ緑の光球だけが残されていた。

 光球がしずかに大地に消えればそこには、小さな白い花が一輪。

 静けさを取り戻した森の風をうけ、ほんのかすかに揺れていた。


 遠くから、二人を呼ぶ声がいくつも響く。

 目を開けた二人は、ゆっくりと起き上がり、声のする方に手を振った。




 ここで、三つの昇格戦は終わり。動画も終了。

 昼食会会場はというと、すっかり盛り上がっていた。

 シオンが俺の袖を引きながら、大きな目を潤ませて言う。


「もうね……もうね――! オレの脚本なんてぶっちぎるくらいすごかったでしょっ?

 みんなみんなかっこよくって!! シャスタさまは勝手に目立ってごめんってあやまってくれたけどむしろグッジョブで!!

 あーもう! あーもう! やっと語れるよー!!」


 黒くみじかいうさみみがパタパタパタ。

 語りたくってでもできなくて、一生懸命我慢していたのだ。

 俺はもちろん、よしよしと優しくその頭を撫でていた。


「ありがと。よくがんばったね、シオン。

 今日からはいっしょに語れるね」

「うんっ!」


 無邪気にうなずけば、いま一度うさ耳がぴょん。

 愛らしい顔にはもちろん、いっぱいの笑み。

 この笑顔を取り戻せて、本当によかった。心から、そう思う。


 俺が零星たちの現状を知ったとき、シオンはラビットハントの沼にはまっていくところだった。

『オレよりも、他の子たちを助けてあげて!』と言いながら、どんどん元気をなくしていったのだ。

 それが今は、知り合った頃以上に元気に笑っている。


 俺より前から零星たちを支えていたアオバ。

 戦術指南やアイテム提供、ときには手合わせで、根本的解決をもたらしてくれたアスカとハヤト。

 二人に現状を伝えて仲間にしてくれたソーヤ。

 救世主となってくれた、イツカとカナタ。

 そして、前学長が黙認していたことどもを一掃してくれようとしている、ミソラ先生たち。

 特に彼らには、どれだけ感謝してもしきれない。


 だから俺も、これからも。

 彼らの志と、俺の夢を、絶やさないよう頑張ろう。

『できるなら、ミズキも一緒に卒業したい』そう言ってくれるシオンたちのきもちにも、きっときっと、こたえられるように。


 決意を新たにしながらも俺は、とりあえず仲間たちとの楽しいひとときを満喫することとしたのだった。


水と火の合わせ技を水蒸気爆発以外で考えたらこんなんなりました。

水でなく液体だったら別の展開もあったはず……?!


次回はノルン訪問です。

おねむ系女神ルーレアと再会して祝福を賜る予定ですが、絶対平和に終わる気がしないのは気のせいじゃありません(爆)

どうぞ、お楽しみに♪

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