表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_17 歌と羊とエンジェルティア(3)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

172/1358

17-6 『ふしふた』ラスバト・ノーカット版!(あの感動のバトルを二週分つなげてみました)(3)

※今回、バトルしてません。

いうなればシオンさんによる『バカヤロー!』です。(古いネタですが^_^;)

「ミライ?!」

「ミーちゃん!!」

「殿下?!」

「チビスケ!」


 部外者の干渉を避けるため、固く閉ざしたはずの扉。

 開け放たれたところには、小柄な犬耳少年がいた。

 それは国王側、王子側、双方がこの場から遠ざけたはずの人物だった。


 敵味方、いくつもの声が交差する。

 違うのは、呼び方。同じなのは、その少年を案じていることだ。


 チョコレート色につつまれた、ボタン耳と巻きしっぽ。大きなエメラルドの瞳。

 仕立ての良い服をまとっていながら、どこか素朴なその少年は、『とてとて』という擬音がふさわしい走り方で、しかし懸命に飛び込んでくる。

 おつきの三人が伸ばす腕をすり抜け、戦いの場の真っただ中へ。


「ハヤトお兄ちゃん、トラお兄ちゃん!

 もうやめて、怪我しちゃうよ!

 仲よくしよう、みんな兄弟でしょ?」

「っ………………」


 王も王子もぐっとつまる。

 二人のいさかいを幾度となく止めてきた優しい言葉、温かな声音に心は揺れる。

 それでも、二人は言う。言わないわけにはいかない。


「ミライ。危ないから、部屋に戻っていてくれ。

 今日これだけは、やめるわけにはいかない。頼む」

「ミライ、お前には悪いと思ってる。

 だが、もう引き返せねえんだ。

 お前のことは守る。ちゃんと一生、幸せに暮らせるようにする。

 だから、……」

「ありがとう、お兄ちゃんたち。

 でもね、ぼ……おれ、もう子供じゃないんだよ。

 半月後には成人する。もう、守られてばかりの子犬じゃないんだから!!」

「なれば殿下。わたしがお教えいたしましょう」


 進み出たのは国王の道化。

 白猫王子はおい! と怒声を上げるものの、銀狼の王は苦い視線を向けるのみ。

 それに力を得たか、道化は白いうさぎの耳をぴんと立て、よく通る声を張る。


「まずは! それなる少年、カラスのレン。

 権力と爆薬の乱用により、東の辺境の地に左遷。

 されどかの地でも暴虐やまず。

 領民たちを脅しつけ、哀れなうさぎを差し出させ、おのれはべらせようとした!」


 王弟ミライはひどく驚く。

 澄んだ翠玉の瞳を、こぼれんばかりに見開いた。


「ほ、ほんとなの、レン?!」


 気まずく目をそらすレンに代わり、アオバが証言を行った。


「本当です。

 でも俺たちの村にはうさぎがおらず……

 しかたなく、村で一番きれいなミツルに、うさぎの耳をつけて差し出すことになったのです。

 ミズキさんたちがいらして下さらなければ、どうなっていたかわかりません」


 レンは反駁しようとするが、そのタイミングで道化は次へ。


「つぎに! あれなる男、きつねのニノ!

 南の都に居を定め、あくどい商売、脱税わいろ。

 あらゆる手段で荒稼ぎ、貧しいうさぎを買い集め。

 恩を売っては館に囲い、使役獣ファミリアのように利用した!」

「ニノお兄ちゃんが、そんなこと……」


 ミライは信じられない様子。

 反論するのはうさぎのイズミ。

 被害者として、復讐の刃を向けているはずの存在だった。


「ああ。

 おれはあくまで――」

「いや。道化殿の言う通り。

 俺は奴隷のうさぎを買い集め、ペット兼、労働力として安く使った。

 このイズミは一番の被害者だ」

「違う!! おれは自分の意志で、用心棒に!!」

「そう思い込むよう誘導した。

 同じ身分の王国の民を、家畜のように利用するため。

 間違いなく、それは悪だ」

「っ……!!」


 反論の言葉を見つけられず、歯噛みをするイズミをよそに、道化はさらに指弾する。


「そして! これなる男、森猫フユキ!

 愛した女性の面影追って、西の聖者をかき口説き。

 拒絶されれば人質を取り、彼をわがものにせんとした。

『うさぎが猫に逆らうな』など、暴言を吐いて追い詰めた!」

「うそでしょ、フユキお兄さん!

