Bonus Track_22_3 5日前。高天原にて。~ノゾミの場合~
今回二部分セットでいかせてくださいまし……短いんでし……。
「人違い、か……。」
ミツルの探し人らしい人物を見かけた。
その情報をもとに現地に向かった俺たちが見つけたのは、彼によく似た別人だった。
別人であることは間違いない――彼女はシリアルナンバーを持つ、正規のシティメイド。つまりファクトリーで作り出された、生粋のアンドロイドだったからだ。
屋敷のあるじたちは心優しく、『これも何かの縁だから、何かあったら力になる。それらしい子を見つけたら、お知らせしますよ』と言ってくれた。
しかしミツルの口元の笑みは、社交的なもの以上のものではなかった。
「すみません、先生。先生にまで、無駄足を」
「何を言ってる。今の俺は、お前たちの保護者なんだぞ。一緒に行ってやらなくてどうする」
はたして屋敷を出るとミツルは、しょんぼりした様子で詫びてきた。
フードのうえから頭を撫でてやると、一瞬ピクッとしたが、安心したように翼を下げる。
そしてぽつり、ぽつり、不安を吐露してくれた。
「『人間のΩは、顔を変えてはいけない』……
規則ではそうなってるけど。でも、無理ではない。
あいつは、顔まで変えられてるかもしれない。体、だけじゃなく。
そうしたら、もう、……」
「大丈夫だ。
Ωとはいえ、殺されることはない。
生きていれば、きっと会える」
「……はい」
今度こそ、すこしだがミツルは本当に笑った。
ぽんぽん、とやわらかく頭を叩き、帰ろうと告げる。
「さ、帰るぞ。アオバが今頃心配してる」
「…………はい」
答えるミツルの声音は、小さな惑いを含んでいた。
ミツルと、彼の探し人の間には、不用意には言えぬ事情がある。
探しているのは、暴力事件を起こし、放校処分になったかつてのバディ。などと下手な相手に言えば、たちまち無神経に騒がれる。
Ωとしてどこかに『売られ』、罪を償う当の本人にも、余計な負担しかかからない。
だから、おおっぴらに捜索することはできない。
だから、ミツルの口数はますます減り、アオバは逆に、過ぎるほどに明るくふるまう。
「ミツル――! せーんせ――!!」
果たして校門前にはアオバが待っていて、俺たちをみるや一直線に走ってきた。
いつものきらきらとした笑顔と、よくとおる声は、今回もすこし明るすぎる気がした。




