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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_23 新たな約束、新たな仲間

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23-8 暴走、『暴食』

「『ムーンライト・ブレス』!!」


 おれたちは事前の打ち合わせ通りに強化バフを撃ち始め……ようとして驚いた。

 なんと、フユキがひとり飛び出してしまったのだ。


 フユキは戦闘開始と同時に耐水アクア・レジストのスクロールを使ってくれた――きっちりとパーティー全員を効果範囲に収めて。

 しかし、残る仲間の強化は待たず、即座に水の龍へと突っ込んでいった。


 自己強化技ムーンライト・ブレスを発動すると同時に、足を止めぬまま居合抜き。

 白銀の微光を宿した斬撃が、泉の間を駆け抜け、水の龍の胴体へ吸い込まれていく。

 有効な一撃を繰り出すには間合いが遠すぎる。だがこれは牽制だからよいのだろう。なぜって、大きく開いた水のあぎとには、ブレスのためだろう水球が準備されている……

 そう思った瞬間、ばくり。水龍のどてっぱらで、水の断面が口を開けた。


 長大な胴体がバランスを崩し、はるか高みの頭部がかしぎ、はずみで炸裂したブレスは明後日の方角へ。

 その間にもフユキは、左手の銃を抜き放ち、連射しながらさらに距離を詰める。

 ふさがり切らぬ断面に剣の一撃を加えるや、大きく後ろ跳びで離脱。再び別の方向から斬撃を見舞う。

 声を上げる間とてない、あっという間の猛攻だ。


『ほほう、なかなかやるな森猫よ。これなら遊びがいもあるというものぞ!』


 女神シャスタはご満悦のよう。彼女の後ろに立つコトハさんも、どこかぼうっとその姿を見ている。

 だが、おれたちはそうもいかない。

 打ち合わせでは、全員がまだ固まっている間に使い切り護符を使い、何種か強化をかけておく予定だったのだ。

 しかし今、フユキはひとり離れすぎている。

 つまり、おれたちのいる場所で護符を使うと彼は効果範囲外。護符を彼に投げればおれたちが効果範囲外という二択の状態となってしまったのだ。


「ちっ……『クイックアクト』! 待ってろフユキッ!!」


 最も速かったのはレンの決断だった。

 発動した護符は、中空に浮かぶ青紫の光の球と姿を変えると、くるり。時計回りに光の環を描き、その内側に包まれたおれたちに、速度上昇の効果をもたした。

 光のエフェクトが消えていく間に、おれも腹をくくった。


「みんな、まずはおれたち自身を強化しよう! そしてすぐフユキだ!」

「はいっ!」

「おう!」

「わかった!」


 もちろんフユキが心配でないわけはない。しかしそれと矛盾するようだが、いまのフユキは1~2ターンくらいは余裕でしのげる状態なのが見てわかる。

 つまり、いま急いで強化をかけなければならない『弱者』は、むしろおれたちのほうなのである。


強化インフォースっ!」


 まずハルオミが、打ち合わせ通りに使い切り護符を使用。

 半径3m園内に沸きあがった虹色の輝きが、ここに残った全員のポテンシャルを増す。


「シャスタさま、おねがいしますっ!『シャスタの加護』っ!!」


 それからチアキが左手を掲げ、高らかに祈る。

 左手の甲にはめ込まれた水色の宝珠が、強い輝きを発し、あふれ出した輝く水が、おれたちの頭上から降り注ぐ。

 ぱしゃり、清涼感とともに力が湧きあがるのを感じた。

 シャスタ戦でシャスタの力を使う。奇妙なようだがこれはアリらしいのでありがたく受けると、後ろから強い羽風が吹きつけた。

 レンだ。ワタリガラスの大きな翼で、一気にフユキを追って舞い上がる。


神聖防壁ホーリーシェル!!」


 ついでミライが金の杖をかざし唱えれば、白い輝きを透かす防壁が展開。

 ここに残るメンバーを守るための『傘にして盾』が形成される。


「『ムーンライト・ブレス』!」


 そしておれたち四人は自己強化技を発動。

 イツカは唱えながらもフユキを追って駆け出す。ソーヤは前衛、チアキのわきについて俺たち後衛を守ってくれるかまえ。シオンは最後尾で携帯用錬成台ポータブル・タブローを展開し、錬成魔術の準備に入る。

 そしておれは……


「『抜打狙撃クイック・エイミング・ショット』!」


 左ももの魔擲弾銃オーブ・ランチャーを抜き、イツカを狙って投げられたボムを撃ち落としていた。

 そう、今回おれたちの相手は水龍だけではない。

 何を思ってか彼女の側についた、コトハさんもなのである。

 どむ。ふたつのボムは中空で、かなり重い音を発してはじけ飛んだ。



 そこからしばらく、拮抗状態が続いた。

 コトハさんは的確なボムさばきで、遊撃を続けるイツカとフユキ、レンの攻撃を多く妨害。

 逆にフユキは水龍の水翼とブレスの多くを叩き落としてくれていたが、抜けた分はがりがりとこちらの防御と体力を削ってくる。

 重い、あまりに重い水の攻撃は、神聖防壁ホーリーシェルでそれそのものを防いだとしても、周囲の空気や床の振動を通じて、衝撃をよこしてくるのだ。


 対しておれたちは――錬成魔術の準備をするシオンと、イツカのサポートを主にするおれ以外――ひたすら防御と回復に追われることとなった。


 ミライは神聖防壁ホーリーシェルによる防御を全力で。

 チアキは『シャスタの加護』を巧みに操り、前衛で水の盾を展開しつつも、遊撃三人をサポートし。

 ソーヤは盾役としてシオンを死守。

 ハルオミは後衛からアイテムでの補助・回復を連発している。


 だが、ぎりぎりの均衡は不意に崩れた。


「こいつは、……おいシャスタ、いったん停戦タイムだ! フユキから離れろ!!」

「おおおおおおおおッ!!」


 レンが叫ぶと同時に、それは起きた。

 一声吠えたフユキの剣が、水龍の胴体を両断、霧散させる。

 その陰に隠れるように立っていたコトハさんは、そのまましりもちをついた。

 

「……って、食え……よな……?」


 期せず静まり返った泉の間に、低い低い声が響く。

 そして『そいつ』は、はちみつ色だった両の目で、まっすぐ彼女を射すくめた。

覚醒はいるかと思ったら別方向だった件!


次回、愛の奇跡が何とかしてくれる? それとも……?

どうぞお楽しみに!

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