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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_22 しあわせのときへむかって

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22-2 ラブコメと、異変の影と(1)

異変の影さんは一応いるようです……。

『例の『暴食』制御研究だけどさ。もちろんよかったらなんだけど、手伝ってくれないかなー?

<持てる者>たるカナぴょんの個人的耐久力が超必要な現場なんだ。

 おれは明日行けないんだけど話通しとくから、のぞくだけでも行ってみてくれる?

 場所は第五錬成室ね』


 ソナタの手術費用が無事貯まったおれに、アスカからヘルプ要請が来た。

 謎の言葉を織り交ぜて。

 その理由は、現場入りしてすぐに明らかになった。


「あ、あの……こ、今度のは、ど、ど、どう、だったでしょうか……」

「あ、ああ。その……

 うまかった。すごく。

 その、前のもええと……す、すき、だが、今度のも……」

「ふぇっ?! は、ははははい、いえ、その……」


 コトハさんが顔を赤らめて問えば、フユキも照れながら返す。

 放課後のクラフターズ・ラボでは、告白寸前のカップルによる激甘おやつタイムが展開されていた。




 もとい。

 フユキに巣食う異変、3S『暴食』を制御するための、食物系クラフトの臨床試験が行われていた。

 チナツがもはややけくそといった調子で声を上げる。


「はーいはいおふたりさーん? 食べたらバトルですよー!」

「ひぇあっ?!」

「な、いやいいいいまのはこれはべつにその」


 ばびゅん。そんな音が聞こえた気がした。

 コトハさんが一瞬で3m後退してナナさんの後ろに。

 その場に残ったフユキはしどろもどろで言い訳をする。


『暴食』コントロールアイテム開発プロジェクトが立ち上がってから数日。

 放課後のラボではこんなのがもう、毎日続いていたらしい。

 本人たちに悪気は一切ないし、微笑ましいと言えば微笑ましいのだが……

 チナツとレン、『おひとりさま歴=年齢』だという二人が、切ない言い合いを始める。


「うあああ。チナツさんもー『嫉妬』降臨しちゃいそー!

 俺も俺だけのかわいーカノジョになんか作ってもらいたーい!」

「んなこと言いやがって、チナツモテんだろー? こないだだってよー」

「だ~から違うんだって~! アレはカノジョでもないし菓子でもないからっ!

 つかそーいうレンこそハーレム状態じゃねーかいっ!

 リンカねーさんには可愛がられサリイちゃんとも今や仲良し、ちあっちゃんという世話焼きバディもいるってのにトラっちともちゃっかり復縁」

「リンカはオレをからかってるだけだしサリイはトラの婚約者だしチアキとトラはそもそも野郎だろうがよ!!」

「たのむやめろ……切なくなる……」


 いつも冷静なクレハも狐に似た耳を垂らして若干涙目だ。

 ちなみにクレハは絶賛片思い中だという。


「いやだからほんとオレはぜんぜん……」

「それじゃあなんでリンカさんとチアキはルンルンお前におやつもって来るんだレン?」

「ただの実験台だよ実験台! 本人たちがそう言ってんだから間違いねーって!」

「………………はああああ」


 クレハは深々とため息をつく。

 チアキが慌てて弁明したのだが……


「え、え、ちがうんだよクレハくん! リンカお姉ちゃんはトラオくんのおやつの練習をしててね、僕はそれを手伝いながらレンのおやつを作っててね、それでね……」

「いやそれ婚約者のサリイがやらない時点で気付こうぜ?」

「やっぱハーレムだあああ!」

「えっえっええええ?!」


 どうやら、逆効果だったらしい。

 こうなると、両想い状態のおれ、実は婚約者のいるハルオミは下手に口が出せない。

 どうしようかと思っていると、ニノが割って入ってくれた。


「ほらほらお前ら、そーしてっと実験進まねえだろ?

 ここはあとでひとりもん同士語らおうぜ、な?」


 するとチナツ、レン、クレハは声を合わせた。


「お前はひとりもんじゃねえっ!!」

「え――?!」



 結果芽生えたなぞの団結で、その後の実験は滞りなく終了。

 発表された結果は、間違いなくうれしいものだった。


「しゅーけいけっかはっぴょーう! じゃじゃんっ!

 コトハちゃんのクラフト『ひとくちベイクドミニチョコバー』の結果がダントツでしたー!

 携帯性、安定度、持続時間、制作コスト。すべて明らかに優秀でっす!

 今後はこれを主軸にして、研究開発をすすめたいとおもいまーす!!」


 すっかりプレゼン係となっているチナツの発表に、錬成室はあたたかな拍手に包まれた。


「おー! よかったなコトハちゃん、フユキ!」すっかり切り替えたレンが、屈託なく笑いかける。

「よかったね、これでとりあえず、授業やバトルやクエストが長引いても安心だよ!」フユキの『おやつがかり』をつとめるハルオミも、ほんわかと微笑む。

「コトハさんはほんとにすごいな。食べ物系に補正あるのはダテじゃないよ」クレハも落ち着きを取り戻し、いつになく柔らかく微笑む。

「あの、わたしだけの力じゃないです……ナナちゃんや、みんなといっしょに、やれたから……ありがとうございます……!」コトハさん、謙遜しつつもうれしそう。眼鏡の奥の瞳には小さく光るものさえ見える。

「あーちゃんとソーヤちゃんとシオちゃんにもさっそく知らせなきゃだね~」コトハさんの背中を優しく支えつつ、ナナさんもニコニコだ。


「おー、俺たちがどうしたって?」


 そのとき、がらっと錬成室の扉が開いた。

 そこにいたのは三匹のウサギならぬ、ソーヤ、シオン、イズミだった。

 明るい笑顔で手を振っているのはソーヤ。ケーキ箱サイズの小包を抱えたイズミは「ども」とうさ耳をピョコン。シオンは可愛い笑顔でぱたぱた駆け込んでくる。

「あ、なんかいいことあった感じー! なになにー?」

「今ね、実験の結果が出たんだ。コトハさんのクラフトが一番だったよ」一番近くにいたおれが役得という事で教えれば、みじかい黒うさ耳がぴょんっとはねる。

「やっぱり! おめでとーコトハちゃん!」

「ありがと、シオンくん!」


 シオンはコトハさんに駆け寄り『おめでとう』。コトハさんもニコニコ『ありがとう』。

 男子相手だとまだちょっと緊張しちゃうコトハさんだが、シオン相手のときは結構気楽なかんじである。なんでも、弟さんに似てるとか。

 そのほんわかした様子に、しばし癒されていたおれたちだったが……


「あ。ニノにかわいい幼な妻からプレゼントがあるから。」

「はぁっ?!」


 我に返ったらしいイズミがさらっと投げ込んできたのは、すべてを吹っ飛ばすレベルの『爆弾』だった。


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