21-3 ごちゃまぜケーキバイキング・再び!(2)
ミズキとも、もうずいぶん一緒にいる。
だから、いろいろ知っていることもある。
でも本人の承諾を得ずにいろいろ話してしまうのは申し訳なかったので、一計を案じた。
すなわち……
『自分は本当はミズキじゃなくて、ミズキの身代わりをしてる影武者』『ここにいるのはバイトをサボってのことなので、内緒にしてほしい』ということにしたのだ。
ハルオさん、デイジー、リリーの三人は、こころよく了解してくれた。
そんなこんなでケーキをおともにおしゃべりしていれば、ライカとルカとライムが戻ってきた。
「ごめんおまたせ~。はい、ケーキ」
「お茶もどうぞ、みなさま」
ニコニコとルカがテーブルの真ん中にケーキのお皿を置いて、ライムがお茶をついでくれた。
そして『作戦』がはじまった……ようだ。
「ねえねえデイジー、リリーくんも研修生なの?」
「ケーキのお好みはございまして?」
そこからはじまって、さりげなくリリー君に質問しまくり。
とまどうリリー君にぱちんとウインクを返して、ライカはデイジーをケーキテーブルに連れ出した。
そしてなんと、リリー君についての質問を始めたのだ!
おれの隣で『ハルオさん』は、うむうむとうなずいた。
「なるほど、うまいね。リリー君がモテているさまを見せることで、彼の男としての価値、彼女にとっての価値を再認識させる作戦か」
「そのようですね……ってさりげなく『初対面』の肩抱かないでくれますかハルオさん。」
「腰の方がよかったかい、影武者のカナタ君?」
『ハルオさん』はさらっと囁いてきた。この人、見抜いているのか!
驚きながらも彼の手をぺしっとはたき、軽口をたたく。
「なんでわかったかは置いといてライカにチクりますがいいですね?」
「知り合い以上の存在だよ、動きを見ればわかるさ。ライカくんには見せるためにやっ」
「今『初めて』わかったんですがじみにスペック高くないですか『ハルオさん』。」
「ぐはっ!」
毎度のドMにとりあえずのご褒美を上げておき、おれは立ち上がった。
仲間の姿で野郎に肩を抱かれているのは心苦しかったからと、恋人でもない野郎にそうされてうっとりする趣味はなかったからである。
うん、どうしてこうなった。おれはたしか、ライムとルカに、今は恋愛よりαになることを優先したいって話をしようとしてここに来たはずでは……
そのとき、店に入ってきた三人組におれは変な声を上げそうになった。
イツカとルナ、そしてなぜか、『マザー』によく似た水晶色の髪の幼女が一緒にいる。
まて、ちょっとまて。まさか本当に『ティアラ様』を連れてきたんじゃなかろうな。
おれはもうデイジーとリリーの話でおなかいっぱいだから。頼むからこっちに気づくな……
もちろんそんな願いがとどくわけもなく、リアルチート野郎はサラッとおれを看破した。
「あれ、カナター? なんでミズキのカッコしてんだ?」
「おお、カナタか。数日ぶりよな」
「ちょっ?!」
さらには、幼女もどうやら『ホンモノ』らしい。式典で見せたのと同じ笑顔で言ってきた。いや、若干人が悪い顔をしているか。
おれは心で叫んだ。わかっているならフォローして下さいよ、さらっとカナタって呼ばないで!
「え、あれカナタくんなの?」
ほらルナまで無邪気にのたまった。あああ、デイジーこっちみてるじゃん!
「な、なにいってるかなあイツカたち。おれミズキだよ。ほんとだよ?
……ちょっとこっちきて説明するからっ!!」
おれは三人をすばやく手近のテーブルに連行し、事情を説明したのだった。
三人は――というか、『マザー』は当然状況把握しているのだが――説明をあっさりと受け入れてくれた。
イツカはうんうんうなずきながらのたまわる。
「なんだそーいうことかー。
なんだってミズキに変装して『ハルオ』に肩抱かれてんのかと思った」
「いやふつう人間は表面換装サラッと看破しないからね……」
「え? だってカナタだろ?」
「だからおれは『ミズキ』なんだってばっ!」
「あ、わり」
ルナとマザーがくすくす笑ってる。くっそう、どうしてこうなった。
おれは大きくため息をついて席を立った。
「そういうわけでおれ行くから。
そっちはどういう状況かあえて聞かないけど、あとで教えてね」
「へ? どういうもこういうも……」
「今日は三人で遊びに来たの。
カナタくんがすすめてくれたんだってね。どうもありがとう!」
「その節は大儀であった、ほめてつかわすぞ、カナタよ」
「はあ……。」
きょとんとするイツカ、天真爛漫に笑うルナ、そしてしれっと微笑む『マザー』。
もはや、毒気を抜かれて沈黙するより他になかった。
なんとブックマークを頂きまして……ありがとうございます!
ここでいろいろ言うとフラグが立ちそうなんでぐっとガマンガマン……。
次回! まさかの友情・プチまさか! おたのしみに♪




