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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_28 ふたつの再訪

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Bonus Track_28_2-2 俺が見られなかったそのシーン~ミズキの場合~(2)

 メイド服をまとったナナさんとユキさんは、勝利の余韻に浸ることなくスパッと退場していった。

 戦いぶりの大胆さに上がった歓声は、その潔さでさらに高まった。

 しかし、それを断ち切るようにフィールドはいったん暗転。

 明かりが戻ったときには、王子姿のトラオがフィールドの真ん中にいた。


 シリアスな雰囲気で目を伏せれば、羽ばたき式小型飛行カメラがその美貌をアップでとらえる。

 愁いを帯びた王子そのものといった姿に、観客席から黄色い歓声が上がった。

 やがて沈痛な面持ちで口を開けば、一転場内は静まり返る。


「悪いな、お前たち。

 けれど、俺にはもう、これしかねえ。

 いまや継承権すら取り上げられ、一生飼い殺し確定の俺。

 なにもかもが、ハヤトに劣る。剣しか取り柄のねえ俺が、お前たちにしてやれることなんざ……」


 すらり、腰の剣を抜く。

 前方から呼応するように現れたのは、緑色をした巨体。フォレストレッサードラゴンだ。

 ドラゴン種としてはコンパクトながら、竜翼と尾を備えたその姿は、強者としての威風を放つ。二ツ星のハンターが一人で狩ることなど、とうていできえぬ大物だ。


 しかしトラオは、そんな相手に向け声を上げる。


「フォレストレッサードラゴンのフォルド。

 数百年間恐れられ、忌まれ続けてきたこの地のヌシよ!

 いま、ラクにしてやる。

 嫌われ者どうし! お前と一緒に逝ってやる!!

 いくぞ!!」


 対してフォルドも、高らかに咆哮を上げる。

 あっという間もなく、絶望的な戦いが幕を開けてしまった。


「『ムーンライトブレス』!『短距離超猫走スプリン・チーター』!

『エル・テ……」


 トラオは立て続けにスキル発動。ベーシックな自己強化に、猫系装備用の脚力超強化。最後にこれまた猫系装備用のラック上昇スキルを使おうとして、やめた。

 俺は少し驚いた。バトル部分には演技の設定はされていない。そこはガチで自由に戦ってくれということをシオン自身も言っていた。

 というのにトラオは、自らの前途を閉ざそうとする悲運の王子をさらりと演じている。

『ふしふた』のときから感じていたが、トラオには演者としての才もある。

 見た目も文句なくいいし、彼にこの道は向いているかもしれない。


 そんな俺の思考をよそに、画面の中のトラオはフォルドに突撃。

 フォレストドラゴンの類は、森の大地と気脈を通じ、植物を操っての攻撃をも繰り出す強敵だ。

 果たしてトラオは、地面から突き出した植物の根に行く手を阻まれる。

 それでも、軽いフットワークでジグザグに走って距離を詰め、フォルド本体に迫る。

 大きく剣を振り上げて……

 だが、それこそが罠だった。がら空きの背後から伸びてきた丈夫なつるが、トラオに巻き付き、吊り上げる。

 跳ねる足も、剣を持つ手もとらわれて、絶体絶命のその時!


「『スプリンクル・フレア』!!」


 救いの女神の声が響く!

 絶妙にコントロールされた火球が、正確にトラオを縛るつるを焼き払う。

 鋭く飛来するシルエット。トラオが地に落ちる前についっとかっさらったのはもちろん、サリイさんだ。

 トラオが驚いたような叫びをあげた。


「お前、どうしてここに!」

「なんだか嫌な予感がしたの。

 あなたが死ぬならあたしも一緒よ!」

「サリイ……!」


 そのまま森を飛び出すには、トラオは重すぎる。サリイさんは距離を取って着地した。

 シナリオでは、ここで二人は『ともかくもいまは共闘しよう』と戦い始める、とシオンからは聞いていたが……


「ダメだ。お前は帰れ!

 森のヌシを退治した功績をお前にやる。それを手土産に、宮廷魔術師に戻るんだ!」

「あなたのいない未来なんかいらないわ!」


 トラオとサリイさんは、勝利後に言うはずのセリフを今言ってきた。

 それも、前半はフォルドとにらみ合いながら。後半は、フォルドの繰り出す植物攻撃を剣と炎で退けながら。

 驚きはそこで終わらなかった。サリイさんがアドリブのセリフを決め、それにトラオもアドリブで応じたのだ。


「フォルドを倒すか、二人して死ぬか。

 ほかの選択肢なんか焼き尽くしてあげる!!」

「わかった、サリイ。

 俺たちは、どこまでも一緒だ!!」


 シオンも毎度事前に言うとおり、モンスターバトルパートは始まってしまえば原則100%ガチなのだ。下手をうてば負けることだってありうる。

 だというのに、この二人のステージ度胸には感動を覚える。

 二人がいまは、真に心通じた恋人同士であるためでもあるのだろうけれど。


「ええ。

 この、シャスタの指輪にかけて!」

「シャスタの指輪にかけてっ!」


 これがアニメなどなら、指輪を天にかざすところだが、さすがにフォレストレッサードラゴンを相手にしながらでは無理だったよう。

 それでも、ふたつの指輪は強い輝きを放ち始める。


 はじまるぞ。誰かが言った。

 ここからが、みんなが口をそろえる『今回最大のスペクタクル』。

 ひとつ深呼吸、ひとつまばたきしたのち、俺は全力で画面に見入った。

『書けない書けないと思っていたら不意に増える』攻撃をくらいました。

もう少しだけ続きます……!

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