19-4 第一楽章~お祭りの始まりだ!!!~(下)
常識的に考えればとんでもない対応ですが、物語の中だけでもせめて、スカッとかっとばしていってほしいのです……!
レモンさんの声が、力強く流れ続ける。
『冗談きついって? そんなことない!
だって、高天原の学長は、あの『銀河姫』!
いくつもの伝説を打ち立てた、超天才軍師にして奇跡の歌姫。
彼女の指揮のもと、10名の勇士がすでに衛星コントロールセンターに向かっているよ!』
高天原から伴走してきた『はばたき飛行式小型カメラ』が、イツカとケイジ君にすっと近づく。
ぱっと画面が切り替わり、ふたりの顔が映し出される。
『まずはさきほど四ツ星昇格を決めたばかりの二人の剣士!
『黒猫騎士』イツカと、『赤銅の猟犬』ケイジ!』
イツカが「……にゃいと?」なんて言ってるのがしっかりマイクで拾われ、電波に乗る。スピーカーごし、誰かの笑い声が聞こえた。
『イツカを支えるふたり。『兎王子』カナタ、『わんこ天使みーたん』ミライ!』
「ふええっ?! てててんしって、あわわわ!」
不意をつかれたらしく、走りながら照れてあわてるミライ。
器用、というかとにかく可愛いのでよしよしと撫でておく。
今度は黄色い声が聞こえる。いつものごとく、なんか太い声も混じっているがまあいいか。
『そして、ケイジの魂の友。
もと三ツ星闘士『金犬騎士』、ユキテル!』
「……頑張ります!」
ユキテル君も、さすがは犬装備。走りながらもしっかりした調子で決意の一言を返す。
犬系装備と言えば、ハヤト。
おれたちの前には、白銀のオーラを漂わせ、寡黙に走るオオカミ装備の姿がある。
『先日昇格を決めた『剣帝』ハヤト!
相棒の『まじかるあーちゃん』を覚醒技で憑依させ、背中に『神剣』ライカを負った姿で先頭を走る!』
『はぁぁ~いライカちゃんだよーん! 全国の美人、美少女、美幼女のみんな~ラブコールよろしくね~ん♪ もちろんそうでないみんなもだーいかんげーい!』
かたかたと震えてしゃべる剣の柄がライブ画面に大写しになった。いつみてもシュールな絵面だ。
『黙っていないのは卒業間近の四ツ星もだ!
『銀燐騎士』ルシード。
そして『魔法蝙蝠少女』マユリ。
四ツ星トップバディ『ホーリーナイト&バットガール』が、力強く空を翔ける!!」
次に映し出されたのは、空。
そこを悠々と飛ぶ銀の龍翼の青年と、彼の肩につかまった、黒いマントの少女。
ルシード君とマユリさん、美男美女の四ツ星トッププレイヤーは、二人そろって手を振ってみせた。
現在おれたちの移動速度は、時速にして70km。
ルシード君の翼はマユリさんをつかまらせた状態でも、最高時速200kmを出すことができるらしい。
そんな力強い翼なら、70kmなど『悠々と』になってしまうのである。
正直いってカッコいい。
まあ、一番かっこいいといえば……
『そして彼らの引率をつとめるのは、『青嵐公』ノゾミ!
むかし『眼鏡の死神』、今は愛すべき鬼のきつね先生だ――!!
彼は『縮地』で先行、すでに現地入りしている様子!
そちらの様子は、改めてお知らせしたいと思いまーす!』
ノゾミ先生はすでに『縮地』を繰り返し、もう基地のすぐそばにいる。
おそらくもう、なにかを開始しているのだろう、その様子は映されなかった。
『もちろん市街にはあの『月閃』トウヤ・シロガネ。彼の率いる警察、国軍部隊。
さらにはアカネ・フリージアも警備に当たってくれています!』
こちらはばっちり映された。トウヤさんはイチゴ色の瞳でちらりとこちらを見るのみだが、アカネさんはいつも通りの笑顔で「やっほー☆」と手を振ってくれる。
ふたりとも、服装はそのまま――明るいと白の軍服風と、露出の高いピンクの甘ロリのままだった。
いっけん無防備なようだが、これはアカネさんお手製の最強装備。ギガフレアボムが直撃しても、痛くもかゆくもないという。
『高天原の校門前には、L-KAとオルカ・フジノのふたり!』
つづいて映るのは、校門前に立つ二人。
スーツとドレスのままのふたりは、なんとも優雅、大人の余裕だ。
いっそのこと、カクテルグラスでも持たせたいほどの雰囲気。
そこからはつぎつぎと、速いペースで画面が切り替わる。
『そしてグラウンド特設ステージではこのあたし、レモン・ソレイユ。
元祖アイドルバトラー『しろくろウィングス』。
『ふしふた』こと『旅の聖者とふしぎなふたり』で金曜の午後を沸かせてくれた『うさもふ三銃士』。
そして総指揮官でもある『銀河姫』と彼女の生徒と同僚みんながっ!
本日のヒロイン!『おこんがー!』のふたりをがっちり守って、盛り上げてみせるよー!』
最後に写しだされたのは、カナイさんとユゾノさんの両手のアップ。
白い衣装の胸元で、ぎゅっとマイクを握り締めるそれは、小さく小さく震えていた。
「……まもらなくっちゃ!」
ミライのつぶやきに、おれとイツカはうなずいた。
この、小さくて大きな覚悟を、絶対絶対守って見せる。
それは、他の皆も同じよう。
地を蹴り、空を翔ける速度は自然と上がっていく。
ふたたび画面が校舎前に戻れば、レモンさんが大きく腕を広げていた。
彼女を見るものすべてを、身体中で抱きしめるように。
『地下シェルターのなかで、自分の家で。
もしくは職場や出先で、みんな不安を覚えていると思う!
けれど、あたしたちは全部! 吹き飛ばして見せる!
さーあ、お祭りだ!!
『みんなあつまれ! 高天原ソング&バトルフェスティバル』!!
ぶっちぎりテンションで! はっじまっるよ――!!』
レモンさんが天に叫べば、カメラが下から上へぐりっとティルト。
ノリノリのBGMをバックにして、いまだ見ぬ『凶星』迫る、青い青い空を映し出した。
評価とブックマークを頂戴していることが新たに判明いたしました!
おかげさまで作者もアゲアゲです! ありがとうございます♪
次回、別の悪いお姉さん(既出)がすごく悪いことをします!
ノゾミ先生のピンチです。お楽しみに!




