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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_17 歌と羊とエンジェルティア(3)

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17-8 『ふしふた』ラスバト・ノーカット版!(あの感動のバトルを二週分つなげてみました)(5)

「おい、何をっ……それにミズキはどうした?!」

「ミズキはちょっとおねむの時間。

 プリーストの人たち、一旦待って~。ミライ殿下、ミツルっちもその場でストップ!」


 軽い調子で答えを返すのは、ハイイロうさぎの戦士ソーヤ。

 ぱんぱんと手を打ち、プリーストたちを制止する。

 そうして冷たい眼差しを、倒れ苦しむ王子に突き刺す。


「あのさ陛下。そいつら助ける必要って、あるんすかね?

 俺はないと思いますね。奴らは非道を行った。これはふさわしい罰だ。

 そもそも王の暗殺未遂、普通だったら死罪っスよ。

 アオバとミツルとイツカ。そして陛下の騎士は被害者だ。

 姫たちとメイドたち、そしてチアキは百歩譲って、そそのかされただけとしましょうか。

 けれどレン、ニノ、フユキの三領主。そして王子トラオは死ぬべきだ。

 狂ったままで戦い果てるにまかせるか、その手で屠るべきでしょう」

「俺はそうは思わない!

 奴らがそうなったのは、上に立つ俺の落ち度。その俺への暗殺未遂など、誰の責にもする気はない。

 奴らは生きていい罪人だ。いや、死んでいい罪人などそもそも存在しない。

 だから俺は、奴らを救う。

 罪を償い心を改め、今度こそ民のために尽くすよう導く。

 それが、王たるものの務めだ!!」


 こたえつつハヤトは、すばやくトラオの腹から短刀を抜く。

 神剣ライカをかざし、治癒の光を注ぎ込む。


「あー。やっぱりきみはそういうか……」


 すると、白うさぎの道化アスカが大きくため息。

 泣いているような笑っているような、何とも言えない表情でハヤトを見る。


「おれさ。

 ハヤトのこと嫌いじゃなかった。

 厳しい顔して優しくて。

 どんなダメ野郎だって、見捨てず引っ張ってこうとする。

 でもそれは、王さまとしちゃー『甘さ』なんだな。

 だからこういうやつらが増長するんだ。

 このセカイにはあるんだよ、命で償わせなきゃならない罪ってものが。

 それを許してさらに罪の種をまく。

 それは王としては罪だ。

 命で償わせなきゃならない罪なんだ。

 ごめんね、でも君にはやっぱり死んでもらう。

 ……すぐにおれも逝くから。許して」


 高高と手を掲げれば、頭上のシオンが一声吠えた。


「狂わせろシオン、復讐の魔神! 罪の子たちに罪を食わせろ!!

 この偽りの王国と王を、全力で滅ぼせ!!」


 シオンから再びあふれ出す、瘴気のような『ナニカ』。

 それらは色濃い闇と変わって、裁きの間を吹き抜けた。



 闇が姿を消した時、ハヤトの味方はいなかった。

 聖騎士ミズキは依然眠ったまま。

 王弟ミライと三人のお付き、聖者カナタは力なく座り込み――

 うさぎの戦士イズミも、きつねのニノに組み付いたままでぐったりしている。


 ハヤトを見ているものはただ、剣を取る敵、杖を掲げた敵。

 銃を構えた敵、爆弾をつかんだ敵、がれきを拾って投げ続ける敵。

 いま救ったはずの男さえ、ハヤトの首に手を伸ばし、力任せに締め上げてくる。


 頭上には、すっかりと憎しみに飲まれ、魔神となりはてたシオン。

 あたかも黒い太陽のように、呪いの波動を放ち続ける。


 魔神のもとに侍るのは、魔王に仕える灰うさぎの戦士。

 そして魔王を狂気に落とし、真の魔王となった白うさぎの堕神官バースター



 しかし、白うさぎは泣いていた。

 歯を食いしばり、滂沱ぼうだと涙を流しながら、来るべき友の死を見届けようとしていた。




「ライカ、俺に強化ッ!」

『アイサー!』


 狼王ハヤトの決断は早かった。

 生き残り、元を断つ。

 そのために、向かってくるもの全てを一度ダウンさせる!


