表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_22 しあわせのときへむかって

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

228/1358

Bonus Track_22_2 数日前。とある医療施設にて。~ノゾミの場合~ 

ちょっと所用+書き直しで遅れました。

大丈夫です、無事ですよー!

 待合のソファーに掛けている間、ふと、今日の授業の内容が思い出された。


 いまや、この地球上のほぼ全域を管轄する『ティアブラシステム』。

 これは、旧来の地球環境にはなかったモノを、色々と我々に与えた。

 そのひとつが『パーソナルエフェクトフィールド』だ。


『ティアブラシステム』内にある生物とアイテムは、すべてこれをまとわされている。

 しかし平素、通常の人間の知覚では、その存在を感知しえない。

 言い換えれば、コマンド『表面換装マスクエフェクト』の実行により外観や質感を変更することで、見たり触れたりが可能となる。


 この『パーソナルエフェクトフィールド』は、ある程度体やアイテムの中にまで浸透し、そこから全周囲にむけて広がっている。

 その『体に浸透している深さ=浸透深度』『表面換装マスクエフェクトなどに対する変化のしやすさ=可塑性』『一度獲得した形態を保ち続けるための耐久度=形状靭性』『周囲に向けて広がる大きさ=展開半径』そしてはある程度の相関関係がある。

 これらは二つのグループにまとめられる。

 浸透深度と可塑性(グループI)、展開半径と形状靭性(グループII)の二グループだ。

 各グループ内に含まれるペア。すなわち浸透深度と可塑性、展開半径と形状靭性は互いに比例することが多く……

 逆に各グループの対応する特性。つまり浸透深度と展開半径、可塑性と形状靭性は反比例の関係にある。

 それに基づけば、我々人類は三つのタイプに分類される。


 グループIIの力が大きく、グループIの力が小さな個体をタイプ-α

 その逆の個体をタイプ-Ω

 中庸の個体をタイプ-β


 これが現在のα、β、Ωの源流であり、本来それらの間に貴賎は存在していない。

 しかし、極端な可塑性の大きさはBPを利用してのPEF、ならびにその内側に対する本体構造に対する強制変更、ぶっちゃけ言えば各種攻撃に対する『弱さ』とつながることは否めなかった。

 これに対抗する力を与えるものがTPなのだが、それを多く持たないΩ個体もおり、彼らは戦闘の激化とともに徐々に『下層』の存在として扱われるようになっていった。


 しかしながらその高い可塑性は便利なものでもあるゆえに、BPの利用に長けない個体の所持TPを低く抑え、意図的に下層Ωとすることで身辺の利便を供する存在として特化、利用することで――


