21-2 ごちゃまぜケーキバイキング・再び!(1)
おれはライムに言われた。
そういうことなら、ルカさんと三人でお話ししましょうと。
ちなみにイツカのやつめはニヤニヤしていたので、おまえはルナとティアラ様と話しなよ、と言ってやったら『ふぇっ?!』と目を白黒させていた。
そう、イツカのやつときたら。ルナさんにお付き合いを申し込まれて友人以上恋人未満の関係にある一方で、ひそかにティアラ様とも仲良くしていたというのだから、とんだギルティ野郎だ。
いやべつにおれはそんなんじゃとか慌てていたので、てきとーに部屋から追い出しておいた。たぶんそこらでルカとルナにつかまることだろう。
はたして翌日の放課後。イツカはルナにつれられてどこかへ。
おれとライムとルカは『スイーツシャングリラ』にやってきていた。
だが入店と同時に、話そうと思っていたことが吹っ飛んだ。
店の奥側。入り口から見て真正面の位置にあるテーブル。
そこにいたのは、まず猫耳メイド服のライカと『ハルオさん』。
その向かいに『デイジー』と、『ホワイト』――資料によれば、こないだの作戦でライカに制圧された、ソリステラスの工作員――に酷似した銀髪碧眼の眼鏡少年。
これは一体。おもわず立ち尽くしていると、ライカがすっごい勢いですっ飛んできた。
『ちょ、カナぴょん! ダメ、いまは顔出さないで!! これ、これかぶっててお願い!!』
ライカは言いざまとんでもない勢いでおれの頭から何かをかぶせ、すさまじい勢いで戻っていった。
そのおかげか、『デイジー』はおれを見たものの、おれであるとはわからなかったようだ。ライカに問いかける。
「あれ、ともだちー?」
『えーと、そうそうおれの兄貴のクラスメイトのいとこの知り合い!』
「それ他人て言いませんかライカさん……」 対して眼鏡少年は普通にあきれ。
「ほほう、ライカくんに兄上がっ! ぜひとも一度おめもじをぐほっ」『ハルオさん』は安定のダメっぷりを発揮してライカに肘鉄を食らっている。
しかし『デイジー』は、ライムとルカは見分けたようだ。
「ってあれっ、ライムちゃんとルカちゃんだー! おーい、いっしょにたべよー?」
無邪気な笑顔でぶんぶんと手を振ってくる。
その瞬間にルカは、ずんずんと歩きだす。
足音荒く、まっすぐに『デイジー』の前に。
そうして、完全に怒った調子で問いかける。
「あなた、どういうつもりなの」
「へ?」
きょとんとする『デイジー』に、ルカは爆発した。
「『へ?』じゃないわよ!
あんなことしておいてよくもこ」
『わーわー!! 人違い!! 人違いだからルカにゃん!!
とりあえず座って、説明するから!』
仲裁に入ってきたライカのことばに、おれとルカは顔を見合わせた。
『……もうわかってると思うけど、このセカイには、この国にはいろいろ秘密がある。
各国の女神が決めた、知っていいこと、悪いこと。
それを踏み越える、もしくはその可能性の高いものは堕とされる。
だからこれから言うのは、君たちが知っても構わないように加工編集がなされた事実だ。それ以上を言ってしまえば、おれは君たちの未来を奪うことになる。
このことを念頭において、情報を飲んでくれ。』
そう前置きしてライカが口にしたのは、驚くべき事だった。
『この子、デイジーとリリーは、君たちの思っている人物と同じ魂をもち、一部の記憶を共有した、別の存在だ。
だからスパイとかじゃない。軍人ですらない。
町で買い物をして、食事を楽しむだけの無害な観光客。『マザー』も存在を認めている。
存りようとしては、カナタたちスターシードに近い者たちなんだ。
だから、これまで通り、友として接してやってほしい。……いいかな』
それを聞くや、素直なルカはデイジーに深く頭を下げた。
「そ、そうだったの……?!
