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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_17 歌と羊とエンジェルティア(3)

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17-7 『ふしふた』ラスバト・ノーカット版!(あの感動のバトルを二週分つなげてみました)(4)

今回はバトルばっかりです。

「イツカしっかり! イツカ!!」

「起きろニノ! 死なせないぞ!」


 水色うさぎのカナタが、黒猫騎士に駆け寄る。

 黒うさぎのイズミが、赤装束のきつねをゆさゆさ揺さぶる。


「大丈夫かアスカ。そしてライカも」

「……ああ」

『おれは平気だよ、剣だからね』


 銀狼のハヤトが、白うさぎのアスカと神剣ライカを抱え気遣う。

 そして。


「シオン!」

「シオンさん!!」


 灰色うさぎのソーヤが、クリームうさぎのミズキが叫ぶ。

 中空に浮いたシオンに向けて。

 無邪気な黒うさぎの少年は、愛らしい面影をそのままに、呪いの魔王と化していた。


『滅び去れ……滅んでしまえ……

 立ち上がれ、滅ぼしあえ。うさぎ以外は皆滅べ!!』


 変わり果てた声が吠えれば、倒れていたものたちがひとり、またひとりと起き上がる。

 はじめに立ったのは黒猫騎士とその『主』。

 黒猫騎士はなぜかくるりと転進。背後の『主』に襲いかかった。

 一瞬にして距離を詰め、上、中、下段と流れるようなラッシュを見舞う。

『主』の方も負けてはいない。

 先の戦いで、みずからもすでに『クイックアクト』の護符を使っていた彼は、加速の燐光をまとっていた。

 鋭いステップで時に後退。時に左右に回り込みつつ、かわし、いなし、ゼロ距離からの射撃を見舞う。

 もともと心得もあったのだろう、黒騎士に引けを取らず渡り合う。

 二人の攻防の勢いは、さきにもましてすさまじい。

 聖騎士ミズキは剣での加勢を断念し、イツカの支援を開始した。


「『回復ヒール』!『回復ヒール』!『神聖強化ホーリーインフォース』!

 どうして、効果が出ない……!」


 だが、ここで異常が明らかになる。

 イツカにむけた神聖魔法は、飲まれるように消えてしまうのだ。


「たぶん、魔王の呪いだ。

 ここはおれにまかせて。ミズキは、シオンをお願い!」

「わかりました兄上。必要ならばお呼びください!!」


 ミズキはうさぎの跳躍力を発揮。ひととびでシオンとソーヤのもとへ。

 カナタは黒騎士たちの戦いへと意識を戻す。

 斜め後ろから見る限りですでに、黒の鎧のあちこちにひび。右の腰当は失われている。

 戦いは『主』が押していた。

 銃撃を右胸、右腿、左わき腹と散らし、黒騎士の防御ガードを振り回す。

 あえて残弾を残しつつ『瞬即装填フラッシュ・ロード』。流れるように左肩へ全弾連射。

 着弾、着弾、クリーンヒット。おそらくは『鎧砕き』の弾丸だったのだろう、黒の肩当てがバラバラに吹き飛ぶ。

 銃弾を撃ち切った『主』は、再びの『瞬即装填フラッシュ・ロード』。

 迫る黒騎士に向けもう一度、同じ場所を狙い撃ち。黒騎士は叫び、肩を抑えて後退する。

 勢いづく『主』とはうらはらに、黒騎士の動きは重くなっていた。

 どうやら慣れない重鎧での戦闘に、力をそがれている様子だった。


「イツカ、落ち着いて! その戦いかたじゃ……イツカ!!」


 回復のポーションを投げ、ときに『主』をけん制し。

 聖者カナタは黒騎士イツカを支援し続ける。

 しかし、その呼びかけに答えはこない。

 何を思ったかカナタは、擲弾銃を再装填。黒い鎧の背中に向けた。



 黒騎士たちの次に立ったのは、きつねのニノ。

 イズミの膝から起き上がると、銃と剣を手に歩き始める。

 とまどうイズミには目もくれず、手近のイツカに狙いをつける。

 間一髪、カナタは擲弾銃をニノに向け、一発二発と発砲する。

 ぱんぱんと、比較的軽い音。

 一発で着衣が破れ、薄手の鎧があらわになる。

 二発目で、その鎧にクラックが入る。


「やめろ! ニノを殺す気か!」

「あぶない!」


 それを見たイズミは怒声とともに割って入る。

 ニノは目の前に現れた新たな標的に狙いを変え――

 ることはない。

 ただ静かに、イズミをわきに押しやろうとする。


「これは……。

 イズミ、おちついて! いまのはただの牽制だから!

