23-5 そうだ、マウントブランシェ行こう!
手土産の三段いちごパンケーキをむぐむぐと満喫しながら、アスカは答えをくれた。
「うむうむ~。
そういうことなら、おれは全面協力するよん。
まずは、イツにゃんの剣についてだね。
作ってほしいのは『ちょー進化型イツカブレード』? それとも『ライカの弟』?」
「いやん☆ 弟作っちゃうなんて☆☆」
と、今日はエプロンドレス姿のライカが、ほっぺたに両手を当てて身をくねらせた。
見ている限りではかわいらしいが、ハヤトはげんなりした顔で紅茶をすする。
一方、イツカは無邪気に即答した。
「イツカブレード!」
「となると、そいつについてはおれたちも研究協力はできるけど、ディレクション、実作はあくまでカナぴょんになる。それはほかの装備についても同様だ」
「えええ、まさかのほうちぷれーっ?!」
ライカがガーンのポーズをとるのを横目に、アスカは笑いとパンケーキを飲み込み、つづきを話し出す。
「こいつはおさらいになるけど――ボムならばレンレン。回復系食べ物アイテムなら断然コトちゃん。銃ならふーたんが得意分野。
シオっちもソーやんの武具を一から作ってたね。ニノっちは手広く万事こなせる。
まず彼らにそれぞれ声をかけてみるとして、たりないところはおれが、てんでいいよね」
「ああ!」
「異議なし!」
「そして、レベルアップパワーアップはやっぱ『シャスタの泉』が一番いいだろうから、ちあっちゃんとトラっちにも協力を仰がないとだ。
ここで問題があるとしたら、トラっち以外全員、抱えてる件があって動きづらいってことだね。
まずはそちらを何とかしてあげないとならない」
『うさねこ』クラフターの主たるメンツは現状、『暴食』制御研究に携わっており、さらに……
レンとチアキ、フユキは一ツ星ゆえ当番があり、これが地味に忙しい。
コトハさんは制御研究の主力であり、ひとくちティアスイーツ開発においても欠かせない存在だ。
シオンは新たなショーバトルのネタを探し、四ツ星昇格をにらんで覚醒を模索し、多忙さを増すミズキのフォローも、とかなり忙しい。
ニノと来た日には、ひとくちティアスイーツ、羊毛強化アクセサリー、うさぎまんと三つの商品開発の仕切りまで抱え、もはや『お前はヤンエグか』と言いたくなるレベル。
とてもいま、おれたちのためのアイテム開発まで頼めるレベルではない。
イツカがうーんと腕を組む。ソファーのうえで黒しっぽがパタパタするのは気にしないことにする。
「シオンとコトハちゃんは今のまま専念させてやりたいとこだよな。ぶっちゃけ、あいつらしかできないとこでもあるじゃん?
あっ、そうだ。フユキにゃコトハちゃんともうバディになってもらっちまったらどうだろ? そしたら『エ救』で二ツ星扱いになるから、当番必須でなくせる分、ちょっとは手もすくし。
まあやつのプライドもあるだろうから、できれば自力で二ツ星になってもらえた方がいいとは思うけどさ」
『エ救』。『エキュパージュ救済』の略だ。
バディを組む二人の星級に違いがある場合、星級が下の方の者が、上の方の者の『従者』として、同等の扱いを受けられるという制度だ。
「それ考えたら、とりあえず銃についてはその後だよね。ニノもあの銃と剣、自分でカスタムしたって言ってたけど、ニノ自身いま忙しすぎだし。
うーん、せめてレンたちが二ツ星になってそのへん引継ぎできたら……そうだ!」
そのときおれは閃いた。
「もう一度マウントブランシェに、『シャスタの泉』に行こう!」
果たしていくばくかの調整ののち、おれたちはミッドガルドに降り立ったのだった。
タイトル変更は失敗だったかなと思う今日この頃です。
次回! なぜか冬山合宿! しかもどうしてそのメンツ?
お楽しみに!




