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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_26 過去との決着

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26-4 遊べ! ラビットドリームワールド!(2)

 陽動を兼ねて『ラビットドリームワールド』を訪れたのは、おれたち『ミライツカナタ』。アスカとハヤトの『白兎銀狼』。ルカとルナの『しろくろウィングス』。そして、ノルン西市街の救世主であるイズミとニノの『イーブンズ』だ。

 イェリコ支配人の長いあいさつが終わって後、おれたちは『森の中のどうぶつ王国』といった趣向のテーマパークエリアへ案内された。


『どうぞわたくしどもの最大限の歓待をお受けになってください、天使様がた。

 本日は皆さま、当『ラビットドリームワールド』で遊び放題とさせていただきますわ!』


 ということで。


 とはいえ周囲にはボディーガードがくっついてきているし、いいと言っても順番は譲られてしまう。

 手を振られたり名前を呼ばれたりはいいのだが、園内のワゴンからはポップコーンやクレープ、花や風船やけもみみカチューシャが差し出されるので、その相手も一苦労。

 事前にミソラ先生から『これは一流のαとなるための教育の一環でもあるから!今回『ミライツカナタ』『白兎銀狼』は接待『される』スキルを身に着けてきてね♪』と言われてはいるが、なかなかどうして難易度高い。

 おれもミライもきっと、パニックになっていたことだろう――


「いいのよ、自然体で。いざとなったらあたしたちがフォローするからドンと構えてなさい!」


 先輩アイドルであるルカが、後ろからそうささやいてくれなかったら。


 なのにイツカのやつは、言われるまでもなくいつも通り。

 差し出されたポップコーンをいっこだけつまみ食いして「あとはみんなにあげてくれよ! 一口交換な!」とか、どっさりもらったクレープは袋に入れてもらい、おれたちに回したり目の合った子供と分けたりまったく物おじせずに楽しんでいる。

「イツカくん、アイドルの才能あるね!」なんてルナにも褒められてるし、いつものことながら謎すぎる。


 ちなみにおれの後ろのハヤトはどんと構えているようだが、その実は処理落ちでフリーズしかけているだけだ。こっちの反応の方がひととしては正しい気がする。


「ハーちゃん? ハーちゃーん!

 ほれっ、かわいいファンが肩車してってよー?」

「え、お、あ、ああ……」


 しかし、アスカが近くに来た小さな子供を招き寄せ、よいしょと肩車をさせたなら、そこからは笑顔になった。

『でっかいやつは子供にモテる』理論はここでも健在のようで、ぼくもわたしもと集まってくる子供たちをいいこいいこしたり、肩車やだっこで写真撮ったり。

 子供たちの保護者さんたちとも軽く雑談したりして、おれたちにしてみれば新鮮だ。


 ニノとイズミはというと、すでにここに来たことがあるらしい。お客さんやスタッフになじみの人も混じっているということで、わりと気楽な様子でガイドしてくれる。


「射的だったらあの屋台がオススメだな。もとAランクガンナーの肝入りだぜ!」

「へえ……面白そう」

「ぜひぜひどうぞ! 射撃王子の腕前、見せてくださいよ!」


 ニノの紹介で屋台をのぞけば、リスの仮装を身に着けたおやっさんが笑顔で射的銃ちょうせんじょうを差し出してきた。

 ここでどう言えばいいかぐらいは、おれにも分かる。


「落とした景品、皆に上げていいですか?」

「もちろんですとも!」



 渡された銃と弾をかるく確かめる。ここはVRのいいところ、コルク弾が欠けていたり、銃のバネが弱っていたりという事もないようだ。

 軽いウォーミングアップで、まずはキャラメルの箱と、シャボン玉セットをしとめてみる。箱のナナメ角を狙い、命中、命中。つぎつぎと棚から落ちていく。

 よし行けそうだ。おれは『瞬即装填フラッシュ・ロード』でつぎつぎと弾を込め、ぱすぱすと撃ちはじめた。

 結果、のこる十個の小箱をすべてミスなく五秒で落とすことができた。よしよし、いい調子だ。


「二列目行きます!」


 二列目は、一列目よりすこし重めの、銀玉鉄砲などのおもちゃやぬいぐるみが七つ。4.5秒、悪くないタイムだ。

 三列目はボードゲームの箱や貯金箱。弾速と重心の位置を考慮してコンプリート。


「いやーすごい! すごいですねえカナタさん!

 しかし我らもやられっぱなしでは商売あがったりだ! こいつをしとめてみてくださいよ!」


 登場したのは、高さ30cmのくまのぬいぐるみ。

 周囲からどよめきが上がった。ニノも言う。


「きたな、『伝説の難攻不落ガーディアンベア』!

