表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_24 合宿と開発と

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

255/1358

24-5 オレを漢にしてください!

2021.02.06

涙をぽろぽろこぼして、ナツキに歩み寄る。→涙をぽろぽろこぼして、フユキに歩み寄る。


 出来上がったボムは、慎重に分解され、物理的な構造を記録されたのち、パーツごとにマルチマイクロアナライザにかけられた。

 まずこれで化学的、魔術的な構造を決定。次いでその再現方法を探るという算段である。

 レンはもうルンルンで、なんどもアナライザの前を行ったり来たり。椅子に座っては足をぶらぶら。

 アスカは連盟の仕事を片しながら、何とも言えない表情だ。


「うーん。

 なんかおれ、ちっちゃい子にケーキ焼いたげたおねーさんの気分になってきた……」


 シオンがキーボードをたたく手を止めて言う。


「のんびり待とうよレン。この分だと三十分じゃ終わらないと思うし。

 だからエルカさんとフユキも、面談行っちゃったんだし……」


 いや、そもそもさっきからほとんど手は止まっているのだが。そして、突っ込むべきところに突っ込んでいない。やはり、これは。


「で~も~」


 いや、緊急度はこっちの方が高い。レンはまた変なスイッチ入りかけてる。

 見ているだけなら可愛くないこともないのだが、とりあえず話がややこしくならないうちに水を向けることにした。


「あのさ、どうせみんなで錬成室ここいるんだし、アイテム補充分でも作っとかない?」

「それもそっか~……だな、よっしやるかっ!」


 レンが腰を上げた。アスカがつづく。


「おれもせっかくだから今宿題込みでやっちゃおっかなー。シオっちは?」

「うーん、ごめん。オレはあとでソーやんと一緒にやる予定だから……

 えっと、また次の時一緒しよ?」

「お、おう……」


 心ここにあらずなんだけど一生懸命取り繕おうとしている笑顔が胸に刺さる。

 レンもようやく『しまった』と思ったようで声が尻すぼみ。

 これは、錬成なんてしてる場合じゃない……と思ったその時、ドアをノックする音が。

 シオンがすっ飛んでいってドアを開けるとそこにはエルカさんと、フユキが立っていた。


「おまちどう、シオン君。王子さまはお返しするよ。

 料理上手のお姫さまにもよろしく伝えてくれたまえ。それじゃ!」


 エルカさんはシオンの頭をくしゃっと撫で、ちゃめっけのある敬礼を残すとすっ飛んでいった――マイロ先生に『縮地使いまくり』と言われていたが、さすがに校内では使わないようだ。

 シオンがせき込むように声をかける。


「フユキ、エルカさんとどんな話してたの?」

「ああ。内容は――いや。中で話そう」



 フユキはあれから、何度かエルカさんと面談していた。

 最初は、火曜日。山合宿を終えてログアウトしてすぐ、面談室に呼び出されたという。

 二度目は木曜。そして週末をはさんで今日、月曜だ。


「……今回話していたことは、俺とナツキの身の振り方だ」


 錬成室の中、全員ひとつの机を囲んで落ち着くと、フユキは静かな声で語りだした。


「ナツキは俺の中に封じられていたため、まだ子供だ。

 だから最初は俺の中から、世の人の中で生きるという事と、力の制御を学んでほしい。

 それが叶えば、ナツキのための新たな体を用意し、ゆくゆくナツキ自身が一人のヒトとして生きていけるようにしたい。というのが、彼らの願いと、そう聞かされた。

 これは、俺とコトハ、そしてナツキの願いとも一致する。しばらく皆には面倒をかけることとなるかもしれないが、頼まれてはくれないだろうか。その……ナツキからも頼みたいそうだ」


 フユキがそういうと、はちみつ色の双眸が茜色に変わり、顔つきが若干、口調が明らかにこどもっぽくなる。


「えっと……『ナツキ』です。

 オレ、コトハお姉ちゃんに恩返ししたい。

 だからお姉ちゃんを大事にしてくれてる、お兄ちゃんたちの役に立つことに決めた。

 お願いします。オレを、漢にしてください!」


 ぱっと立ち上がって頭を下げて、また上げると、瞳の色ははちみつ色に、顔つきも大人っぽいフユキのものに戻る。


「基本的に表に出るのは俺だが、ときどき、ナツキの相手も頼みたいんだ。

 みんなも忙しいし、できるとき、できる限りで構わない。もちろん俺たちも、できることは何でもやる。この通りだ」

「………………っ、……」


 大きく頭を下げるフユキ。とそこへ、小さな泣き声が聞こえてきた。シオンだ。

 眼鏡も外さぬまま、栗色の大きな瞳から、涙をぽろぽろこぼして、フユキに歩み寄る。


「オレね、オレ……ほんとはしんぱい、してたんだ。

 エルカさんはやさしいひとだけど……それでもナツキくんとフユキが、もしかしてどっか、研究所とか、連れてかれちゃうんじゃ……ないかって……

 そんなことないんだね? これからもここでいっしょにいられるんだよね?

 コトハちゃんやおれたちと、いっしょにクッキーたべたり、ご本を読んだりできるんだよねっ?」

「……シオンお兄ちゃん……」


 フユキの気遣いだろう、瞳は再び茜色に。答える調子はナツキ君のものだ。


「っしゃあ! ハメの外し方ならオレに任せろっ!」


 ぐい、と目元を拭いてレンが請け合う。ならおれは。


「そうだね、おれは……歌でも一緒に歌おうか?」

「えっ」


 ナツキ&フユキ以外の全員がぎくっとおれをみた。失敬な。


「ナツキ君はおれより年下なんでしょ? 年下の子にそんな、オニみたいな指導すると思う?」

「あ、ええはい……」


 みんなビミョーに信じてない。なぜだ。解せない。

 アスカがあからさまに話をそらした。


「まあそれはおいとくとして!

 なっちゃんのことはみんなだいたい知ってるから。つまり歓迎だよ。

 いずれまた全体集会やるから、そことかでまた挨拶しようね。よろしくね、なっちゃん」


 それでもナツキ君はむじゃきなもので、いっぱいの笑顔で「ハイ!」と言ってくれた。


ぬ……ブクマが増えている気がする……よし夢だ、もう一度寝よ…… 現 実 だ っ た ←イマココ

あああありがとうございます!!


次回、森の女神(なんだか見覚えがないでもない)がこんにちわ! お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