 神剣ライカの支援を受けつつ、首を絞めてくるトラオに身を寄せる。

 右手にライカを握ったまま、左手でトラオの後頭部をつかみ、力任せに引き寄せる。

 額がぶつかる鈍い音。トラオの身から力が抜ける。

 間を開けず、投げ飛ばす。右手から迫る黒騎士に向けて。

 そのまま、トラオの来た側、乙女たちの群れに駆け込む。


 打撃を受けながら強引に駆け抜ければ、発生するのは同士討ち。

 翼のメイドと犬耳のメイド、さらには彼女らと戦っていた天馬の騎士が容赦なくハヤトに打撃を加えるが、そこへ眼鏡のメイドが手投げ弾を、燕翼の姫が火球を投げ込んでしまう。

 爆音と爆炎が晴れれば、すでにハヤトの姿はない。

 二人のメイドと一人の騎士が、力なく倒れ伏しているだけだ。


 本来なら、彼らを回復するはずのプリーストたちも、今はそうしない。

 発動しない神聖魔法の代わりに使うのは、自己強化技。

 そうして、ハヤトの背中に追いすがる。杖を叩きつけようとする。

 すぐに姫たち、メイドたちがハヤトを取り囲む。

 そこへ黒猫騎士が、ヤマネコの騎士見習いが、牧羊犬の戦士が突っ込んでこようとする。


 さすがに、乙女が騎士に斬り散らされるさまは見たくなかったのだろう。 

 ハヤトは姫の腕をかいくぐり、誰もいない方向へと逃げだす。

 しかしそこでも『敵』に出くわす。名前はセナ、不思議な力で宙を泳ぐ、いま一人の王の騎士だ。

 突進しつつ斬りつけてくるのを、さっと身を沈めやり過ごす。すれ違い様に胸倉をつかむ。

 どこか背負い投げにも似たやりかたで、追いかけてくるものたちに投げつける。

 空泳ぐ騎士は犬耳の戦士チアキを直撃。

 翼をかすめられた燕翼の姫も、半回転して地上に落ちる。


 と、今度は頭上から衝撃。白く切り裂く、ひとつ、ふたつ。

 一撃が頬をかすめ、一撃が肩を斬る。

 遥か頭上で羽ばたくのは、白いクロークのプリースト見習いだ。

 神剣ライカが癒しの光を放ち、自らハヤトに問いかける。


回復ヒール

 ハヤト、撃ち落とす?』

「いや、利用する!」


 ハヤトは再び、追手の群れへ飛び込む。

 追いかけて降る衝撃波も、ともにその中へ。

 衝撃波の直撃を受け、倒れたのは三毛猫の姫。カピバラのメイドもその場にうずくまり、ほかの追手ものきなみ傷つく。

 さすがに敵対行為とみなしたのだろう、騎士見習いがハルバードを突き上げ、黒猫騎士が跳んで斬りかかる。

 しかし、またしても足を引っ張る連携不足。

 眼鏡に狸の耳しっぽ、おとなしそうなメイドの手投げ弾が、本日二度目の被害を出した。

 翼のプリーストを撃ち落とすついでに、黒猫騎士までふっとばす。

 さらに翼のプリーストは騎士見習いの上に落ちてきて、二人共々ダウンという、いっそ素晴らしいほどの惨状だ。


 もっとも黒猫騎士はゆっくりとだが身を起こしている。無事な敵手もまだまだいる。

 ハヤトは再び広間を見渡す。


『爆殺卿』レンは、ぶつぶついいつつ瓦礫を投げている。だが彼がもし、あの大型爆弾を引っ張り出したら全員黒焼き。

 森猫フユキはというと、ぐったりとしたカナタを膝に、こちらを銃で狙い続けている。

 ソーヤもまだ動いていないが、彼は戦士勢の中で一番ダメージが軽い。疲れを見せれば刃を突き立てられることだろう。

 微妙なのはきつねのニノ。意識を失いながらも離れないイズミを抱え、戦えぬ状態でうろつくばかり。

 心配なのはミライと三人のおつきたち、そしてミズキ、カナタ、イズミの三人のうさぎたちだ。今はぐったりとしているが、いつ操られてしまうか知れない。


 ――いや、その時はその時。

 大きく息を吸って吐き、しっかとライカを握りなおす。


 すると、ぱちぱちぱち。

 湿った音がふりかかる。

 手を叩くのは、道化だった白うさぎ。

 目元を拭い、無理やり作った笑いを浮かべ、ハヤトに語り掛けてきた。


「はは。さすがハヤトだね。

 半端なやり方じゃ、蹴散らかされるだけだ。……

 ああ、安心して。レンはあのままにしておくよ。

 あの爆弾男を暴れさせたら、シオンもやられかねないからね」

「ならどうする。

 言っておくが、俺はあきらめる気はないぞ。

 俺が負ければ、ミライは『兄』を二人、失うことになる。

 お前も嫌なんだろう、ミライが泣くのを見るは。

 だから操らなかった。ああやって意識を落とし、なにも見せないようにした」

「鋭いね。

 そうだね、できればミライは泣かせたくない」

「だったら……」

「それでもだめだ。

 一度、壊さないといけない。

 この国に根付いた、腐った思想をぶっ飛ばすには。

 僕は建国の時代から何度も転生してきた。生まれ変わり死に変わりずっと見てきたよ、このセカイってやつを、その不甲斐なさを!!

