Bonus Track_18_1-2 わるものになった、わんこのおはなし~ケイジの場合~(2)
おまたせしました! 今回ちょっとスカッとできます!
ぶっちゃけラストを読めばなんとかなる(爆)
結果から言うと、ユキテルの放校処分は覆らなかった。
オレは全く何も知らなかった。だから少し突っ込まれれば、すぐにボロが出てしまった。
そんなオレの言葉に説得力はなく、必死に『オレがユキテルをそそのかしたのだ、ユキテルが全て悪いわけじゃないから』と言い募っても、一ミリも事態はよくならなかった。
何が起きたのか。ユキテルが告発されたのだ。
このころ『ガーデン』では――いや、ユキテルは、傭兵を頼みたいが、すぐには依頼料が出せない、という顧客のために、月末までの簡易資金融資を行っていた。
しかし、それを頼みに自転車操業を続けるうち『負債』が膨らむことは多く、ほとんどの『低ランク顧客』は、あっという間に実質のTPがマイナスとなってしまっていた。
もちろんこれが学園側に知られれば、放校となってしまう。
ユキテルは一計を案じた。勝てる実力のあるものは傭兵として雇おう。それができないなら、アイテムや雑務で返してもらえばいいのだ。その間は、自分で負債を抱えておけばいい、と。
悪意ではなかったのだ。しかし、その関係はすぐに変質していった。
雇われとなったものの中には、見事に頭角を現したものもいた。
しかし、アイテムや雑務での返済は、『債務者』の生活を縛った。
まるでこれでは債務奴隷だ。不満はたまるが、自力で脱出するあてもない。
ユキテルとかれらの関係は、日に日に悪化していくばかりだった。
それでも……
いっとき秘密裏に『ガーデン』の債務奴隷となって、未来への希望をつなぐか。
国の債務奴隷となって、すべてを失うか。
その選択肢を前にすれば、ほとんどの生徒は前者を選んだ。
そうして、利子分のアイテムや労力を上納しつづける立場に甘んじていた。
ただ、ひとりだけをのぞいては。
同じ立場の生徒、全員の負債をただひとりで背負う覚悟を決め、決死の告発を行った『誰か』以外は。
そして、ユキテルの処分は放校と決定した。
ユキテルは、優越的な立場を利用し、弱い生徒を債務奴隷にした、とされた。
仮に、自分でそのつもりがなかったとしても。
そしてこれまでに収めさせた『利子』は、すべて被害者に返済すること、と決められた。
けれど、懲罰的措置により三倍されたその額は、数百万に達していた。Ω(オメガ)に落ちた身ひとつで、まともに返せるとは到底思えなかった。
ユキテルとオレは、スターシード。負債を肩代わりしてくれる親族など、いないのだ。
何かの間違いか、悪夢としか思えなかった。
けれど、やらなきゃならなかった。
身寄りのない、堕ちたヒーローが売り物にされたなら、どんな末路が待っているのか。噂しあう声を聴くほどにぞっとした。絶対に食い止めなければならないと思った。
学園長に頼み込んだ。ユキテルの負債はオレが全額支払います。ユキテルはオレが身請けします。だからユキテルをせめて、安全な職場へと。
周り中の生徒に頭を下げた。どれだけ時間がかかっても、ユキテルのしたことは償います。だからユキテルを身請けする資金を1TPでもいい、貸してくださいと。
ほとんどの生徒たちは冷たかった。
そもそもお前のせいなんだろ? そんなに心配なら、何もかも売っ払ってご主人様についてけばどうだ。そんな風に笑われもした。
同情的な生徒もいてくれたが、かれらには、TPを貸すだけの余裕がなかった。
学外への発信は止められたので、教職員にも、学園メイドにも片っ端から頼み込んだ。
それでも、だめで、だめで、だめで。
仕方のないことだと今ではわかる。それでもオレは日々絶望を深めていった。
そしてもう、本当にだめかと思いかけたとき、逆転のチャンスがやってきた。
そう、忘れもしない。
きっかけは、ある生徒が発した言葉だった。
『じゃあさ~。お前の持ってるその装備くれよ~。あと残り全財産~。
そしたら考えてやってもいいぜ、ユキテルの身請け~』
その瞬間、笑いかけていた。
奴の肩をガシッとつかんで。
『その程度でいいのか? ケチくせえな。
どうせなら俺をくれてやるよ。
俺がお前の剣闘士になって、せいぜいいい思いさせてやる』
牙をむいてオレは、否、俺は、力の限り吼えまくった。
『お前のために勝ってやる。勝って勝って勝ちまくってやる! だから俺に投資しやがれ!!
お前から『借りた』この装備、お前から『借りた』全財産、まとめて使って勝ってやる。だからお前は俺を使ってうまく儲けろ、そしてユキテルを俺に買え!!
いいか、わかったな。返事はッ?!』
ちょうどその現場を、お忍びで視察に来ていた『ある人』が見ていたのだった。
ボナトラもう一部分つづきますが、割と短いし『好きな人は好きな回』なので、夕方~夜に投稿しちゃいます。
ここんとこの高天原の歴史を俯瞰する感じ。
お時間のある時に、のんびりのぞいていただければ幸いです♪




