25-2 天使の園と悪党どもの相談
そこのところはともかくとして、ライカのいう事はもっともだった。
この集まりの目的は、海合宿での獲得アイテムの利用法を決めること。ナツキのことはまた別件である。
さっそく並べられたアイテムは以下。
ブルーアビスバットの翼、コアトルプリューム、各種神獣の爪と牙。千年樹の琥珀と千歳貝の真珠。
クレハとチナツへの『おみやげ』を包んでいた葉っぱは、シークレットバナナの葉。
いずれも超のつくレア素材。錬成に使ってよし、魔力結晶を抽出してもよし。装飾品などとしてもよし、売却してもよしである。
しかしおれたちの注目をまっさきに集めたのは、チナツが『俺あてにってこんなのももらっちまったんだけど……』と出してきた『召喚チケット』だった。
茶色みを帯びた丈夫な紙に、緑のインクで大猿、巨大イノシシ、トラ、巨鳥、ジャイアントボアが描いてあるものが各二枚。一面緑に塗りつぶされているのが二枚だ。
ライカも興味津々で目を輝かせている。
『おっ、これ食べたら召喚能力つきそーだなー。まー召喚獣はちなっちゃんのいう事しか聞かないっていうし、つかえなそーだけど!』
「俺としちゃもーサクッと食っちゃってほしいぜ……そのうち誘惑に負けて使っちまって最後は寄ってたかって食い殺されると相場が決まってるんだ……」
とうのチナツはすっかりガクブルだが、ミライは小首をかしげて言った。
「え、そんな悪いものって感じじゃないよ? むしろこれは……うん。熱烈なファンレターみたいなにおい!」
「ファッ?!」
「そうか……だったらアリかもしれないな」
それを受けてクレハが提示したのは、なかなか興味深い作戦だった。
「報告にも乗せたが、『しもべ』たちに異界の知識や技の伝授を願うもよし、ともクレイズ様は言っていた。
ここは思い切って召喚して、強化のアイデアを聞いてみるのもいいんじゃないかと思う。
イツカとカナタを二か月半で最強にするためには、知識は少しでもほしいし。
せっかくだからその前後に、チナツの昇格試合に協力してもらうのもいいかもしれない」
「ふぁ……ふぁん……れたー……お……俺への、ファン、レター…………」
だが、チナツはなんかテンションがおかしい。ぷるぷるしてたかと思うと、ばっとチケットを抱きしめてこんなことを言い出した。
「いかんっ! これは俺へのはじめてのファンレターだから! いっしょー使わないで神棚に上げとくっ!!」
「それ本末転倒だろっ?!」
「えーと……はんぶんだけ使う? とか?」
レアアイテムは使う派のレンとトラオが声を合わせ、セナもうんうんとうなずく。
名調整役のアキトが折衷策を探し出すと、チアキがにこにこ賛成した。
「あ、それいいかも!
僕ね、父の日とか母の日の肩たたき券、なかなか使ってもらえなくって……
さみしくってどうしてなのって聞いたら、なくなっちゃうのがもったいないからって言われたの。
それじゃあ半分だけでも使ってってお願いして、つぎの年からはスタンプカード方式にしたの! おてつだい一回スタンプひとつ、10こたまったらつぎのカードをプレゼント、て!」
「あ、それうちもそうだったー! 肩たたき券、なかなか使ってもらえなくって!」
「うちもー! それで結局、毎年残っちゃうんだよね!」
するとミライ、ハルオミもはいはい、と手をあげる。
そういえばむかし、アリサカ家でそんなことがあったっけ。
なつかしさに浸っていると、シオンがうさ耳をパタパタさせて悔しがる。
「あー、オレもそうすればよかったかもー! 一生の不覚ー!」
「え、むしろシオンそうしてそうだったから意外!」
「オレはそのー……べ、べつのプレゼントにした……から……」
「お、手作り絵本とかか?」
言葉を濁すシオンだが、イツカがいつものようにずばり。シオンはぱっと真っ赤になった。
うさみみパタパタ、両手じたばたで大慌てだ。
「わーわー!! なんでしってるのイツカー!!」
「いやカンで」
「もー……もー……もー、えっち!!」
「え゛……………………」
「自業自得。」
イツカは頭の上にBP5の赤いポップアップをのっけてえええという顔をしているが、おれはすっぱりと引導を渡した。
このうえ『それにカナタもそれやってたから』とか口に出そうとしていたら物理的にも引導を渡すところだったが、どうやらやつもその一線を超えない程度の危機管理意識は持ち合わせていたらしい。
ちなみにアスカは指さして笑っている。
「おいおいなんだこの天使の園は……その作戦で行けとか言えねえ雰囲気だぞ……」
「いっそあとでチナツだけ呼び出してナシつけっか?」
集会室の隅っこではこそこそとささやきあうトラオとレン。ニノも加わる。
「ちょっと待てお前ら、そもそもあのチケットを使い切るとどうなるかがわかんねえんだ。
ここはまずその辺を聞き出してだな……」
「悪党どもの相談かよ。」
イズミが呆れた顔でそう評した。
ざっくりアイテム紹介!
ブルーアビスバットの手羽元
消費アイテム/ステータス上昇(魔力・恒久)/超レア
迷宮深部で強い魔力を浴びて育ったブルーアビスバットのお肉。胸肉に近い上腕の部分。
味と食感は鶏肉に似ている。芯まで加熱してどうぞ。
魔力の大きく上がるレア食材。
ブルーアビスバットの翼
素材(魔属性)/超レア
迷宮深部で強い魔力を浴びて育ったブルーアビスバットの翼。
深いブルーブラックの色合いが美しく、装飾品として加工するもよし、錬成素材としても優秀。
ディア・マッシュルーム
消費アイテム/ステータス上昇(器用さ・恒久)/超レア
パラセクトディアを倒すと、とりついていた微生物がキノコの形で生えてくるので、袋をかぶせて採取する。
傷のついた手で触ったり、胞子を吸い込まないように注意が必要だが、うまく加熱・乾燥加工すれば、独特の風味と香味の高級調味料になる。
神経系に働きかけるチカラで器用さを上げる効果もあり、珍重される。
コアトルプリューム
素材(風属性)/レア~激レア
南国の巨鳥の羽。さまざまの色合いが美しい。
そのままで強化アクセサリーにもなるし、錬成素材としても優秀。
『シークレットガーデン』に住まう巨鳥から贈られたものは、準神器クラスの激レア品。
千年樹の琥珀
素材(地属性)/レア~激レア
永く生きた大樹の樹液が地中で化石となったもの。
あたたかな飴色は、見ているだけでも心を落ち着けてくれる。
武器・防具になるほどの硬度はない。素材を生かす形で装飾品にするのがおすすめ。
千歳貝の真珠
素材(水属性)/レア~激レア
永く生きた貝の体液が作り上げた海の宝石。
まろやかな色合いと手触りが癒しを与えてくれる。
とても傷つきやすいので、装飾品にするのがおすすめ。
神獣の爪、牙類
素材/レア~激レア
神獣から奪った、もしくは譲られた爪と牙。装飾目的にも耐える美しさをもつ。
爪は主に攻撃力を、牙は攻撃力と回復力を上昇させる力がある。
素材を生かす形で加工すれば、強力な武器にもなる。
いつもありがとうございます。
次回、召喚第一号くるか? お楽しみに!