 犠牲が必要なんだ!! 誰かが死ななきゃ世は動きゃしない!!

 王の首を斬らなくちゃ、国なんてものは変われないんだよッ!!」


 白うさぎが笑顔を脱いだ。絶叫すれば、魔神が吠える。


「魔神、もう一度だ。もう一度罪の子を起き上がらせろ!

 その器擦り切れるまで何度でも!!」


 再び魔神が呪いを放つ。

 倒れ伏したものたちが、ゆっくりとその身を起こす。

 しかし、その足取りはいまいちおぼつかない。

 同士討ちを誘うまでもなく倒せてしまう、そんな危うさが感じ取られる。


「本気かアスカ」

「本気だよ」

「本当に続けさせるつもりなのかあんな様子でっ!!

 だったら俺と勝負しろ。一騎打ちだ。

 俺が勝ったら皆を元に戻せ。

 お前が勝ったら、俺の」


 そのとき、不幸が起こった。

 一発の銃声が鳴り響く。神剣ライカが素早く躍る。

 弾かれた銃弾は、魔神の肩を貫いた。


 耳を弄するばかりの咆哮。さらに溢れる呪いの波動。

 危うげだった『罪の子』は一気に活気づく。

 さらには、力なく倒れていたはずのうさぎたち、王弟ミライ、ミライのお付きさえ身を起こす。


『げ……まずい! ハードモードはいっちゃったよ!

 これはハーちゃんとおれでもダメだ。逃げよう!』

「……いや、これは逃げたら、ダメな奴だ……」


 ぱん。

 最初に響いたのは、軽い破裂音。

 見れば、さきの銃弾を放った男、森猫フユキがゆっくり、仰向けに倒れていく。

 フユキのまえに立っているのは、彼に銃器を向けているのは、うさぎの聖者カナタだった。

 そこだけ別世界に通じているかのように、らんらんと輝く目をした彼は、続けざまに二発、三発を撃ち込んでいく。


「ちょっ……シオンなにやってんだよ、あの子たちとうさぎはいいんだ! はやく解放し……」


 アスカが叫ぶ。しかし最後までは言えない。

 彼の隣に立つソーヤが、横なぎに斬りつけてきたからだ。


「え、なん、で……なんでおれが、攻撃、され……」


 幸いというべきか、傷は浅い。アスカ自身による回復ヒールで、一瞬にして消え去る。

 しかし、アスカのとまどいは消えない。

 ソーヤが冷たく口を開いた。

 だが流れ出てきた声は、すでにソーヤのものではない。


『コレハ <セイセン>』

『マチワビタ フクシュウノ トキ』

『スベテノ ウサギノ チカラヲモッテ ウサギイガイヲ ミナ ホロボス』

『レイガイ ナドハ ユルサレナイ』

『レイガイ ナドハ ユルサ ナイ』

『ウサギヲタタカイカラトオザケヨウトスルウラギリモノハ』

『シマツスル シマツ スル』

『シマツスル シマツ スル』

『シマツスル シマツ スル』


 崩壊した裁きの間いっぱいに、アスカの粛清を望む声が沸きあがる。

 ソーヤが剣を、振り上げる。

 だが振り下ろした場所に、アスカはいなかった。

 ハヤトがアスカの腕をつかみ、一気に引き寄せたからだ。


「ど、どうして……?」

「そうしたいと思ったからだ!」


 混乱してハヤトを見上げるアスカだが、ハヤトには一片の迷いもない。


「お前はうさぎを傷つけたくない。俺は誰も死なせたくない。

 利害はだいたい一致するだろう?

『魔王』を制するまででいい。力を貸してくれアスカ!」

「……はい!」


 聖戦を掲げた魔王の下、道化と王、二人だけの抵抗が始まった。


ぶ、ブックマークを頂けているっ?! ありがとうございますー!!


次回! マジに『ふしふた』フィナーレです。本当マジです。お楽しみに!

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