Bonus Track_23_2 フユキくんのこと、ナツキくんのこと~コトハの場合~
華やかでかわいいサクラちゃんと、地味でおとなしいわたし。
全然正反対だけど、まあしかたないやって思えてた。
こんなの、うらやんだって変わらないし。
それに、サクラちゃんの活発さにわたしが、守られてもいたのだし。
でも、今日は、やきもちを焼いてしまった。
花のようなエプロンドレスのレオナさんたち。
強くって、可愛くって、明るくって。
わたしは地味な実力、地味なローブ、地味な顔。
かわいいなあ、かっこいいなあ。
おなじ女の子のわたしだって思うんだから、男の子のフユキ君なら、とうぜん……
こんなの、うらやんだって変わらない。
でも、どうしてもうらやましくて。
だから、落ち込んでしまって。
みんなをふりまわしてしまった。
シャスタさまは『自分が悪乗りしただけだ』といってくれているけれど。
今まで見たこともない勢いでフユキ君が走ってきてくれた。わたしを奪い返そうと戦ってくれた。
それはとても、うれしかった。
でも、すぐにぜんぶ後悔に変わった。
フユキくんは、我を失ってしまった。
正直怖かった。でも、それ以上に申し訳なかった。
だから、勇気を出した。
『わたしが責任取ります!』
叫んだらすうっと心が落ち着いて。
そうしたらあとは、なにも難しくなかった。
なぜってわたしは、茜色の目をしたその子を知っていたから。
――それは、十二年前の夏まつりのこと。
神社の片隅の木の下で、しょんぼり座りこんでいる男の子を見つけた。
歳は、三歳くらいかな。つまりわたしの弟と同じくらい。
紺色の浴衣を着た、黒髪に、茜色の瞳のとてもきれいな子。
当時から人見知りだったわたしだけど、その時はどうしても気になった。
きっとあの子は、妖精さんなんだ。妖精の国からここにきて、きっととても困っているんだ。
そう思い込んだわたしは、彼に近づいていった。
『あの、』
そのときぐう、と音がした。
おなかのあたりをおさえて恥ずかしそうにする彼に、わたしは買ったばかりのりんごあめを差し出していた。
『うわあい。おねえちゃんありがとう!』
いっぱいの笑顔になったその子と一緒に、縁日を回った。
名前がないというその子に、わたしは名前をあげた。
夏まつりの夜に、木の下にいたから、ナツキくん。
いま思うと子供ならではの、単純なネーミングだけど、ナツキくんは喜んでくれた。
そしていま。
すっかり茜色に変わったフユキくんの瞳を見て、わたしは気が付いたのだ。
ずっと昔の夏まつり。たった一晩だけのお友だちが、いま『ここ』にいるのだと。
そのあと、なんだかんだでシャスタさまとホットケーキをご一緒し、エアリーさんの羊牧場に帰ったわたしたちをまっていたのは、うれしい驚きだった。
エアリーさんから報酬としていただけたのは、たくさんのおみやげホットケーキセット。
そしてわたしサイズの、シックでかわいらしい、エプロンドレス型ローブだった。
昨日のPVですが、当作品の最高記録を更新しました……びびびびっくりです!
お手に取っていただき、ありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
さて次回、新章突入。鍋はおじやも最高です。
この季節にやるには苦しいな! 大丈夫、食後のまったりタイムです(予定)。お楽しみに!




