Bonus Track_1-4 僕とハヤトと、掲示板
名無しのもふもふ大好きさん:
――――ここまでカナぴょんのΩ落ちなし――――
名無しのもふもふ大好きさん:なぜ二回言ったし
名無しのもふもふ大好きさん:ほらよ つ【なんかの陰謀でΩ落ち→闘技場でやられ役】
名無しのもふもふ大好きさん:普通だな
名無しのもふもふ大好きさん:普通だね……
名無しのもふもふ大好きさん:じゃあ追加ー つ【対戦相手が記憶喪失のイツにゃん】
名無しのもふもふ大好きさん:なるほど、こちらからは攻撃できず、しかし相手はガンガン攻めてくるから、名前を呼びながら逃げ惑うハメになる、と
名無しのもふもふ大好きさん:見たい
名無しのもふもふ大好きさん:見たいね……
名無しのもふもふ大好きさん:天才かっ!
名無しのもふもふ大好きさん:捗りすぐるわ!!!!
「っ!!」
ドン。
ここまで読み進めたところで、ハヤトは机をぶったたいた。
ああ、いまミシッていった。だから言ったのに。
とりあえず、ハヤトの手の骨でないのは確かだし、いいことでもあるのだが。
僕は鼻息を荒くした相棒の背中を叩いてやった。
「どうどうどう。
だいじょぶだいじょぶ。カナタちゃんは諾々と『イケニエのウサギ』になるような子じゃないよ。
俺がさり気に接触して注意しとくからさ」
「……もしそれで、気づかなかったら」
「最悪、一度やられりゃ気づくっしょ。そっから立て直せるよ、彼らならね」
「っ……」
「それよりやばいのはミライちゃんだ。『天使堕とし』されたな、これ。
イツカちゃんたちに『身請け』させるつもりだろう」
「やつら、どこまで腐ってやがるッ!」
「心底まででしょ。
だからこそ大丈夫。ミライちゃんはきっと無事だ。
――今は力を蓄えて。その怒りと一緒にね」
「……ああ、もちろんだ。」
「ていうかねー。ハーちゃんはほんとこういうの耐性つかないねー。
いちいちまじめに怒って……毎度ぶったたかれる俺の机がかわいそうなんすけど」
「あ」
「もし次叩き割ったら今度こそ脱衣ショーね?」
「い……いや待て落ち着け話し合おう、悪かった、その件は本当に……」
「はー。
もーハーちゃんは掲示板禁止したほうがいいのかなー」
「そういうわけにいかないだろう。お前が細かく掲示板を見ていたから、俺たちはこうしていられるんだ。だから、俺たちのような、気づいたものが気をつけていてやらないと……」
「ハヤトにめちゃくちゃにされた程度で、俺はハヤトを嫌わないよ」
「っ?!」
「さー今日はもう遅いし、ねよねよ。明日もはやいぞー」
「はっ……?!」
一瞬ぽかんとしていたハヤトだが、その後すーはーすーはーと深呼吸し、ぷんすかとベッドにむかっていった。
面白いんだけど、すっごい、面白いんだけど、……ま。いいか。
僕もすーはーと深呼吸すると、自分のベッドに向けて歩きだした。
……これが、ゆうべのこと。
そして今モニターのなかでは、昇格の儀を終えたばかりのロップイヤー少年が、何も知らずにまぶしい笑顔を見せていた。
「助けるぞ、絶対」
「助けようね、きっと」




