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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_16 歌と羊とエンジェルティア(2)

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16-4 メンバーチェンジ!

 全てを読み終わると、アスカが神妙な顔で言った。


「……サリちゃんは撤退だな。

 アマツバメに一時換装してもらえば寒さ『は』しのげるようになる。

 けど、フィールドそのものとの相性が悪すぎる。

 かといって慣れない別のけも装備で、Sランクダンジョンとか無理ゲーだ。

 どうしてもっていうなら、おれが盟主として『命令』もするよ。

 彼女も言ってた通り、牧場のお手伝いしたら、お土産もって帰ってきてもらおう」


 反対する者は、いなかった。

 アマツバメの大きな翼と尾羽は強風に翻弄され、岩壁に引っかかり、移動すら難しくなるだろう。

 それらをしまってしまえば、けも装備の恩恵を受けられず、もっと厳しいことになる。

 かといって、別のけも装備に変えてしまえば熟練度が足りないので、この探索に加わること自体が危険だ。

 それは高天原生であるおれたちには、理解できることだった。


 クリーム色のチワワ耳をふるわせていたサクラさんが、小さく鼻をすすって言った。


「よかった……

 そう言ってくれなかったら、どうしようかって思った……」

「おれ女の子にそんなザンコクなこと言えないよ、さっちゃん。

 野郎には言うかもだけどさ」

「えへへ。ありがと、あーちゃん!」


 アスカに優しく頭を撫でられて、サクラさんの愛らしい顔は、ぱあっと明るい泣き笑いになる。

 スイーツを通じてすっかり仲良くなったこの二人は、こうしているとまるで兄妹みたいで、ほほえましい。

 ふいに、ソナタのことが思い出された。



『マウントブランシェ派遣隊』の探索は、昨日に引き続き今日も不調だったらしい。

 原因は、複合的なものだ。


 ひとつ、往復のルートが険しすぎる。悪路に加え、風が激しく冷たい。

 ひとつ、モンスターが強い。数こそ少ないものの、ホワイトベアの巨大化変異種など、A+級以上ばかりが出てくる。

 そして、探索対象地域の特性――魔力の異常な濃さと、狭い洞穴という地形。


 レンとサリイさんの相性の悪さは予想以上で、行き来のルートでは低体温症寸前に陥り、洞穴の中では自分の戦いができないためにダメージとストレスがはんぱない。

 サリイさん本人は『自分の炎でみんなが暖を取れるのだし、頑張る』と言っているが、これ以上続けさせるのは残酷だというのが、エアリーさんも含めた全員の意見だ。

 レンも『チアキが心配だし、まだ頑張れる』と言っているが、当のチアキが逆に、レンの身体を心配している状態だったりする。


「レンも苦手克服ってイミじゃー有意義だけど、冷凍カラスになってもらっちゃ困るからねー。

 どうしてもっていうならワタリガラスに一時換装してもらっての一旦継続、かな。

 いっそミルク漬けにしちゃうって手もあるけどさ」

「やばすぎだろそれ!」


 アスカのトンデモ発言にハヤトが突っ込み、その流れで立候補する。


「俺とライカが行く。いいだろう、ライカ?

 俺たちは狭いところでも戦える。ハイイロオオカミは寒さにも対応できる。

 Sランクモンスターが相手なら、実力の底上げにもちょうどいい」

『さーらーに、おれについてる神聖防壁ホーリーシェルで、ほかの子たちも洞穴の魔力から守ってやれる、て考えてんでしょ? そーゆーことなら喜んでいくよーん』

「ハーちゃんがいくなら、おれもいくよ。だいじょーぶ、ホッキョクウサギ換装なら寒いとこもいけるからね!」

「いーなー、俺もバトりたいなーSランク―。なー俺もいっていい?」


 するとアスカとイツカもついていくと言い出した。

 いやいやイツカ、お前はだめだろ。なぜなら。


「ムーンサルトバスター封印で?」

「うぐっ」

「イツにゃんはまずそのあたり、目鼻つけてからの方がいいんじゃないかなー。

 しろくろ先生のアイドルレッスンもあるんだしさ?」

「むー……」

「ね、イツカ。いざとなったらSランク以上のひとがすぐ近くにいるでしょ?

 お兄ちゃんにお願いして手合わせしてもらえばいいよ!」

「それもそっか!」

「おれもそう思う。ありがとミライ、ナイスアイデアだよ!」


 ここでミライが名案を出してくれた。

 そう、ノゾミお兄さんはエクセリオンの座を蹴った男で、おれたちの担任『青嵐公』なのだ。むしろ、こちらを頼るのが正しいってものだろう。

 そのときクレハがぽつんと言った。


「もしかしてさ。最初っからアスカたちに行ってもらえばよかったのかもな……

 サリイさんとあの山の相性がめたくそ悪いのはわかってたことだし」

「……。」


 すると、コトハさんはうつむいてしまう。

 あのときもっと、強く言っていれば。そう思っているのはあきらかだった。


「あっちがっ、コトハちゃんが悪いわけじゃないからな、それは誤解しないでくれよ?!」

「そうそ、俺とミツルも寒い系装備だけど行ってないんだぜ?」

「あっ、はい。

 わかってます。もし洞穴探索に行ってたら、わたしは確実に、足手まといになってましたから。……迷惑かけずに済んで、よかった、んですよね」


 クレハとアオバの言葉に、コトハさんがけなげな笑顔を見せた。

 その肩を、ユキさんがコノハズクの翼で優しくぽふぽふ。


「そーそ、結果オーライ!

 それに、今日ここでコトハのつくったボンボンは、フユキくんに回るじゃない?

 むしろナイスフォローなんだぞ、クラフター・コトハ!」


 そう、今回意外なワナとなったのは、フユキの体質だ。

 フユキはハイスペックだが、その分消耗も大きい。

 行き来の寒さとモンスターの強さの複合効果で、通常よりも多くのおやつが必要となっている。

 これこそ昨日、一時間程度の探索で切り上げざるを得なくなった大きな原因と、本人自らが報告してきている。


 でもこちらは、100本ノックに使う予定だったボンボンを回すことでなんとかなるメドが立った。

 自分ならではの仕事がちゃんと役に立つ。それを聞いて、コトハさんも今度こそにっこり笑ってくれた。

 ちょっとだけ、それだけじゃないような気もするけれど、ここは温かく見守るのが紳士というものである。


「まーさ、それでもおれたちと、撤退メンバーの送迎はお願いしたいからさー。

 ひつじ牧場までは来てもらえるかな、ミライツカナタとクランレパード。

 コトちゃんもいっかな?」

「っしゃあ!」

「そうだな、それだったら俺たちもやれるよ、な、ミツル」

「え、あっ、……はいっ!」


 イツカとアオバはスパッと返事をした。おれとミライ、ミツルにも異存はない。

 コトハさんも、決意の表情で了承してくれる。


「今度こそがんばれるなら……お姉さまに、もう寒い想いなんかさせない。

 モンスターからだって、守ってみせます!」

「よーし、そーときまったら景気づけのピザ食べよー。そろそろ焼きあがるからさー」


 ナナさんがカピバラらしくのんびりと言うと、その場は歓声に包まれ、突発ミーティングはお開きとなった。

ふとんがふっとんでおくれました!

いや、マジに類似の事件がおきまして……orz

いっそストックさんが飛んできてほしい、今日この頃です。


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