22-5 はじめての四ツ星講習!
先生や仲間たちの力を借りてとはいえ、おれとイツカはすでに五ツ星として認められるための要件をほとんど満たしているそうだ。
さまざまな試合、企画バトルにおいて、華やかな成績を残した。
連盟のトップとして、多くの生徒に手を差し伸べた。
学内の人たちや関係者、そして世の中の人たちから認められた。
『覚醒』にも成功し、それを使いこなせるようにもなってきた。
座学や実習の成績、所持TPも不足なし。
そして、とある『絶対条件』もクリアしている。
それでも五ツ星になるためには、規定のカリキュラムはこなさなければならない。
すなわち、四ツ星としての専門講習を。
その第一回目、最初の一言で、ノゾミ先生――否、『青嵐公』はこう言った。
「四ツ星となるためには『絶対条件』がある。
ここにいる者たちはすべて、いずれかの時点でそれを満たした者たちだ。
ゆえに、これから先の講習を受ける権利が与えられた。
これは同時に、一つの制約も伴う。守秘義務だ」
守秘義務。
これがために高天原入学希望者は、この先に続くのが本当の戦場であるという事を明示されぬまま、ここに来ることになる。ミソラ先生たちは、そうとわかっていながら教え子たちを受け入れ、送り出さねばならない――ときに望まぬ進路へと。
苦い気持ちを抱きつつ、おれは耳を傾けつづけた。
「四ツ星講習の内容は各レベルの守秘義務を伴うものがほとんどだ。
これらを絶対に、『知らせてはならない者』たちには知らせないように。
もしもこれを破った場合、知らされた者はそのときの記憶を消される。
そして知らせた者は軽くて懲戒。最悪の場合は放校となる。
四ツ星講習が最低二か月以上と定められているのは、この高天原をフィールドとして、守秘義務者実習、兼試験を行うためだ。
自らの言動が適切なものであるかを、無意識ででも判断できるようになれ。
これは、秘されたことどもの重さにいまだ耐えられぬ者たちの、心と人生を守るために必要なことだ。最優先で絶対に、身に着けるように」
例外は、五ツ星以上の者たちによる判断があった場合のみで、四ツ星である間は絶対に、独断でその禁を破ってはいけない。そう固く言いつけられたうえで、小さな箱が配られた。
ひねくれもののおれは開けなかったが、隣のイツカは無邪気に開けた。
姿を現したのは、小さな四つの星をあしらった、艶消しシルバーのチョーカーだった。シンプルでなかなかセンスがいいものではある、が。
「全員行き渡ったか?
それは四ツ星用のチョーカーだ。
記憶領域に保護がかけられ、他者からののぞき見が防止される。また、不意の意識喪失、破損等の非常時にはこの学園内に送還される機能がある。万一でも拉致られた時にはすぐ使えるよう、今この時から肌身離さず身に着けるように。
なお、四ツ星以上用のエリアの入場、資料の閲覧はこれを着けているのが条件だ。忘れてくると四ツ星講習に出られないから注意しろ。
不具合などが出た場合は速やかに相談すること。デザインはマスクエフェクトで自由にいじってよし。別のアクセサリーやシールタトゥーの形にしてもいいが、破損や紛失の場合は反省文じゃなくて始末書だからな。扱いにはよくよく気を付けるように」
なるほどこれは、綺麗な『鍵』付き首輪、というわけだ。
これをつけている奴だけがペットドアをくぐることができる『鍵』。
そしていざという時には見えないひもで引き戻し、つないでおくための道具でもある、と。
おれは挙手した。
「どうしたカナタ」
「もしもの話ですが。これ、もしくは守秘義務を課せられることを拒否した場合、その生徒はどうなりますか。また、この箱を開けた場合何か義務などが発生しますか」
「拒否した場合はこの場で退場。立場としては三ツ星に降格となる。
TPや功績などにペナルティはないので、受け入れる気持ちになったら申し出るように。
箱は、完全に『ただの入れ物』だ。そうした取り決めもないし、開けても触れても何もない」
「わかりました。ありがとうございます」
『青嵐公』は、当然すべてを話してはいないだろう。話せないのだ――『守秘義務』のために。
おれは箱を開封し、チョーカーを手に取り『表面換装』実行。
うさ耳パーツ用の三日月形バレッタに変形すると、左のうさ耳にセットした。
せっかくだし、あとでニノに成型してもらうことにしよう。
『青嵐公』はややきょとんとした顔になって問いかけてきた。
「なんだ、いいのか?」
「この先がどんなものであったとしても、おれたちはとっこむだけですから。
ね、イツカ」
「だな」
イツカはとみると、何の迷いもなくまんま首にはめていた。
やれやれ、こいつの豪胆さにはかないそうもない。
「……お前たちらしいな。
ほかには? 全員身に着けたか? 辞退者はいないな?」
ほかにそうした質問はなく、辞退者もいなかった。見回せばそのままチョーカーとしてつけているものが七割、ブレスレットなど、他の形にしているものが三割と言ったところだ。
「それでは、先を続けよう。
手元のタブレットを確認。テキストが見えているはずだ。
四ツ星としての『絶対条件』と。見えないものはチョーカーを交換するので挙手を」
挙手した者は、いない。
『青嵐公』はそれを二回確認すると、ひとつうなずいた。
「それでは、四ツ星専門講習を開始する。
まず最初は、今言った四ツ星としての『絶対条件』。
それは、『αプレイヤーがやっているのがただのゲームなどではなく、真に国防のための戦いであるという事実を受け入れること。そして、自らもその列に加わるという覚悟を示すこと』である」
そうして、はじめて、おれたちはそれを『習った』。
つまり、この月萌が、他国と戦争をしているということを。
ぴ、PVがいっぱいだっ?!
なぜかわからぬがありがとうございますッ!
次回、ミライむそーふたたび。無双じゃないです。むそーです。
ついに時間さえも吹き飛ばす予定です? お楽しみに!