 これは防具破壊に特化した魔宝珠オーブ。体にダメージはこないから!!」

「は? ……どういうことだ?」


 ニノに組み付き、もみ合いながらイズミは問う。


「あのじゃまな鎧をぶっこわして、イツカを中から出すんだ。

 あんなの着てたら、イツカはちゃんと戦えないから!

 まず勝たせ、生き残らせて、正気に戻す!

 イズミはなんとかニノを抑えて! おれたちがきっと助けるからっ!!」

「了解したっ!!」



 次に立ったのは、王子トラオ。

 自分に覆いかぶさった姫たちの下から、愕然とした顔で。


「サリイ、しっかりしろ!! リンカも!! くっそ……

 ハヤトォ!! そのイカレうさぎをよこしやがれ!!

 こうなったのもそいつのせいだ!

 サリイとリンカとメイドたち!! 全員復活させるなら、命だけは助けてやる!!」

「ふざけるなッ!!」


 狼王は怒りの咆哮を上げる。


「彼女らは助ける。だがそれは、貴様をとらえてからだ!!

 アスカ、大丈夫だ。お前を渡したりは絶対に、しないからな。

 ここは任せろ。お前はシオンに呼び掛け、正気に戻してやってくれ」

「……ああ」


 道化はうつむき、表情はうかがえない。返された声も低く暗い。

 不安からと思ったのだろう。狼王は優しくその頭に手を置いて、怒れる王子に向き直る。

 手の中の剣に呼び掛け、ぐっと下腹に力を籠める。


「ライカ、いくぞ!」

『合点承知ィ!』



 次に立ったのは、王弟ミライ。

 彼もまた、自分をかばったおつきたちの下から這い出して、悲鳴に近い声を上げる。


「クレハ! ハルオミ! チナツ!

 しっかり、しっかりして! ぼくなんかのために……!

 女神さま、お願いですっ。ぼくのともだちを、助けてください!

複数マルチ・完全パーフェクト・復活リザレクション』……!!」


 王子は指を組み合わせ、必死の声で祈りをささげる。

 すると天から降り注ぐ、優しく力強い輝き三つ。

 倒れ伏した三人を包めば、彼らはうめきながらも体を起こす。


「う……ミライ、だいじょうぶか?」

「けがしなかった?」

「無茶してねーか?」

「もう、それはおれのセリフ!

