24-2 ウサギとカラスのないしょ話?
その日の夕方、クラフターズ・ラボにて。
おれとレンは予定した打ち合わせのため、ふたたび顔を合わせていた。
用件は、新作ボムの開発についてだ。
レンは今週当番がない。週末には二ツ星になり、当番は必須でなくなる。よって、善は急げというわけだ。
しかし、レンの開口一番はこれだった。
「お前らさあ……
ミライも中二だろ? 一応授業でそーいう教育は受けてんだろ?
そろそろそっちの話題にも触れさせねえと社会適応できねーぞ、っていうかなんだってその手の話題にあんなにうといんだよミライはよ。
もしかしてミライも実は深窓の令息でいらしたとか……?」
そう、チアキはクゼノインの流れを汲む名家の出で、家族や周囲に愛されて大事に大事に育てられてきたという。最初にそれを知った時には、ひたすら納得だったのを覚えている。
「それはないけど……
しいて言えばミライはおれたちみんなの『守るべき存在』なんだよ。
レンだって、チアキにその手の話をしたいとは思えないでしょ?」
「確かにやつら見てっと『こいつらだけは汚しちゃならねえっ!』という使命感が湧きあがらざるを得ないけどよ……
けどなあこう、心配にもなるんだよ……このさき無防備に女の怖えところとか見ちまったら、ざっくり傷つくんじゃなかろうかってさ……」
照れくさそうにそっぽをむいて、頭をかくレン。
ほんわかと、笑みがわいてきた。
「ミライはだいじょうぶだよ、ソナタがいるから」
「あー……。
となるとあと問題はチアキ、かあ……」
「やっぱりエアリーさんかな? シャスタ様にも気に入られてるし」
「あいつら相手だったら婿っていうよりお犬様だろすでに……
あ~っ。もーいっそオレが女ならがんばって婿にもらってやるのにー!!」
レンがぐしゃぐしゃと頭をかきむしる。おれは突っ込まずにおれなかった。
「うん、レンもそうとう重症だよ……」
「いやそれお前に言われたくねえっ! お前ら三人すべからく女いるのになんでそのラブラブっぷりが微動だにしねえんだよ?! アレか? もう女なんてものは空気と同じですってか――?!」
「さすがにそれはないけど……なんていうかな、別枠?
おれからすればさ、スターシードとしてソナタとふたりで突然このセカイに来て、最初に会ったのがイツカとミライなんだよ。
最初の恩人で、最初のともだちで、最初の仲間だったんだ」
「……そっか。そりゃ、無理ねーわ。
オレもあいつらとは、なんだかんだでたまに連絡取りあってたからな……。」
以前トラオとの試合の時にチアキが言っていた。『レンは仲間の大事さがわからない子だった』と。
そしてレン自身もそれを否定せず、昔の仲間の話も聞いたことがなかった。
おれは少し驚いて聞き返していた。
「レンって徹頭徹尾ソロってわけじゃなかったんだ?」
「そりゃーな……。
ただオレは気ままにフラフラしてたし、決まった仲間とか特には作らなかったからよ。
むしろバトルではオレの前立たれると邪魔なだけだったし……」
レンは遠い目になった。
『ミッドガルドでTP100万・Aランクを達成すれば高天原入学できる。だが、高天原のスタイルに適応できなければ落ちこぼれてゆき、退学もままならずΩにされる』
このシステムは『おかしい』。
それもそのはず、この高天原はαのみならず、有用なΩをも『産出』するための施設なのだ。
この詐欺めいたやり口は、どんな理由があるにせよ許しがたい。いまのΩの在り方も、もともとのありようからすれば歪んでいるとしか言いようがない。
おれたちは、それを正さなきゃならない。いま目の前にいる仲間や、おれたちの後につづく後輩。
そして、一年後にはここに来るはずの、ソナタの為にも。
レンたちにはまだ話せていないことも多い。それでもレンは、不敵に笑ってこう言ってくれた。
「っとまあ、そんな話は置いといてだ!
カナタはこれから、どんなボムが必要と思ってるよ?
ぶっちゃけお前はすでに威力固定ボムとかイツカ専用ポーションとかデタラメなもん作れっからな、俺が主にできるのは威力面での相談になってくるぜ。
ここは、いっしょにチャレンジしてみっか? 幻の存在『テラフレアボム』によ!」
……と。
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