 優しいあなたが、そんなこと……」


 ミライは否定してくれとフユキを見る。

 しかし、フユキは首を振る。


「俺はイツカに呪いをかけ、俺に従う黒騎士にした。

 元に戻してほしければと、カナタの身柄を拘束した。

 カナタは彼女の生まれ変わりだ。手に入れるためならどんな手も使う」


 ミライの瞳に涙がうかぶ。

 けれど道化は止まらない。

 流れるように、歌うように告発を続ける。


「『悪しきくろうさ大魔王』は、異界の地へと封印された。

 うさぎ族みずからの手によって。

 うさぎ差別は王の名のもと、かたくかたく、禁じられ。

 しかしながら実際は、各地でうさぎは虐げられた。

 この三悪人がそうしたように。

 彼らだけが悪いのじゃない。

 それを利用した悪がある。

 かれらの悪を認めることで、その協力を取り付けて、不法を企む悪がいる!」


 そしてまっすぐ指弾したのは。


「レンの暴政を許す代わりに、彼の作った爆弾を、自分のために使えと言った。

 ニノの不正を許す代わりに、彼の稼いだ金を、自分のために使えと言った。

 フユキの妄執を許す代わりに、彼の手にした黒騎士を、自分のために使えと言った。

 それは誰だ! それは誰だ!

 そう、それはこの男、王子トラオにほかならぬ!」


 純白の毛並み、晴れやかな金髪、深い紺碧の瞳を持つ、美しい白猫の王子だった。


「先王の子にして現王のいとこ。

 王位を簒奪せんがため。

 うさぎたちの不幸を糧に、技術を、金を、兵力を。

 我がもとに集め、ここに来た!

 間者を用いて王を斬らせた。

 その罪を邪魔な聖者になすりつけ、ともに消そうと目論んだ。

 ――それが国王、王弟の兄、ハヤトが剣を取る理由なり!」


 道化の服を着た怒れるうさぎは、そうしてひたと口をつぐんだ。


「……そ……おに……ちゃ……」


 静まり返った裁きの間に、震える声が一つ。

 必死に問いかけられた王子はしかし、否定しない。否定できない。


「……ひど……すぎる……」


 透き通ったしずくがぱたり、ぱたり。

 ミライはかくりと膝をつく。

 肩を震わせ、顔を覆った。

 トラオはしかし、声をはげまし開き直る。


「し、……仕方ないだろう?!

 そうでもしなけりゃ、俺は王になれやしないっ!

 いつまでたっても日陰の王子。笑われて、軽んじられるままなんだ!!

 だいたい、うさぎ『差別』はおかしくなんかない。

 国を栄えさせるなら、うさぎどもによる安い労働力は不可欠だ。

 いいだろうが、奴らは罪の民なんだ。

 せっかくまとまったこの王国に、騒乱をもたらそうとした悪の魔王の末裔なんだ!!」

「お前!!」


 国王ハヤトの頭上で、背後で、銀の毛並みがぶわと膨れる。

 王子トラオはひるまない。

 白の尻尾をぶんと振り、止まることなく言い募る。


「たとえそれが陰謀だったとしても! その悪名をぬぐえなかったのはやつらの弱さ。やつらの無能さゆえなんだ!

 弱いものは利用される! 当たり前だろうが!

 俺たちはみな弱者を食い物にして生きているんだ。

 しゃべる家畜もしゃべらない家畜も、食えるか以外の違いなんざねえッ!!」

「……それが貴様の考えか」


 ひどくかすれた声が問いかける。

 部屋中の誰の声でもない。あえていえばシオンに近い。

 しかしシオンのつねに懸命で、舌足らずなかわいさはそこにはない。

 口を動かしているのは、ほかならぬシオンであるにもかかわらずだ。


「それが、それが、それが貴様らの考えか。

 それがため我に反逆の罪を着せ。

 それがため我を異界に封じ。

 それがため同胞に屈従の道を敷きたるか。

 呪われろ、呪われろ、呪われろ真に邪悪な――よ!!」


 愛らしかった声はひずみ、ゆがみ、高ぶるがままにノイズと変わる。


「滅ぼしてやる!! 貴様らを!!

 我が犠牲の上に築かれた偽りの王国を!!

 狂え! 暴れろ!! 喰――いあって――ねッ!!」


 かっと開かれた両の目には、名状しがたい色のナニカが渦巻いていた。

 渦巻き、波立ったそれは、どっとシオンからあふれ出す。

 緑のローブにつつまれた小柄な体をが高々と宙に浮かびあがれば、轟音とともに闇が落ちた。






 やがて暗さが薄らげば、そこには惨状が広がっていた。

 裁きの間であった場所は、原形をとどめぬ廃墟と変わり、はるかな空すらどす黒く渦を巻く。

 雲のあわいを紫電が走り、吹きすさぶ風は斬りつけるよう。

 そして、裁きの間にいたものたちは、そのほとんどが倒れ伏していた。

 かろうじて膝をつき、こらえたものは――ひとりの狼、五人のうさぎ。


 国王ハヤト。ハヤトにかばわれた道化アスカ。

 カナタとミズキの聖者兄弟。

 そして、ソーヤとイズミ、二人の戦士だけだった。

閲覧ありがとうございます。励みになっております♪

次回やっとこバトロワ。そして誰かが裏切ります。お楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