 やめよう。


 これは歴史であり、事実だ。

 これから見舞いに行く二人が、身をもって体験する羽目になった現実でもある。

 しかし、愉快なものではないし、そのままにしておきたいものでも絶対にない。


 そして、今考えるべきことでも。


 いま、受付番号がコールされた。

 おれはミツルとアオバとともに立ち上がり、受付カウンターに向かった。




「先生!」

「ありがとうございます、今日も来てくれて……」


 ミツルとアオバをドアの外で待たせ、まずは俺一人が入室した。

 俺の姿を見ると二人は、ぱっと顔を輝かせた。

 ベッドに腰かけた二人は、昨日よりも元気そうな顔をしていた。

 身に着けているものももちろん、メイド服なぞではない――淡いブルーの清潔な入院着。

 PEFの特性も、すっかり一ツ星の標準レベルで安定している。


「食事はとれてるか? 昨日は、よく寝られたか?」

「はい、おかげさまで……」

「体的には、もう大分だいじょぶみたいです。

 これなら、一週間もすれば退院できるそうです」


 そして精神的にも、かなり安定してきている。

 よかった。俺は手を伸ばし、わしわしと二人の頭を撫でていた。


「そうか、それはよかった。

 自我を封じられていたとはいえ、お前たちは一年近くあの屋敷でこき使われていたんだ。しばらくのんびりしても罰は当たらないからな」

「ありがとうございます。何から何まで……」「俺たち、あそこで斬り捨てられていても、文句は言えない立場だったのに」

「助けてくれと言ってる子供を見殺しにする教師がいるか。

 ……ところで、お前たちの見舞いにきた、話をしたいという者がいるんだが」

「俺、たちに……」

「見舞い?」


 二人は不思議そうに顔を見合わせた。胸が痛んだ。

 こいつらは確かに事件を起こしかけた。だが、もとは友人だって家族だっていた普通の子供らだ。

 それが、『俺たちに見舞いなんて来るわけない』と、そんな風に思ってしまっている。


「えっと、誰、ですか……?」

「サヤマとテンリュウだ。

 ……どうしても無理なら、断っていいんだぞ」

「っ………………」


 二人はさらに驚いた様子で沈黙した。

 やがて、二人は覚悟を決めたようにうなずきあった。


「サヤマ、……君には、謝らないといけません、から……」

「逃げません。会わせてもらえますか」




「あの時は本当に、すみませんでした!」


 立ち上がり、深く頭を下げて迎えるふたりを見て、ミツルはああ、と一つ息をついた。

 やがて、きっぱりと言う。


「繰り、返さないなら……もう、いい。から。

 実際、俺は。なにもされて……いないし。

 ……あいつは。一緒じゃなかった……?」

「あの、……俺たち。あすこに買われてからの記憶がほとんどなくて。

 でも多分、一緒だったんだと思う。

 あの女、セットものが好きだったから」

「そうか…………。」


 ミツルはうつむいた。深くかぶったフードに隠れて、その表情は知れない。

 しかし、背中の羽が不機嫌そうにわさわさするのは、充分に見て取れた。

 やがて、ミツルは顔を上げて、新たな問いを口にした。


「二人は。うちに、帰るのか」

「帰れるわけないだろ。

 たとえ記憶は消去してもらったって……一年ちょっと高天原にいてそれとか、絶対『何か』やらかしたってバレバレじゃんか。

 そうしたら、おやじやお袋がどんな風に言われるか……」

「だから俺たちは。再入学して、αになってから。

 そこからじゃないと絶対帰れないんだよ。

 サヤマの卒業まで、なんとか住み込みで働けるとこ、みつけて……もう一度、Aランク100万達成して。そこからまた、高天原に入る。何年かかっても」


 やるせない笑いを見せる二人に対し、ミツルがさらに問う。


「俺の、卒業、まで……?」

「え、いやだって!」

「サヤマも嫌だろ。俺たちなんかがまた、一緒の学校に……」


 対して、きっぱりと首を振るミツル。

 後ろ手にぎゅっと、相棒と手を握って。


「別にいい。

 繰り返さないんだろう。なら俺は、いい。

 俺にはもう、アオバがいる。……怖いものはない」

「……でも」


 しかし、その手に震えはない。

 それどころか、戸惑う二人に対してこんな申し出をしたのだ。


「なら、俺に協力してほしい。

 あいつを探したい。

 ……あいつに言いたいことがあるから。

 その。情報料も、……渡す。から。

 あいつを見つけたら知らせてほしい。

 ……頼めるか」


 ミツルは、自らフードを脱いだ。

 切りそろえられた銀髪の下、真摯な瞳がまっすぐ、二人を見る。

 二人ははっと息をのみ、やがて、我に返ったかのように手を差し出した。


「わかった。……よろしく頼む」

「よろしく、サヤマ」

「ありがとう。よろしく。」


 ミツルはしっかりとその手を握る。



『闇夜の黒龍』から奪還した二人との見舞いに、ついていかせてくれないか。そして直接話をさせてくれないか。

 ミツルがいつにない勢いでそう頼んできたときに、俺は正直渋った。

 相手が相手だ。ミツルの心の傷も、完全に癒えていると断言はできない。

 それでもミツルの意志は固く、アオバもバディとしてフォローすると、頭を下げてきた。


 その結果は、予想以上のものだった。

 俺は大きく息をつくと、新たな話を切り出すことにした。

 彼らの復学の話である。

ブックマークを頂いているという現実について400字以内で述べよ(配点:10)

うわーん。ありがとうございます! 60ブクマ達成(二度目)です!!

う、嬉しいからって何度も見ない見ない……


次回! もふもふラブコメからの七つの大罪の疑惑(予定)!

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