24-1 山合宿のそのあとで!
おれの着想は、予想以上の大当たりとなった。
まず、マウントブランシェの山道とシャスタの洞穴を踏破したことで、参加者全員がレベルアップ。
女神シャスタが『迷惑料』として持たせてくれた多くの泉水晶の原石、そして『シャスタの霊水』により、みんなの装備品も軒並みグレードアップ。
もちろんおれはイツカのモフリキッドアーマー、おれの服とミライのローブをばっちり強化。
最近、とくにイツカの防御力に心もとなさを感じ始めていたので、今回のこれはありがたいものだった。
もっとも装備品で一番グレードアップしたのは、コトハさんのローブである。
エアリーさんたち四人が『ビビッときて』全員突貫工事で作り上げたというそれは、ふわふわひらひらのエプロンドレス型にすることで、強力な魔力布を無理なく可愛くふんだんに使用した、準神器クラスの逸品だ。
アクセントカラーは、彼女に似合うチャコールグレーと金。
ダークグレーを基調としたフユキと並ぶと、なんともシックな好一対が出来上がる。
もっとも当のコトハさんは『す、すごすぎてかわいすぎて……あんまりにもったいないですっ……!』と謙虚。
昇格をかけた試合のときに着ますっ!! と当面は、いつものローブで頑張るようだ。
昇格と言えば、レンとチアキ、フユキとハルオミはそれぞれ、二ツ星への昇格をかけた試合が決まった。
もっともここまでの功績から昇格は決定事項のため、これらはエキシビションに近いもの。
来週昇格したら、フユキは銃の開発のコンサルティングをすると約束してくれて、ハルオミはニノのお手伝いを始める予定となった。
次の公演のネタにつまっていたシオンはというと「これっきゃない……これっきゃないよ――!!」とキーボードを打つ手が見えない勢いで脚本を書いている。
ソーヤは今回のことで覚醒のヒントをつかんだらしく、シオンやミズキの世話をしながら「ふおおおおっ!」と、なんか気合を入れている。
なお、ソーヤは今回ゲットした食材で『マウントブランシェ鍋・改良版』を作って幸せそう。もちろんご馳走になったおれたちもしあわせだ。
いましも〆のおじやまで完食したおれたちは、美味の余韻に浸るしあわせタイムを満喫中。イツカをはじめとしたフリーダム勢はその場でおひるねタイムに突入だ。
アスカはちゃっかりハヤトにもたれ、幸せそうにお腹をさすってこんなことを言う。
「ふいーしあわせしあわせー。
もうこの鍋が自動でわいてくるマジックポットをつくるか、ソーやんを専属料理人として雇うか……夢は広がるなー」
「えー、ソーやんを雇うのはオレだもん! オレ、がんばって稼ぐもん!」
するとシオンがうさ耳パタパタして対抗。ソーヤは両手を頬にあてて軽口をたたく。
「二人のうさメンに奪い合われるソーヤさん……ああっ、なんてメロドラマ!」
「あ、オレべつにソーやんをお婿にする気はないから。」
「ん、おれもー」
するとシオンとアスカは一転、ニコニコとソーヤをいじる。ソーヤはさらに悪乗りだ。
「ひどいわシオ、あーちゃんっ! 俺の献身をカネで買うのねっ!!」
「それじゃあ俺には友情割引でお願いしちゃおうかな?」
「ミズキまでっ!!」
ここまで全員うさぎ装備。食べていたのは熊鍋おじや。なんだかシュールな構図である。
ともあれミズキは優しく微笑む。
「それは冗談として、今度『騎士団』のみんなにもご馳走してあげたいな。
いつもがんばってくれるお礼に。あとで打ち合わせ頼める?」
「合点だっ!!」
ソーヤがガッツポーズを作ると、ナナさんがまったりした顔で言う。
「それにしてもいい味だね~。リアルでこの味出る肉ってなんだろ~?」
「うーん。ソーヤさんが思うにやっぱ……熊肉+豚肉?」
「なるほど~、確かに熊肉単体というよりはそんな感じだね~」
「そーそ、もしお手頃にやりたければ熊の代わりに牛でもいい線行けるかも」
「いやーっ! メシテロはんたいー!!」
「食べ終わったばっかなのにおなか減っちゃう!! 今週末までダイエットなのにっ!!」
料理上手同士のまったりグルメトークに、サクラさんとサリイさんから悲鳴が上がった。
二人は今週末に海合宿に行く予定なのだ。トラオもそこに加わっている。愛する婚約者にきれいな水着姿を見せたいサリイさんにとっては、特に正念場だろう。
まあVRだから最悪『表面換装』で何とかなるっちゃなるけれど、そこは気持ちの問題らしい。
「んっだよサリイー、おめーはトラオと今夜にでも」
「それ以上言ったらおしりペンペンよレン?」
あーあーやれやれといったふうにレンが言い出すと、すかさずリンカさんが笑顔で制止した。
「トラオくんと……?」
「??」
ミライとチアキはきょとんと小首をかしげている。よしよし、ミライの純潔を守るためならやむをえまい。おれも笑顔で便乗した。
「今回はおれもリンカさんを手伝おうかな。もういっそこの場で」
「ぎゃー!! なんでもございませんリンカ様カナタ様っ!!」
レンがその場を全速力で逃げ出して、『うさねこ』熊鍋ランチパーティーは解散となったのであった。
ちょいと遅れました……!




