表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_27 過去との決着(2)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

284/1358

27-2 偽りうさぎのマトリョーシカ?

2020.06.16

誤字修正いたしました……早速ですみません!

RWD→RDW

持ち出しはもちん、→持ち出しはもちろん、

『製法を秘密にするためにと、あえて特許申請をしていなかった。

 そこをつかれたカタチ、か……

 権利が守られるのは10年だけとはいえ、やはりしておけばよかったのかもしれない。

 すみませんおやじさん、チコ。俺の判断で、つらい思いをさせてしまって』

『いいえ、そんな!

『オッドアイのうさぎまん』を、秘伝の銘菓として末永く残したいのは私も同じです。

 私から、チコに。そしてチコの子供に、孫に。

 ずっとずっと、伝えていってやりたいと……そう思っているというのに……』

『ごめんねお兄ちゃん。あたしがもっとしっかりしてたら。

 でも、おねがい。たいせつなうさぎまんとこのお店を、怪しい奴らに渡したくなんかない。

 力を貸して、おにいちゃん! 助けてください、みなさん!』

『お願いいたします、どうか……!』


 昨日。ミッドガルドに降り立った俺たちは、まっさきに『チボリーの道具屋』を訪ねた。

 チボリーさん一家は、ニノに、おれたちに、必死に頭を下げていた。

 目の前の光景は、そのきもちを踏みにじるものにしか見えなかった。

 いや、実際にそうだったのだけど。



 * * * * * 



「……どういう、ことですか」


『オッドアイのうさぎまんじゅう』のかたちは、雪うさぎに似ている。

 大きさは、手のひらのくぼみに収まるくらい。

 ぽってり丸い卵型の山のなかに、秘伝の白あんがつまっている。

 色よく焼けた表面には、デフォルメされたうさぎの耳しっぽ、そして金青の両目が可愛く描かれ、口に含めばほろりとほどける。

 ゆったり座って濃い目のお茶と頂きたいような、しっとりとした新銘菓だ。


 商標登録、意匠登録はあらかじめ済ませていたが、あえて製法の特許申請はしていなかった。

 そこをついての模造品が、いまミッドガルドに出回るコピーうさぎまんだ。

 外皮には『底』がなく、当然あんこも入ってない。

 本家の繊細なフォルムと比べればあきらかにつくりが雑で、サイズもひとまわり小さい。

 だがぱっと見では、ひどく似ている。


 RDWラビットドリームワールドで売られている『ノルンの森の夢うさぎ』も、中は空っぽ。

 こちらは本家よりひとまわり大きく、形は本家よりはコピーうさぎまんに近く、外皮も固め。そして、自由に中身を入れるためにと、着脱可能な『底』がある。

 けれどやはり、全体としてはとても似ている。


 ぶっちゃけ、画像だけで見ればごっちゃになりそうだ。

 しかし、並べてみれば一目瞭然。

 否、そんなことしなくてもニノにはわかる。自分が残した、渾身の作だ。

 ミッドガルドでただひとつ、『チボリーの道具屋』でのみ作られるはずのそれが、いっそ無機的な白光のなか、勝手に目の前のコンベアで流されている――ニノには、そう見えているのだ。

 整った顔から笑みが消えている。抑えた声も低い。


 対して女支配人イェリコは、花のような笑顔を見せた。


「驚かせてしまいましたわね、すみませんニノ様。

 ですが、よくご覧になってください。これはおおよその形とサイズをあわせただけのサンプル品。もちろん、秘伝のあんこも入っておりませんわ。

 創出者のニノさまも驚くほどのクオリティを目算のみで実現した、私共の高い技術レベルをご覧になっていただきたく、あえてこのようにさせていただきましたの。

 いかがでしょう、当工場で『オッドアイのうさぎまんじゅう』を製造してご覧になっては。

 そうなれば、ミッドガルド各地で物量の優位を誇るニセモノたちに、水を開けることが可能になります。

 以前よりチボリー様にご提案している、園内でのお取り扱いにも支障はなくなりますわ!」


 ニノはふう、と息を吐いて、ふんわりほろ苦く微笑む。


「……失礼、取り乱しました。

 では、もう一つ見せていただいてもよろしいですか。

 そのライン。何を焼いているんでしょうか」


 そうして指さしたのは、隣で稼働中のライン。


「こちらはわがRDW特製『ノルンの森の夢うさぎ』商都マリノス向けのラインですわ。

 せっかくですし、よろしければ、お味見も」


 自信に満ちた様子で、支配人イェリコは使い捨て手袋を装備。どこからともなく紙皿も取り出す。

 ラインを流れる雪うさぎ型まんじゅうをひとつ、そっと紙皿に取りあげて……


「すみません、一度ラウンジでお待ちくださいませ。すぐにきちんとお皿に盛ってお出ししますわ!」


 慌てた様子で丁重に、おれたちを追い出しにかかった。

 自分の体に隠すように、ちかくのワゴンに紙皿を置いて。


「待ってください、なにかあったのですか?」

「いえ、大したことではございませんので」

「ではぜひともそちらを。あなたのお手に触れたそれを、手ずから私に頂きたい。

 今日のこの日の想い出に、どうか」

「………………。」


 ニノはイケメンオーラを全開に、女支配人に迫った。

 とまどう彼女の右手を、絶妙な力具合の両手で包んで。

 うん、色仕掛けだ。これかんっぜんに色仕掛けだよね。

 アスカが小さくひゅーうと口笛吹いて、ハヤトはかっちりフリーズ。ルカとミライが赤くなっている。

 いつもニコニコ平常心のルナまでなんだかうれしそうだが、おれとイツカはイズミからそっと距離を取った。だって、すっごく目が怖い。

 ニノもこころなしか、そちらを見ないようにしているかんじ。


 ……と、そのときだった。


「支配人! 大変です、地下にガサ入れが!!」


 がんがんとメタルの扉が叩かれて、若い男性の慌てたような声が聞こえてきた。

 おれには聞き覚えがある気しかしないが、イェリコ支配人はさっとそちらに向き直る。


「メッセージでまとめて送りなさい、すぐ対応します。

 申し訳ありません、そういうわけですので皆様どうぞ一度ラウンジへ。

 こちらの地下には各種処理施設しかないので、何かの間違いかと存じますわ!」


 彼女が再びおれたちを急かす。

 しかしその時すでにさきの『夢うさぎ』は、ニノの手の中にあった。


「! それは」


 支配人が声を上げた時にはもう遅い。 

 あっという間もなく、ニノはそれをひっくり返す。

 慎重ながらすばやい手付きで、平らな底皮を外せば、キラリ。照明の白が弾きかえされる。

 なんと、からっぽのはずのまんじゅうのなか、鉱石のあんこが鎮座ましましていたのである!


 この目で見、この手で採掘し、加工までしたおれにはわかる。『ホワイトスパイダーウェブ』。ここノルンの鉱山でしか産出しない、トップランクのレアメタル。持ち出しはもちろん、用途を申請しての許可制だ。


 しかし、驚きはそれにはとどまらない。

 ニノは『夢うさぎ』を、手のひらの上でもう一度上向きに。

 するとどうだろう。なかからぽこりと出てきたのは、ひとまわり小さいまんじゅうだ。

 その形と大きさは、ニセうさぎまんのそれと合致する。


 RDW特製まんじゅうと、ニセうさぎまんと、無断持ち出し禁止のレアメタルの塊。

 ありえない取り合わせでできた『雪うさぎ型マトリョーシカ』を手に、ニノは低く低く声を上げた。


「……説明していただきましょうか」


 昨日のレースで見せた『威嚇』が、かわいい子狐ちゃん動画に思える。

 そんなレベルの怒気が、ニノから冷たくほとばしる。

 一瞬の静けさののち、女支配人はぱっと身をひるがえした。

 素早くメタルのドアを開け、そこに立っていた者に命を発する!


「狼藉ものです。警備を呼びなさ……」


 しかし、彼がそれに従うことはなかった。

 なぜってそれは、戦装束ほんきモードの『青嵐公』だったのだから。


いつのまにか超えていた70万字!

皆様のおかげです。ありがとうございます!


次回、『強欲』に迫る! 予定! お楽しみに♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