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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_17 歌と羊とエンジェルティア(3)

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17-9 『ふしふた』ラスバト・ノーカット版!(あの感動のバトルを二週分つなげてみました)(6)

 今度の連携は的確だった。

 倒れ伏したフユキ、いまだイズミに組み付かれたままのニノ以外のほぼ全員が、組織的に役割を果たした。

 燕翼の姫サリイは火球を、そしてようやく立ち上がったカラスのレンは小型爆弾を、飛び回りつつも投げてくる。

 前衛は、必殺技を含めた波状攻撃を。後衛はアイテムや魔法による補助を。

 呪いの波動を利用したのだろう、プリーストたちも再び、回復と支援を行うようになっていた。


 救いは、飛行爆撃隊と前衛たちが波状攻撃を続けているため、それ以上の攻撃は来ないこと。

 そして、アスカがここまであまり戦っておらず、技や魔法を使うためのポイント、爆弾ボム回復薬ポーションなどのアイテムを潤沢に有していたこと。


 ハヤトはアスカに背中を預け、攻めてくる前衛を背後の後衛ごと押し返す。

 アスカはハヤトの背中を守り、途切れることなく支援と回復を連発する。


 それでも、消耗は激しかった。

 アスカの懐のアイテムも、神剣ライカに蓄えられたエネルギーも、ハヤト自身の体力も、時間とともに失われてゆく。

 そしてついに最後の爆弾ボムが投げられた時、アスカが静かに言い出した。


「ハヤト、お願い」

「どうした!」

「今から言うことを最後まで聞いて。

 この事態は、君のせいじゃない。

 君は、何一つも悪くないんだ。

 僕は全部はじめから知っていた。うさぎ族を食い物にする奴らの存在も。それを利用したトラオの悪巧みも。

 なのにその時点で奴らを止めず、魔王復活の糧に育てた。

 そして君にそれを告げぬまま、愚かな王に仕立て上げた。

 王家に情を移さぬために。君を愛してしまわぬために。

 すべては僕の責なんだ。君は一つも悪くない。

 だから僕は償いをする。

 巻き込んでごめんなさい。

 どうかこれを。この力、知識、何もかも、君のために――」

「おい?!」


 戦いのさなかにもかかわらずハヤトは振り返っていた。

 そこにはもう、道化だった白うさぎはいなかった。


 アスカのいた場所に浮いていたのは、白い、白いうさぎの形をした、やわらかく、あたたかな光のかたまり。

 手を差し伸べればそれは、ほわりとハヤトに飛び込んだ。

 しろく輝くひかりとなって、ハヤトのからだに沁み入った。

 ハヤトは吼えた。力の限り吼えた。


『マリアージュ発生:プレイヤー・アスカとけも装備『うさみみ(白)』のエンゲージレベルが限界突破しました。

スペシャルスキル――』

『マリアージュ発生:プレイヤー・ハヤトとけも装備『ハイイロオオカミの耳』のエンゲージレベルが限界突破しました。

スペシャルスキル――』


 覚醒を告げる天の声は、ハヤトの咆哮に喰らわれる。

 その時、ハヤトは人を超えた。



 振り返る。見上げる。真っ直ぐに。シオンだけを。

 背中を叩く剣もこぶしも、もはやハヤトを傷つけない。

 その衝撃は、全てが白い光に変わり、ハヤトの裡へと吸い込まれていく。

 一歩また一歩、歩を進める振動さえ。

 すべてがハヤトに力を与えていく。

 ハヤトの姿を白く、まばゆく染め上げていく。


「そうだったな。

 すべて背負う。それはお前も例外じゃない。

 すべて喰らう。献身も愛情も、恨みも怒りも何もかも。

 そうして、すべて救う。すべて守る!

 シオン!

 お前の救いはここにある。

 ぶつけて来い。恨みも怒りも、狂気も呪いも、何もかもすべて、何もかも全部、俺が受け止め喰らってやる!!」


 納刀し、走りだせば、その身すらも光に変わってゆく。


 ――ごめんなさい。巻き込んでごめんなさい。


 小さく響くは、誰の声か。

 ハヤトは正面からそれに答える。

 

「いいんだ、巻き込めよ!

 俺は巻き込まれたいんだ。お前たちに巻き込まれるのが嬉しいんだよ!!

 そもそも巻き込んだのは王家の、俺のほうだろうが!!

 だから全部ぶつけてこい!!」


 ハヤトは吼えた。

 ハヤトは跳ねた。

 両腕を伸ばし、引き寄せて。

 しっかと魔神を抱き締めた。


 ハヤトはそうしてすべてを喰らった。

 背後から降り注ぐ攻撃も。

 腕の中の魔神があげる咆哮も。

 解き放たれる積年の恨み、怒り、呪い、そして悲しみも。

 小さなうさぎの体を抱いて、すべて、すべてをその身に受けた。


 ひとつ、またひとつ。ぶつけられては喰らう。喰らっては飲み干す。

 数千の怒号は、いつしか救いを求める涙交じりの声となり。

 救いを求める声は、ちいさなすすり泣きになり。

 すすり泣きはそして、安堵の吐息へ変わっていった。



 やがてシオンが目を開ける。

 数百年分のうさぎの恨みを吐き出し尽くしたシオンは、元通りの小さく、愛らしい黒うさぎの少年に戻っていた。


 ハヤトの腕の中、シオンの身体から、小さな光の玉が跳びだしていく。

 いくつもいくつも、宙を跳ねる。

 よくみればそれは、うさぎの形をしていた。

 様々な色と姿をした、ちいさな光のうさぎたち。

 光の粒をまき散らし、ぴょんぴょん自由にはねまわれば、あちらこちらで奇跡が起きる。

 光のうさぎに触れられたものたちの傷がいえていくのだ。

 さすがに、ここまでの戦いで得た疲労はそのままのようで、戦士たちはあいついで床に倒れ、すやすやと寝息を立て始める。


 光のうさぎに癒されるのは、生き物だけではない。

 瓦礫と化した壁も、ボロボロになった調度も、みるみるうちに復元してゆく。


 裁きの間の窓からは、いつしか明るい光が差し込んでいた。

 空は青く晴れわたり、遠く誰かの声が聞こえてきた。


「陛下、殿下――!」

「いま大きな音がしましたが!!」

「みなさんご無事ですかー?!」

「ああ。だれ一人として死んではいない。

 ……誰一人として、死んでは」


 ハヤトはシオンを床に降ろし、ふっと小さく目を伏せた。

 王子に姫にメイドたち。騎士に領主に見習いたち。

 戦士も魔法使いもプリーストも、全員無事にそろっていた。

 ただひとり、白いうさぎをのぞいては。

 それでも、ハヤトは自分の胸に手を当てる。


「アスカ。

 ……そこにいるんだろう。

 お前が差し出したチカラと知識。これからの王国のため、ありがたく使わせてもらう。

 これまでのような、不正や差別をなくすため。

 そうして真に平和な楽園を築く。

 けれどアスカ。そこにはお前もいてほしい。

 いつかかならず、お前ももとのうさぎに戻してやる。

 アスカ。それが俺の、王としてのつとめ。友としての、約束だ」


 そのとき、銀の狼耳がぴくりと動く。

 聞こえてきたのは、透き通るような優しい歌声。

 ハヤトははっと目を上げた。

 驚いた顔でふりかえり――――




【終劇】


やっとこさフィナーレです!

長時間のご観覧、ありがとうございました!

(今度は舞台演劇風にしてみるスタイル)


次回は天丼の宴会回。ふたたび伏線が現れます。お楽しみに!

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