ごめんなさいデイジー。あたし、あなたに似ている子とあなたを重ねて、つい……
これからも友達でいてくれる? あなたがよければ、だけれど……」
「うん、いいよ!
そんな謝らないで。そうだ、ルカちゃんたちにも紹介するね。
この子はともだちのリリー。よく間違われるけど、男の子なんだよ!」
デイジーはニッコリ快諾して、『リリー』君を紹介してくれた。
ライカの報告によれば、この子と同じ顔をした工作員『ホワイト』は、警備詰所に潜み、管制役をしていたという。
きれいな銀髪、澄んだグリーンの瞳。眼鏡の良く似合う、かわいらしいけど、知的な顔立ち。なるほど、頭脳派って感じだ。
思わずつくづくと顔を見てしまうと、彼は可憐に頬を染めた。
「あの……ほんとに、男です……リリーなんて、名前だけど……
えと、よろしくお願いします、その……」
『あ、彼はミズキ。友達だよ!』
えっと思ったが、ライカはおれたちに向け、必死のアイコンタクトをよこしてくる。
「いや、その………………ど、どうも。ミズキです、よろしくね」
かくしておれは、あまり似てないミズキの真似をするハメに陥った。
ライムはなんだか事態を悟っている感じだったが、おれとルカにしてみれば『どうなってんの?』だ。さっそくライカをケーキテーブルに連れ出して尋問を始めた。
やつが言うにはこういう事だ。
『ごめんカナぴょん。
実はおれ、ホワイト……じゃない、リリーくんのこと初対面で泣かせちゃってさ。
責任取ってください! って言われて、デイジーちゃんとのでーとにいい場所ってことでここ教えたんだな。
で、さりげなくしたいからって要望で、レイちゃんも誘ってきてたわけ!』
「そこまではわかったけど、どうしてカナタをミズキなんていうのよ?」
『リリーくんさ、デイジーちゃんが好きなんだよ。
でもデイジーちゃんはカナぴょんのことがすきだしさ。
だからふたりのためのデートの今日は、カナぴょんと会わせるわけにはいかなくって……
だからとっさに、表面換装かぶせたんだ。
てわけで君とライムちゃん以外にはカナタはいま、ミズきゅんぽい人に見えてるんだよ』
「あ、あの子も……そう、なの……
……でっ!
デイジーはリリーくんのことは、どう思ってるの?! 勝算はあるの?!」
『うおっめっちゃ食いつくにゃ!
キライじゃないんだよ。むしろ好きだ。
けどなんていうのかな、小さいころから一緒に育ってきたのもあって、まだまだ弟みたいな認識でさぁ……
リリーくんとしてはなんっとかそこんとこを脱出したいーって思ってるんだにゃー」
「なるほどね……。
わかった。あたし、リリーくんを応援するわっ!
ちょっとまって、ライムも連れてくるからいろいろ詳しく教えてちょうだい!」
『お、おう……』
ルカはなんだか火がついてしまったようだ。こうなるとルカは止まらない。
「ごめんねカナタ、カナタの話ちょっとだけ待っててもらえる? あとで好きなスイーツプレセントするから!
ライムー、ちょっときて、大好きなさくらチーズケーキあるわよー!」
すると素直なライムは「まあ! ほんとですの?」とうれしそうにやってきた。
「ええっと、おれは、どうすれば……」
『おう、ちょっと間もたせててくれる?
そだね、ハルオちゃんとやくたいもないこと話してればいーからさ!』
いやいや、いやいやライカさん。それ人身御供って言わないか。
『だーいじょぶだって。はいチーズケーキとモンブラン!』
なんか不安しかないが、いまはやるしかなさそうだ。
おれは微妙な笑顔でそのお皿を受け取った。
ご高覧ありがとうございます(内容がカオスなのでここは知的に決めてみる)!
ほんとうは伏線もバリバリ……のはず。
次回、さらにカオスが加速! お前もかリアルチート! どうぞお楽しみに♪




