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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_20 白い猫でも、黒い猫でも

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20-7 まずは、それから

 ラボを出たおれは、とりあえず寮に戻ることにした。


 残ったみんなはいま、企画会議の真っ最中のはず。

 しかし、おれはそれには加わらないことになったのだ。

 クラフターとしてはちょっとさびしいが、仕方ない。

 おれには、別の使命があるのだから。

 

 あのあと、アスカはこういった。


『んではおさらいでっす!

 みんなにはずばり、フユキにとりついた『暴食』を多少でも、制御できるアイテムを開発してほしいのです!

 たとえば食欲を抑えるアイテムなり、ちょっとの量でも満足できるマジックフードなり。

 3Sは取りついた宿主に合わせて『変異』する。そのため、宿主に近く接して、ちゃんと知ってる者じゃないと、効きのいいアイテムは作れない。

 いうなればこれは、フユキの仲間であるおれたちだけがこなせるスペシャルクエスト、ってわけなんだ』

『当然これはマイロ先生とミソラちゃん先生、エルエ……ごほん、エルカさんの承認を受けてます。

 つまり高天原として、月萌国としての公認プロジェクト。

 えげつないハナシしちゃうと単位とTP、実績がもらえるから、使える自由研究枠があるのだったらプリーズ! ということなのであります。』


 困っている人をみんなみんな助ける。

 そんな目標を掲げたおれにしてみたら、絶対に加わりたいプロジェクトだ。

 そうでなくとも、ともにがんばる仲間のことだ。

 しかしそれはかなわなかった。

 ほかならぬフユキがそう望んだ――望んでくれたからだ。


『ただし、カナタ。君には、まだこの件にかまないでいてほしい。

 というのは、ソナタちゃんの手術代、もうたまるじゃん?

 そっちをまずは優先してほしいんだよ。

 それは、フユキ本人の希望でもあるからさ』


 今一番、つらいのはフユキのはずなのだ。

 なのに、そう言ってもらってしまったら、全力を出すしかない。


 もっともソナタの手術が終わったとしても、おれはアイテム開発に加われないかもしれない。

 というのは、エルカさんの気になる発言のためだ。


『この時代、『暴食』が出現することはまずありえないはずなんだ。

 月萌ツクモエや、その他の国家において、飢餓問題はすでに解決されているからね。

 それでも出現したとなると……。

 この先を話せる、頼れる後輩が一人でも多く、それも早く欲しいとも、私は思っているんだ。

 もちろん、仲間としてフユキ君を守ってくれるαもね。

 そちらでの協力でも、大いにありがたいよ。

 私でもいいし、先生たちでもいい。

 すこしでも相談してくれれば、援助は惜しまないからね』


 エルカさんは最後に、こう言っていた。


『フユキ君。

 3Sの宿主となっても、きちんと症状を管理し、うまく力を使っていけば、むしろ優秀なαになれるんだ。

 エクセリオンに推されることだってある。

 君たちの身近にも、そういう人はいるんだよ。

 勇気をもって、一緒にがんばろう』


 おれたちの身近にいるという、3Sの宿主。

 心当たりはないでもないが、ぶしつけに聞きたい内容ではない。

 いずれ機会が来るまでと、疑問を胸にしまった。


 疑問と言えば、もうひとつ。

 エルカさんと、シオンのことだ。


 月萌軍にも情報部門がある。エルカさんはそこの偉い人だ。

 にもかかわらず、軍学校というべきこの高天原には、情報部門のキャリアパスがない。

 それどころか、情報系は疎まれ、迫害すら受けている印象があるのだ。


 ここで学ぶのは、戦闘、生産、サポート。それだけ。

 さらに情報特化のプレイヤー――うさぎ装備の男は、ラビットハントの標的にされる。

 情報は、いかなる戦場でも重要なものであるはずなのに。


 先日のマルキアの言葉はそれを裏付けた。

『情報処理能力が異常すぎるもと情報屋』なんて、シオンのほかには知らない。

 それが、その能力ゆえにΩ落ちさせられかかった、と彼女はハッキリ言っていたのだ。

 エルカさんはOKで、シオンはダメ。いったい、それはなぜなんだろう。 


 うそ寒く思い出すのは、ミライがいっとき姿を消した直後の、不気味な現象だ。

 おれはミライの手がかりを求めて、大手掲示板に書き込みをした。

 しかし、縦読みで正解を示していたレスが、書き込み後すぐに改変されていた。


 一体この月萌には、どれだけの秘密が隠されているのだろう?

 そしてそれを、おれは知ることができるのだろうか?

 知って、ソナタやミライ、イツカ……そしてみんなを、守ることはできるのだろうか?


『強く、なるがよい。まずは、それから』


 不意に耳元で響いた声。

 振り返ればそこには、驚いた顔のミライがいた。


「ど、どうしたのカナタ? ぼーっと歩いてたと思ったらいきなり振り返って!」

「えーと、……うーん……」


 どう、話したものか。何を、話したらいいのか。

 考え始めたら、むぎゅーっと抱きつかれた。


「こーらー、またすぐ考え込まないの!

 ほら、部屋に戻ろっ? おれ、お茶入れてあげるからさいしょっから聞かせて?」

「……うん」


 ミライのあったかい手と、あったかい笑顔。そしてあったかな気づかいにほっと気持ちがほぐれるのを感じながら、おれは一緒に部屋に戻ったのだった。

いろいろあって遅れました……!!

なんとなく改タイトル効果はあった……っぽい?!

次回、ボナトラ。悪女と???の会話です。お楽しみに!!

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