18-2 正体判明と相談と
「おー、きたきた。割れたよー怪しい子ちゃん」
翌日の放課後。おれとイツカが呼ばれてきたのはトラオの部屋。
アスカはいつも通りニコニコと声をかけてきた。
トラオは二人部屋を一人で使っている。加えて部屋が第二寮だから誰でも手続きなしで来れる。
そんなわけで、『彼がメンツにいて、ちょっと集まるようなとき』には、この部屋に来ることが多くなっていた。
居間のソファーにいたのは、部屋のあるじであるトラオ。
呼び出しをかけた本人、アスカ。もちろんバディのハヤトも一緒。
そして、さきの公演の『王の騎士コンビ』、アキトとセナがいた。
この取り合わせということは、やはり。
口に出す前に、アスカが話を進める。
「警備カメラの画像洗ったらドンピシャ。
イツカの直観は相変わらずすごいね、おかげであっさり割り出せたよ」
はいっと示されたのは、いつものデコデコの携帯用端末。
小さなモニターには、構内カメラの拡大静止画と思しき画像。
画面左側に映っているのは、ある案件の話し合いで顔を合わせたことのある、知り合い以上、友人未満の少年だった。
茶色い垂れ耳を装備し、愁いを帯びた顔。
青みを帯びた瞳は画面右側、おれたちのほうをじっ、と睨んでいる。
ちなみにこれ、アスカはサラッといってるが、どうみてもハッキングだ。
もちろん褒められた行為ではないのでそこは口に出さず、照れてるイツカをほめておく。
「お手柄だね、イツカ」
「へへっ!」
「でも、ケイジ君、『マーセナリーガーデン』か……。
実はね、さっきルカたちに相談されたんだ。
『ガーデン』のメンバーのことについて」
「おおっ!
くわしくお願いしますっ!」
アスカとハヤトはいつも通りだが、トラオ、アキト、セナの三人は、いつになく神妙だ。
おれは一つ息を吸い込むと、言葉を整理し、話し始めた――
『あの。すこしだけ時間、大丈夫?』
『実はふたりに相談があるのよ。連盟トップとして』
レモンさんに指導してもらっての、合同レッスン後。
ルナとルカはおれたちを呼び止めた。
どちらにせよ、お茶休憩はとるのだし、断る理由もない。
そんなわけでおれとイツカは、二人に連れられ、ラウンジエリアに足を運んだ。
ルナのチョイスは、いつもの甘めのホットミルクティー。
ふうふうと冷まし、こくりとひとくち喉を潤す。
そうして、いつになく真剣な表情で言うことには……
『ふたりは、『マーセナリーガーデン』って、しってるよね?』
『おー。アレだろ、トラとかがいた助っ人集団』
『うん、そう。
いまね、そこのひとが、うちに来たいって言ってるの。
でも、それはいやって言ってる子たちもいて……。』
カフェオレを手にしたルカが、後を引きつぐ。
『あたしたちも話し合いには立ち会ったんだけど……
その子たち、『マーセナリーガーデン』に恨みというか、いやな感情があるみたいで。
あんたたちは信用できない、どうしてもっていうならトラオ君と同じ誠意を見せろって突っぱねたの』
『トラオと……
ってことはつまり、ほとんどタダで助っ人やれってことだよね?』
おれは思わず確認を取っていた。
『ええ。
それも、原資をにじいろからもらうのもなしでやれ、って。
最後はほとんど喧嘩だったわ』
『マジか……』
イツカもおれのとなり、アイスココアのグラスを置いてうなる。
むりもない。トラオのあれはあくまで、おれたちがバックアップすることで可能なことだ。誰の支援も受けずにやろうとすれば、早晩潰れてしまうだろう。
それはおいとき、いまのでもうひとつ、確認すべきことか浮かび上がってきた。
『ってことは、『ガーデン』メンバーはこっちにはこれない理由がある、ってこと?』
『ええ。
『ガーデン』を追われたメンバーが、そちらにいるからですって』
「つまり俺たちのこと、か……」
セナが暗く、固い表情で言った。
今回短いですが、ここまでしか書けてないわけでは……ありますorz
しかしなんとか無事、改定版プロットは決まりました。ザルを利用して作り直しました。熱い展開目指します。お楽しみに!




