26-3 遊べ! ラビットドリームワールド!
「ま、待ってくれサヤマ!」
「それだけはさせられないよ!」
まっさきに声を上げたのはイザヤとユウ。
ほかならぬ、かつての事件の当事者たちだった。
「えっと……そうだ、俺たちがまずメッセとかで接触してみる。
ほら、俺たちあいつとほぼ同じ身の上だし……普通に話をしてもらえるなら、やっぱり俺たちの方だから!」
「あ、……もちろんメッセの内容とかも、チェックしてもらっていいし、サヤマと二人きりで会わせたりとかも、しないようにするから!!」
必死の様子で頭を下げるふたりに、ミツルは自ら歩み寄る。
「だいじょうぶ、俺は二人を信用する。
あれは、二人に、あいつに植え付けられた『嫉妬』が起こした事件。
見舞いに行った日、ノゾミ先生がそう言ってた。
だから今の二人は元の二人だ」
「サヤマ……!」
そして、ミツルはきっぱりと言った。
「あいつも3Sの支配を抜ければ、元のあいつに戻る。
だから、話し合いの結果、あいつが復学を望んでも、俺は拒まない」
「そ!! そうだよなっ!
もしそうなったら、俺もあいつを応援する! いいよなミツル!」
アオバが食い気味に声を上げると、ミツルはちょっときょとんとしてから「……ああ」と微笑んだ。
するとナツキの肩の上で、エルカ狐がぽん、と跳ねた。
「よし、そういう事なら、皆に月萌国軍から正式に依頼を出させてもらうことにしよう。
ナツキ君も、一度ことわっておいてなんだが、可能な限りで力を貸してはもらえないか。
我々も抜本的な解決法を探っていたが、手詰まりとなっていたところなんだ。正直、頼めると本当にありがたい。
依頼となれば学校としても、配慮のしようが出てくるはずだからね」
「そうだねエルエル、それはぜひお願いするよ。
報酬のいくらかを前払いでもらってもいいかな。
『免罪符』は公務扱いで要らなくできるけど、先立つものは必要だからね?」
ミソラ先生が二つ返事で承諾した。
その笑みは、茶目っ気に満ちたもの。
どうやらまたなにか、ナナメ上な作戦を考え付いたようだった。
その翌日、おれたちはニノとイズミの『故郷』である、ノルン西市街にやってきていた。
もっと正確には、そこに建てられた、巨大複合リゾート施設の前に。
その名も……
「ようこそ天使様方、『かわいいうさぎと森の仲間の夢の国・ラビットドリームワールド』へ!!」
馬車が五台は並んで通れるだろう巨大な門のうえで、金と青のオッドアイ、黒い被毛の野うさぎが立ち上がったようなキャラクターが、笑顔で両手を広げていた。
そしてその巨大な門の前では、どこかで見たような女支配人を筆頭とした役員・スタッフたちにより、おれたち『天使様』を迎える式典が開かれていたのであった。
やっとまとまった……!
少し短いですが、キリがいいので本日はここまでとさせてくださいまし。
次回、なぜかめっちゃ遊ぶカナタたち!『一応合宿だから!』お楽しみに!




