19-1 『みんなあつまれ! 高天原ソング&バトルフェスティバル』プロジェクト、スタート!(上)
『はーっはっは!
我々の名は『闇夜の黒龍』!! ソリステラス連合の工作班だ!!
わかっていると思うが改めて言おう。我らはお前たちの敵である!!
たった今、我らは人工衛星『小夜見II』をジャックした。
二時間後には高天原学園に落下。グラウンド、ならびに周辺施設を破壊する!
止めたければ、第二衛星コントロールセンターまで来るがよい。
我らに勝つことができれば、衛星の落下を止めることもできよう。
ただし、来てよいのは生徒10名まで。研修生、メタモルソードドールもこれに含むのでそのつもりで。
ああ、引率も一名までいいぞ。どうせあのケツの青い子狐だろうがな!』
ノゾミ先生が笑顔で紙コップを握りつぶした。
不敵きわまる犯行声明はどう聞いても『あの女性』――
先生の不倶戴天の敵手である、特殊工作員マルキアのものだった。
事件が起きたのは、ダブル四ツ星昇格の直後。
熱気の冷めやらぬフィールドに、『しろくろ』『おこんがー!』の四人が登場しようとしたときだった。
緊急速報が入った。
高天原のはずれにある衛星コントロールセンターのひとつが、『闇夜の黒龍』と名乗る武装集団に占拠された。そしてそこから高天原の各所に、犯行声明が送りつけられてきた、という内容だ。
急遽、定例試合は停止。
生徒たちは全員ログアウトのうえ、講堂にて待機となった。
しかし、講堂に行く前にお手洗いや学長室に寄っちゃいけないとは言われていない。
そんなわけでおれたち有志は、学長室に集合していた。
笑顔の学園メイドたちに案内されたのは、学長室前室を入って『左側』の大扉。
はじめて入ったその中は、ヴァルハラフィールドに通じていた。
目の前に現れたのは、巨大な六角形の大会議室。
壁面の上半分を、三対のモニターに。
下半分には俺たちの入ってきた扉と、一面の青空を望む窓ふたつを配した、SFとファンタジーが融合したかのような未知の空間だった。
『ようこそ勇者たちよ。なんちゃってね?』
スピーカーごしとおぼしき声が響くと、扉を背にしてまっすぐ向こう側。演壇を真下に擁するモニターのまんなかに、ミソラ先生の顔が大写しになった。
いたずらが決まったときのような笑みだ。
本体はその真下、演壇の上でなんだかポーズをとっている。
もちろん服装は、いつもの白いローブで賢者テイストどまんなか。
どうやらミソラ先生は、もとからそのつもりだったようだった。
ちなみに正面モニターの右の方には、いつもの軍服風のトウヤさんと、ピンクの甘ロリのアカネさん。
左の方には、瀟洒な緑のスーツのエルカさんと、薄い青紫のマーメイドドレスのオルカさん。
エクセリオン大集合だ。ただしレモンさんが写っていそうな位置には『SOUND ONLY』。かつてはライムが写っていたであろう位置には、黒い四角のみしかないが。
向かって右壁面のモニターには、ここや講堂、そのほかにいる教職員も写っていた。
ため息をつく先生たちと、ニコニコのミソラ先生に迎えられ、おれたちは着席。
同時に、左壁面にみえるモニターに、おれたちの顔の映像がつきつぎと並んだ。
集まった『勇者たち』は俺とイツカとミライ、アスカとハヤトとライカ。
アオバとミツル。レンとチアキ。ソウヤとシオン。トラオとサリイさん。
四ツ星トップバディ『ホーリーナイト&バットガール』のルシード君とマユリさん。
そして、ケイジ君とユキテル君だった。
「先生。アレは一体……」
着席後さいしょに口を開いたのは、『銀燐騎士』の二つ名を持つルシード君。
『H&B』の前衛。銀竜装備の聖騎士だ。
大人っぽい雰囲気、落ち着いた物腰。流れるような銀の長髪に甘いマスクとあいまって、おれなどよりよほど『王子様っぽい』青年である。
答えたのは、苦い顔をしたノゾミ先生。
「あの馬鹿女はソリステラスの工作員。あれで、当該国軍のエリートだ。
幾度か剣を交わしているが、いまだ仕留めるには至らない」
「……そう、ですか……」
『勇者たち』に動揺が広がった。
おれ、イツカ、ミライ、アスカ、ハヤト、ライカ以外、このことは知らなかったようだ。
『青嵐公』が仕留められない相手。おれたち生徒で相手にならないだろうことは、火を見るより明らかだ。
おそらく、彼女レベルの仲間たちも、衛星コントロールセンターにいることだろう。
「安心して。高天原に衛星を落とすというのは『釣り餌』だから」
しかし、おだやかな声がりんとひびけば、それは沈静化する。
学長にして超天才軍師『銀河姫』――ミソラ先生だ。
「つまり、付け入るスキは『あえて』作られている。
彼女はそういうのを楽しむ節があるからね。
あちらの動きを単純化するためにも、ここはあえて愚直に乗っていこう」
『銀河姫』の仰せなら。そんな安心感が広がる。
もちろんおれも、安心をおぼえた一人だ。
ミソラ先生はいったん言葉を切り、おれたちを見回すと先を続けた。
「むしろ問題は、他の生徒たち、高天原の町の人たちをどう守るかだよ。
最悪コントロールセンターを取り戻したとしても、衛星の落下は止められない可能性がある。
ここは一度、高天原市街の人たちと一緒にシェルターに……」
「まってくださいっ!!」
そのとき、ちょうど開いたドア。
鈴を振るような声に振り返れば、ふわふわの栗色の猫っ毛、もふもふの白いモモンガ装備の少女が息を切らしていた。
昨日またしても驚くようなPVが! ありがとうございます!
どうにも長さが半端なので、迷いましたが二部分に分けました。
明日、プロジェクト本格始動でございます。お楽しみに!




