Bonus Track_25_3 眠れる森の四位一体~ライカの場合~
それは、昨日の晩のこと。
『ごめんライカ! 今回はハブらせてお願い!
あとでレインを好きにしてきていいから!』
アスカに拝み倒されて僕は、みつるんたちにご一緒することになった。
明日のテストバトルでは、僕の分身体を使ってもらうことに。
まあ、今回は軽いじゃれあいだ。最悪ライジングブレードでもハヤトはやれるだろう。
『おれの予測では、あの子ははたぶん『中枢部』にいる。
もしもみつるんたちが潜入することになったら、神獣だけじゃ心配だからさ』
神獣といっても結局はゲームのNPC=運営操作のパペットだ。リアルのことではアテにしきれないからね。そうアスカは笑っていたが、神獣ヴァラは探し人の位置をハッキリと告げた。
『月萌中枢部、国立工廠つき研究所セントラルラボ3-Aに彼は収容されています。
ご主人様方はエクセリオンにツテがございますね。彼らを頼れば面会は可能です』
逆に言えば、月萌最高権力者の権威を持ち出さなければ入れないような場所ではあったが。
高天原は『高度機密ゾーン』だ。αとその候補、そしてシティメイド=月萌国の司法・行政・立法の中枢をつかさどる一握りの国民以外の出入りは、固く禁じられている。
しかし高天原の一角を占める『中枢部』には、さらに厳重な立ち入り制限がかけられている。
それを顔パスで飛び越せるのがエクセリオン。エルカや仲間たちが求めた座だ。
さっそくノゾミを通じ、エルカに連絡を取った。エルカはすぐに、フユキ、アオバ、ミツル、そして僕を召喚。自ら迎えに来てくれた。
ただしもちろん、タダというわけにはいかなかったけれど。
僕たちは、カタチだけとはいえ『やばいアルバイト・改』に参加することになったのだ。
「これから行く場所は、国家機密の極秘実験が行われている場所。君たちはその被験者に志願した……というていで来てもらう。
内容は、無害化済みの3Sを模した強化モジュールの適合実験。
もちろん、直前で気が変わったという事で拒否してくれていいからね。
ラボを出るまでの間に、さりげなく『彼』に接触できるよう取り計らおう。
くれぐれも、他の者たちとは一線を画すようにね。挨拶と社交辞令以上のことは口にしないこと。連絡先を受け取ったり渡したりはしないこと。いいね」
そう言い含められてリムジンに乗った僕たちは、一時間しないうちに『天の岩戸』の向こう側にいた。
実験を拒否るのはカンタンだった。あらかじめ美少女に化けた僕がやっぱり怖いですぅと泣きべそをかけば、自他ともに認めるフェミニストのエルカが大げさな程フォローしてくれて全員まるっと無罪放免。
彼のエスコートで、さりげなく『その子』の部屋に迷い込めばミッションコンプリートだった。
だが、ミツルが彼と話すことはできなかった――彼は深く深く眠っていたのだ。
生命維持カプセルを満たす青い光の中、まるで天使の人形のように。
そのさまをみたとたん、フユキの瞳が茜色にかわった。
ナツキが表に出てきたのだ。
「なに、これ……なんでこんなことになってるの?!
一人の人間の中にみっつ、『おれたち』がいるなんて……!!」
声を震わせたナツキは、信じられない、と言った様子で両手を握り合わせた。
せつめいってむずかしい!
そしてやっぱり三次合宿は次章でした……orz
次回、新章突入。さっそくシリアスさんが吹っ飛びます。お楽しみに!