 もうだめかと思ったんだからね! もうっ……!!」


 涙ながらに三人を抱きしめるミライ。

 だが、クレハはぽんぽんとその頭を叩くと、冷静に言い出した。


「俺たちはおかげでだいじょぶだけど、他のやつらは結構やばいぞ」

「う、うわあ?! なにこれゾンビ映画――?!」

「こっこれ逃げた方がよくね?! っで応援呼んできた方が!!」


 ハルオミとチナツが悲鳴を上げる。

 そう、彼らの目の前には、幾人もの人が倒れている。

 カピバラのメイドと眼鏡のメイド。二人の姫たち。白いクロークのプリースト見習い。

 いつのまにか起き上がった者たちも、多くは正気の様子ではない。


 牧羊犬の戦士は、ふらふらと剣を振るばかり。

 水色の装備は無残に濁り、無邪気な笑顔も消えている。

 ヤマネコの騎士見習いも、うつろな目をしてハルバードを振りかえす。

 だが、その動きも弱弱しく不確かだ。


 そんなかれらの後ろには、ぺたりと床に座り込み、ぶつぶつ呟くカラス少年。

 手元の小石をつかみ上げ、投げてはいるがほとんど飛ばず。


 月色の騎士の背に広げられた水の翼。その色もまた、おどろおどろしいものとなっていた。

 それでも彼は宙を舞う。

 突進、みねうち、かかと落とし。時には水の翼の一撃で、二人のメイドと渡り合う。

 ポニーテールのコノハズク少女と、ツインテールのチワワ少女の二人組。

 コノハズク少女はその背中に、こげ茶の羽根を広げていた。

 隠しボタンで大きくたくし上げられたロングスカートからは、すらりとした脚、猛禽の爪をかたどった暗器がのぞく。

 ポニーテールをなびかせ、中空を滑るように飛びながら、騎士に蹴り技を見舞い続ける。

 犬耳ツインテールの方は、大胆にもスカートのすそを破り捨て、ミニ丈にして戦っていた。

 両手には愛らしい『わんわんにくきゅうグローブ』。

 小柄な体で跳ねるたび、強烈な連打を繰り出す。


 ただし二人の連携は取れておらず、相方を攻撃することも少なくない。

 それでも機械仕掛けのように、二人は一人と戦い続ける。


 青銀の鎧の騎士は抜き身を手に、宙を泳ぐように飛び回る。

 敵味方を問うことなく、手当たりしだいに一太刀を浴びせては泳ぎ去る。

 主の呼びかけに応じることもなく、うつろな目をしてとめどなく。


 白猫王子は罵声とともに、狼王に斬りかかる。

 彼は正気のようだったが、狂っているかのような剣幕だ。

 犬耳の王弟ミライは言う。


「ううん、だめだよ。たぶんほかでもこんな調子のはず!

 ここは、おれたちで何とかしなくちゃっ!」

「なんとかって、どうすんだっ?!」

「倒れてる人の中に、プリーストがいるよね。

 一番近いのは……メイドのナナさん!

 まずはそこまでおれを連れてって!」

「よっしゃ、いこうぜっ!

 走るぞみんな!!」


 カンのよいチナツがスパッと結論を出す。

 ハルオミはえ? ええっ? といいつつ従う様子。


「俺が先行する!

 スキル発動!『タテガミオオカミの疾走』!!」


 クレハが一声叫べば、その体は茜色の光に包まれる。

 狙いを定め地を蹴れば、十数メートルの距離を一瞬で駆けぬけ、カピバラメイドのそばに。

 これに気づいた翼のメイドが、すかさずクレハに鉾を転じた。

 宙を滑り一直線。クレハを蹴り倒そうと迫る。


「ちょっ、ちが、助けるためだって!

 ああもう、『タテガミオオカミの睨み落とし』っ!!」


 それでもクレハは引かず、きっと翼のメイドを睨む。

 ぎん、と金色の光を放った両目を見るや、メイドの勢いが明らかに落ちる。

 蹴りは放ってくるものの、その威力もスピードもがた落ちだ。


「はあ、俺タテガミオオカミでよかったー……

 ミライ早く、おれがおとりになってる間にナナさんを!」

「はい! 女神様お願いします! パーフェクト・リザレクションッ!」


 ふたたびミライが祈れば、奇跡の光が舞い落ちる。

 倒れ伏したカピバラメイドをふわりと包み、みごとに息吹を復活させる。


「んう……でん、かー?」

「おねがいナナさん! リンカお姉ちゃんを復活して!

 そして、二人でどんどん倒れた人を復活してあげて。

 そうすれば、元に戻れるはず!

 おれは、ミツルといっしょにそうするから!」

「わかったよー、ここはまかせるんだなっ!」


 ここで、神剣ライカが声を上げる。


『はいはいお二人さーん、ここでちょこっと提案!

 ここは一度停戦して、ミライちゃんに協力しない?

 ふたりの部下ちゃんさー、だーれも死んでない。けれどやべぇ感じで暴れてんの。

 魔王の呪いにやられてるんだ。助けてやんなきゃそろそろまずいよ?』


 その言葉は王子と王の耳に届く。

 依然剣を合わせたまま、それでもふたりは話し合う。


「……いいな、トラオ」

「ああ、一時休戦だ。

 アスカを呼び戻せ、それとミズキも協力させろ。

 俺たちで手分けして、暴れてる奴らを一旦昏倒させ、神聖魔法で『復活』してもらう。

 まずはそこからだ」

「おう。

 アスカ、ミズキ! ……おい?」

「あ……」


 返事はない。かわりに王子がくずおれた。

 みればその腹部に、深々と刺さった短刀。

 国王のマントも切れている。

 短刀の飛来もとを探れば、冷たい表情のソーヤとアスカ。

 あたかも大魔王と化したシオンを守り、立っているかのようにもみえる。

 そしてなぜか二人の足元、ミズキが倒れ伏していた。


長っ! すんません……!!

だれないようにがんばります!!


2020.03.04

出先でちらっと見て気づきました。おおお……すみません……orz

瞬即装填クイック・ロード』→『瞬即装填フラッシュ・ロード

大胆に→大きく

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