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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_17 歌と羊とエンジェルティア(3)

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17-2 『狼王』になるために~ハヤトの場合~

『アスカとハヤトが覚醒する方法はずばり。

 ――『あの時』を再現することだ』


 ライカの声が蘇る。


『ただし、ハードモードでね。

 再来週の『ふしふた』の、ラストバトルを利用すればちょうどいい』


 仲間たちはいいよと言ってくれた。そしてアスカも。

 だが、俺は。

 俺の、気持ちは。


 いつしかひとり、『あの場所』に来ていた。

 屋内プールを見下ろす、見学ラウンジ。


 グリーンの非常灯だけが照らす、暗い室内。

 ガラス越しに見えるプールは、白い監視灯で照らされている。

 しらじらと輝く静かな水面は、故郷の町を流れる河を思い出させた。

 

 悩み、迷ったときにはいつも、あの河べりから水面を見ていた。

 そう、あの夜も。


「いたね、ハヤト君」


 変わらないその声に驚き、振り返れば、あの女性ひとが立っていた。

 あの日のように。あの日と変わらない姿で。


「……オルカさん」


 手の届かない存在となったはずの彼女は、またしてもいたずらな笑みを浮かべて、俺の隣に並ぶ。


「覚醒目指してるんだろ?

 あたしも、その頃は悩んだよ。

 だから、いると思った」

「……はい」


 話すのが下手な俺を、しかし彼女は、ただ隣に寄り添い、待ってくれる。


「仲間が、仮説を立ててくれた。

 俺が一番追い詰められたあの日を、ハードモードで再現すればと。

 仲間たちのショーを利用して。……

 クライマックスなんだ。それを俺たちのために使うと。

 ほかの奴らは構わないと言ってくれた。

 だが、俺は、……。

 それでは同じだと思うんだ。

 イツカがおれの四ツ星デビューのためにと、前二戦で消耗させられたうえで差し出されたあの時と。

 俺を思ってくれるやつらを食い物にして、俺はのし上がらなければならないのか。

 アスカを守るためなら何でもする。そんなことを言いながら、それでも今更そんなことにこだわり迷ってしまう。……」


 まとまらない。やはり。気持ちだけで、バラバラと。

 ぽんと、背中に温かいものが触れた。


「ハヤトは変わらないね。

 好きだよ、そういうところ」

「すっ……?!」


 いや、このことばに、そんな意味はないのだ。

 彼女にとっての俺は、小さな小さな弟のような存在だ。

 それでも、ドキリとしてしまうのは、男としての性か。

 俺が最も愛する存在は、この魅力的な女性ではないというのに。


 だが、彼女はわかってその言葉を使ったのだ。

 俺の意識に波紋を立て、彼女の言葉をしみこませるため。

 俺はそれを受け入れる。目を閉じて、彼女の声を飲み干す。


「据え膳というのはね、食べてもらってナンボなんだよ。

 いつかのイツカもきっとそう。

 大好きなハヤトに、立派な狼王になってほしいんだ。

 仲間の成長を願う。それって、仲間の仲間たるゆえんじゃないかな。

 そして、仲間がそうしてくれるなら――

 そのチャンスをめいっぱいおいしく頂いて、次の機会に仲間のよき糧となればいい。

 あたしなんかはそう思うけどね?」


 低くやわらかな声が途切れれば、彼女はもういなかった。

 けして押し付けない、彼女の流儀。

 心は決まった。きっぱりと、踵を返した。

『狼王』になるために。

 俺の成長を願ってくれた仲間たちと、もう一人の『仲間』への、最高の返礼を成し遂げるために。


 ラウンジを出れば、アスカがひとり、待っていた。

昨日(2020.02.24)昼頃、第一部分の手直しをしたのですが、もしかしてそれがアプリの方で通知され、見に来てくださった方がいらっしゃるのかもしれません。ごめんなさい。

次回、オンラインラジオパート続きです。お楽しみに♪

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― 新着の感想 ―
[良い点] こういう成長や心の葛藤をすくいあげてくれる人がいるのって、幸せですよね。 ハヤトはとくに言わないでためこみそうだし。 『強くなる』のは色んな意味がありますから。 川を思い出す情景描写が …
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