 俺もまだ攻略できないでいる、この屋台のヌシだぜカナタ!」


 その声をうけ、左に右に足を運び、まるっこく愛らしいターゲットをつくづくと観察する。

 金色のふさふさした毛並み。しっとりと手になじむだろう絶妙なフォルム。そして、意外としっかり重量があるかんじ。

 馬鹿正直に真正面から撃っても、後ろについてる小さなしっぽがつっかえになって倒れないはず。かといって、横に向けすぎてもやはり倒れないという絶妙な設計になっている。

 絶対に一発では落ちない代物だ。それも、一発一発、正しいやり方で撃たなければならない。


「これは……手ごわそうですね。おやっさんなら何発でいきます?」

「おう、俺なら3発だな……ですね!」


 ハンター魂をくすぐられたのか、素に戻ってしまうおじさん。ちょっとホンワカしながら言う。


「そのまんまでいいですよ、おやっさん。……じゃ、おれは初見だし、四発いいですか?」

「おうよ!」


 三発。たしかに最短手は三発だ。しかし、それは今回避けることにした。

 難易度が高いのだ。それも笑ってしまうようなレベルで。

 まず、左右どちらかの手を打って、右か左にくるりと40度ほど方向転換。

 そこからあご下を撃ち、バランスを崩す。

 くまちゃんがナナメ後ろに転げはじめたら、倒れ切らないうちに足裏を撃って全体を押し出す。


 全ての弾丸がピンポイントでヒットしなければならない。なかでももっとも難しいのが、足裏を撃つ角度とタイミング。もちろん『瞬即装填フラッシュ・ロード』がなければ無理な芸当だ。

 なんなんだこの、無駄にレベルの高い射的は。

 だがむしろ燃えてきた。おれは念入りに位置を決め、引き金を引いた。


 まずは、定石通りに攻める。第一射、やや左に回り込んで、右手を撃つ。よし、斜めになった。

 あご下へ第二射。傾き方が予想よりやや浅い。

 やむなく、足裏に一発、ぎりぎりのローアングルから。

 続けて最後のもう一発、重心をとらえてくまちゃん全体を押し出すように――


 はたして、ふっと後ろにとんだくまちゃんは、ぽとり、台の後ろに落ちた。


「やったあ!」


 思わず歓声を上げて跳ねていた。ギャラリーからも拍手が沸き上がり、なんだか晴れがましい気持ちになる。


「さすがだ、射撃王子!

 約束だガキども! この屋台のモン全部もってけこの野郎ー!」


 すっかりキャラ変したおやっさんは陽気な声を上げ、おれが仕留めた景品を子供たちにばらまき始めた。

 ただ不思議なことに、わいわい集まった子供たちのなかに、ひときわ大きくて黒い猫耳子供がいるようにみえる。

 とりあえず捕獲してみれば、やっぱりそれはイツカだった。


「イツカ、何ちゃっかりまざってるの?」

「えーだって俺もみんなだもーん!」

「おまえは遠慮しなさい! あとでなんか買ってあげるから!」

「え~」


 そんなやりとりに笑いが広がったところで、場内アナウンスが流れ始めた。


『ただいまから『けもけもレース』昼の部のエントリー受付開始いたします。

 優勝者には豪華景品もございます。みなさまふるってご参加ください!』


 とたんにイツカとハヤトはぴんっと耳しっぽを立てた。


「っしゃきた――! いくぜハヤト!」

「振り落とされるなよ? 慣れない姿でのレースなんだからな?」


 そしてまるで子供のように、受付めがけて走り始めた。


「よーし俺もやるぜ俺もやるぜー!! やるからには優勝すっぞー!!」

「(ふっ)ニノがおれに勝てるとでも?」

「え?! おまえおれに乗るんじゃなくっ?!」


 ニノとイズミもそれにつづく。

 それを見てたまらなくなったのだろう。ミライもぱたぱた走りだした。


「っ………………やっぱおれもいってくるー!!」

「ごめん、おれもいくからあとおねがい!」


 おれもすかさず後を追う。

『けもけもレース』はバディ制だ。ミライが行くなら、おれも行かないわけにいかない。

 だれとも知らない野郎をかわいいミライに乗せるくらいなら、謹んでおれが乗る。たとえ、あとでかわいいソナタに焼きもちを焼かれるとしても。


「ちょっとあんたたち……もう!」


 ふりふりゆれる巻きしっぽを追って駆けだすと、ルカの呆れたような声と、ルナとアスカの笑い声がおれたちを追ってきた。


ええと……開催「は」決定いたしました……


次回、いよいよレース!

こういうときの掲示板回! お楽しみに!

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