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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_17 歌と羊とエンジェルティア(3)

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17-3 猫島黒歴史、そしてちいさな笑い声

2020.02.28

ご指摘いただきまして、不足のありそうな部分に加筆修正を行いました。

詳細はあとがき後にございます。

 翌日の放課後。

 おれたちはいつもの校内ボイススタジオで、OKが出るのを待っていた。


「ミツルのやつ、まだステージデビュー迷ってるみたいで……

 そんな状態でボイトレとかってわけにもいかないから、かわりに俺が見学に……

 やっぱ、だめ、かな……?」


 あれから約束通り、ルカとルナは個人レッスンを開いてくれていた。

 数日に一回、四人でのレッスン。

 だが、今日はゲストがいた。

 アムールヤマネコのアオバ。タンチョウヅルのミツルの相棒である。

 講師二人にむかい、事情を説明するアオバ。そのふさふさの猫耳はちいさく垂れ、大きな青葉色の瞳は、身長差から自然に上目遣い気味になっている。

 なんだろう、このけなげ可愛い生き物。

 ちなみにイツカはもう完全にやられて全力擁護にまわってる。ルナはいつもどおり、ほわほわニコニコだ。


「なあ頼むよ、見学だけなら減らないだろ?」

「わたしはいいと思うよー。

 どうしても気が散っちゃうなら、ミキサー室から見ててもらえば」

「うう……」


 ルカはOKをさりげなく伝えることばを探してるようだ。

 微笑ましいけど、いつまでもうならせとくのもアレなので、おれからも呼び水を向けることにした。


「ルカ、おれからもお願い。

 これからルカたちももっと有名になってくと思うし、そうしたら見学者がもっといる状態でのレッスンをすることにもなると思うんだ。プロとしてさ」

「っ……そうね。プロならそんなの、いちいち動じてちゃだめね!

 いいわ。しっかり見てらっしゃい。今回は特別にタダにしてあげる!」

「やったー! ありがとうハルカさん!」

「ル、ルカでいいわっ。

 それじゃっ、始めるわよ!」



 個人レッスンはこれまで通り、30分ほどで終了した。

 もっとも二人が言うには――


「カナタはそもそも、かなりできてるのよね。

 後はもう、独自のテクニックと経験のレベルね。

 こればかりは、自分で場数を踏んで、模索していくところだから。

 あたしたちでよければいくらでも見本になるから、どんどん吸収してってちょうだい!」

「イツカくんは、本気で一度見たらすぐ覚えるね。

 ステージ度胸もあるし、あとは毎回のレッスンをこつこつやって、それを確実にできるようにしとくことだよ。

 わかんないとことかあったら、いつでもきいてね」


 そうしてこれからは、二人が『指導』をするというよりは、四人で合同練習をするという形になったのだった。


「うーん、いーじゃんいーじゃん?

 ルカもルナも、あたしより教え方上手だよー。

 アオバくん、ミツルくんに伝えてあげて。

 ステージ出るか出ないかなんてちっとも構わないから、一度のぞきにおいでって。 

『迷ってる』ってことは興味がないわけじゃないんだからね! そういう子は大歓迎だよー!」


 と、いつの間にか現れたレモンさんがルカとルナをうしろからむぎゅっ。

『縮地』だ。どう見ても『縮地』だ。

 アオバは突然人が瞬間移動してきたこと、それがトップアイドル『レモン・ソレイユ』だったことに仰天してとんでもない声を上げた。


「うわあ?! れっれもんそれいゆー?!」

「へへー。いぇい!」

「みゃああああ!!」


 言語機能崩壊してしまったアオバは、あたふたわたわたしたと思うと携帯用端末ポタプレを取り出して音声通話を開始。左の人耳に当て、ネコ語でなにか話し始めた。


「み、みゃみゃみゃ! みーみ!! みゃー!!」

『……。』


 すぐに音もなくミツルが現れ、ついでにノゾミ先生もあらわれた。

 あとは、推して知るべし。



 ルカとルナは、その後予定があるという事だった。

 そのため、おれとイツカ、アオバとミツルの四人だけで学食へ。

 温かな飲み物で、喉をいたわるお茶休憩をとることにした。

 その席で、アオバは打ち明けてくれた。

 ぺこんと耳を折り、恥ずかしそうに。


「俺、ミッドガルドではずっと『猫島』にいただろ?

 実家も猫屋敷だったし、テンパるとつい……」

「あー……」


『猫島』。島中たくさんの猫たちが暮らす、ミッドガルド有数の観光名所。

 ぶっちゃけいろいろと思い出深い地名だ。

 イツカはうらやましそうにのたまう。


「いいなーアオバー。俺あんま行かしてもらえなかったんだよなーあすこー」

「おまえ『猫島』入り浸って三日でヒト語忘れたじゃん! 大変だったんだからねあの後!」

「あはは……順応性あるのもそれはそれで大変なんだな……」

「ありすぎなんだよこいつの場合……」

「だからってさあ……一ヵ月に一度だけ、それも一日だけなんだぜ?

 脱走しようとしたら、……

 あー、またたび投げられて強制送還されたっけ」

「イツカもかー!

 そーいや多かったなー『猫島』からの強制送還。

 まえなんか、島から帰ろうとしないPMパーティーメンバーに業を煮やしたプレイヤーが一度、なんとかってグレーゾーンアイテム使ったことがあってなー。

 それ以来『猫島』はチケット制になって、しょっちゅう送還手伝ってた俺は正式に『猫島』の管理にゃん手伝いになったりしたっけ」

「あはは、それは……大変だったね!」


『猫島』や『うさぎ島』などの『けも聖地』はミッドガルドでも特殊な場所だ。

 NPCの管理獣人以外、定住は原則として禁止。観光客の滞在も、3泊までと定められている。

 それでもその禁を破ろうとするプレイヤーは多く……

 あの事件を機に、特殊アイテム『入島チケット』のないものは入れない、チケットの期限が切れたら島外に強制送還、というようにシステムが変わったのである。


 正直あまり、追及されたくない話題だ。笑ってごまかそうとしたが……


「そういえばその時のふたりって、黒猫と水色ウサギのコンビだったよーな……」


 アオバはじ――っとおれたちを見てくる。

 ミライにちょっと似た、澄んだ瞳を向けられると、心のすみっこがじりじりしてしまう。

 いやいや、がんばれおれ。がんばれおれ。精神力で笑顔をキープする。


「は、ははっ、すげーぐうぜんだな!」


 イツカも笑ってごまかそうとしているが、アオバは止まらない。


「でもその二人、小学生なのに二人だけでレイドボス倒しちゃって、『猫島』の永久無料パスもらってて。

 なんでか俺一度も会えたことないんだけど、名前はたしか……」

「…………………………」


 ため息が口をついた。もう、とぼけきれない。

 知り合った頃にも、アオバが『猫島』の出身という事は聞いていた。

 その時から、いつかこの日が来るのでは、そう覚悟はしていたけど……。


「おい、カナタ!」

「調べればわかっちゃうことだよ、イツカ。

 そう、おれがその『水色ウサギ』のカナタ。で、こいつが『黒猫』のイツカ。

 ぶっちゃけ引くと思う。相棒を島から連れ戻すのが毎回難しいからって、役獣制御環ファミリア・リングを――劣化改造版とはいえ、だまして着けさせてたなんて。

 ごめんね、今まで言わずにいて」


 そして、深く頭を下げた。

 そう、おれがあの時やらかしたことは、れっきとした黒歴史だ。


使役獣ファミリアが主人の視界から消えれば位置を通知。場合によっては主人のもとへ強制帰還もさせられる。もし許可なく暴れれば弱体化ウィークネスがかかる。』

 そんな、人につけてはいけないアイテムを、おれはイツカにつけたのだ。

 強制帰還はあんまりひどすぎるから、その代わりに弱体化ウィークネス漸次回復リジェネーション防壁シェルを発動、同時に位置を通知するようにした。

 トラブルならばおれがかけつけて援護し、脱走ならばなんとか引きずって帰ってこれるように。


 もちろんギルドからは注意を受けた。

 そして、『自分が元凶だから』と頭を下げてくれたイツカともども、しばらく監視対象だったのだ。


 けれど。


「引くって……なんで?」


 聞こえてきたのは、笑いを含んだ優しい声。


「俺たちみんな知ってるんだぜ。

 イツカは自分がひたすらおとりになって、猫たちを逃がしてくれて。

 カナタは素早くイツカの位置を知って、駆け付けて援護。

 無事にそれができたのは、その役獣制御環ファミリア・リングの機能によるものだって――

 イツカの危機を察知して、保護機能がイツカを守り、その位置をカナタに通知したからなんだって」


 顔を上げれば見えたのは、きらきら明るいいつもの笑顔。


「え……うそ……」

「マジだって。

 だからふたりは、俺たち『猫島』の民にとっちゃ大物喰らいの英雄なんだぜ!

 まあ、そのアイテムがアイテムだから、本人たちにはナイショにしてくれって、管理にゃんさんたちからは頼まれてたけどな。

 もしもその二人と高天原で再会できたら、言ってもいいよって言われてて…… 

 やっと言えた。やっと会えた。

 ありがとう、二人とも。

『猫島』の住民は、ふたりを嫌ったりしないぜ。それどころかみんなふたりに憧れてるんだ。

 やっぱお前たちはスケール違うな!

 高天原史上初の男アイドルバトラーになっちゃうだけあるよ!」


 アオバがおれたちの手を取って朗らかに笑えば、ミツルもこくこくうなずいてくれる。


「……ありがとう。

 でも、ダンスはアオバのがずっとうまいし、歌のうまさっていったら、だんぜんミツルのがすごいと思うけどね」

「へへ、ありがとカナタ!」

「…………!」


 心のままを伝えれば、アオバは照れくさそうに笑う。

 ミツルはそのとなりで再びフードを引っ張ってうつむいてしまう。

 でも、口元の控えめな笑みを見る限り、まんざらでもない様子。


「だよなー。

 ていうかミツルは、俺たちみたく無駄にわめいたりしないから……

 声そのものが貴重品なんだよな。

 だから、無理はしなくていいと思ってるぜ、俺とかはさ」

「!!」


 しかしイツカのやつめがサラッとのたまった瞬間、口元まで真っ赤に。

 アオバもはわわと赤くなっている。


「……こ、これ女子だったらノックアウトなやつだぞおい……」

「え、まじ?」


 天然主人公野郎はぽかんとしているので、おれは言ってやった。


「男子でも人によってはやばいかもねー?

 まっ、がんばれ主人公!」

「え? え?? 何主人公って?! いったいなにをがんばるのー?!」

「とりあえずは宿題かな?」

「にゃああああ!」


 一声鳴いてショボーンとするイツカ。

 思わず笑ってしまったとき、ふと気づいた。

 ほんの小さくだけど、ミツルも声を上げて笑っていることに。

 ミツルが結論を出す日も近い。おれはそう予感したのだった。

次回、掲示板回(……からのウルトラCができるといいな)!

場面的には、『ふしふた』最終回-1です。お楽しみに!


2020.02.28修正詳細です。

いつものボイススタジオで→いつもの校内ボイススタジオで

突然人が現れた→突然人が瞬間移動してきた

携帯用端末ポタプレを取り出して耳に当て、→携帯用端末ポタプレを取り出して音声通話を開始。左の人耳に当て、

読んで字のごとく、たくさんの猫の暮らす島。→島中たくさんの猫たちが暮らす、ミッドガルド有数の観光名所。


中盤に『猫島』『チケット制』『その背景』について加筆しました。

またこの後に一部描写を加筆、会話文との割り付けを変更しました。

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