Bonus Track_16_1-1 探索隊、マウントブランシェ入り!~チアキの場合~
2020/02/09
何か所かエアリー「さん」になっている場所を修正いたしました。
2020/02/10
フユキくんがフォローしてくれるた。→フユキくんがフォローしてくれた。
「チアキにレン、ちょっとぶりね。トラオもひさしぶり!
みんな仲良く元気そうでなによりだわ。
そちらはお姉さまと、婚約者さんと、お友達ね。
『エアリー牧場』のあるじのエアリーです。どうかみなさん、よろしくね」
通話で事情を話したら、エアリーお姉ちゃんはこころよくむかえにきてくれた。
まちあわせは、まえとおなじ。山麓の町ムートンの、生産者ギルド。
お姉ちゃんの服装は今日も、ひらひらふわふわした、青と白のエプロンドレス。
僕はなんだかほっとしたけれど、レンとトラオくん以外のみんなはおどろいてる。
「さ、さむくないんですか?!」
「えっ? ぜんぜん平気よ?
あなたたちこそ、この季節にそんなに着込んで、暑くないの?」
「えっ」
「えっ」
そんなやりとりもあったけど、お姉ちゃんを手伝って買い出しをすませると、僕たちは荷物を背負ってマウントブランシェをのぼった。
調子の戻った僕とトラオくんは平気だったけど、他のみんなには厳しいみたいだ。
荷物もあるし、ツバメ装備のサリイさんにとっては、寒さと風がことさらきついようだ。
火を操る技で暖を取り、リンカさんとトラオくんにフォローしてもらいつつ進むけど、顔は真っ青。
寒いとは一度も口にしないけれど、細い体が震えてるのは僕にもわかった。
みかねてエアリーお姉ちゃんが下山をすすめる。
「ねえ、サリイ。ツバメのあなたには、この山はやっぱりきついと思うわ。
あなたの覚悟はほんとに、素晴らしいと思う。
でも、やっぱり辛すぎるんじゃないかしら?」
「大丈夫です。
マウントブランシェのことは調べてきました。こういうものだって覚悟して準備してきた。
探索の足手まといになるなら、牧場でエアリーさんのお手伝いだけでもしていきたい。
そう、決めたんです」
けれど、サリイさんの意志は固かった。
サリイさんは、きちっと調べて、きちっと準備するひとだ。
そうして、決めたことは絶対にやり遂げる。
僕がレンと組んでの、はじめての試合もだから、『ふつうに』やってたら絶対に、勝てなかったはずなのだ。
エアリーさんは、そんなサリイさんをぎゅっ、と抱きしめる。
「わかったわ、サリイ。
そのかわり牧場についたら、一番風呂にはいってね。約束よ?
ペース上げるわ! トラオ、全力で守ってあげるのよ!」
「もちろんです!」
トラオくんがサリイさんの肩を抱く。
ハルオミくんとアキトくんが、トラオくんに歩み寄る。
ふたりの装備はカモシカと、原種のアハルテケ馬。
過酷な山地もどんとこいのふたりは、頼もしく申し出た。
「トラオ。
俺荷物もっと持てるよ。
だから、サリイさん抱っこしてあげなよ」
「残った半分は俺もらうからさ、遠慮なく♪」
「お、お、おう。
わりぃな、二人とも……」
「えっえ、ちょ、そそんないいいってばっ!!
そ、そ、それよりリンカの荷物持ってあげてよねっ。
リンカも、か弱い乙女なんだしっ……」
「あ、それは僕がもつからだいじょうぶだよ!」
それには、僕とレンが立候補する。
「そーそ。なんだったらリンカはオレが抱えていくかー?」
「それはいいアイデアね、レン。
なぜって、荷物よりもわたしのほうが軽いもの♪」
「……マジに?」
「サイレントケー」
「すみませんごめんなさい軽いですリンカさまっ!!」
コントになりかけたところを、ノルウェージャンフォレストキャットのフユキくんがフォローしてくれた。
「ったく、無茶すんなカレドニアガラス。
お前にだってここの気候はきついだろ? リンカ姐さんは俺に任せろ」
「お、おう……」
「真面目な話、いざとなったら肩を貸す程度でいいわよ。ありがとうフユキ、それにレンもね」
そんなふうに助け合っていけば、ひつじ牧場はすぐそこだ。
牧場のある場所はふしぎに少し暖かく、年中緑の草が尽きない。
その緑色がみえたとき、僕たちはそろって歓声を上げていた。
広ーいお風呂、そして絶品のおやつを満喫すると、僕たちは本題に入った。
エアリー牧場のひつじミルクをもっとたくさんの人に飲んでもらうため、僕たちはすこし我慢できるようになりたい。そのために、ミルクにかわる、元気の源を探したい。
そう伝えるとエアリーお姉ちゃんは、泣けるくらいにうれしいことを言ってくれた。
「チアキ、トラオ。
あなたたちのことは、わたしの家族と思ってるわ。
そのふたりに我慢をさせて、他の人たちにミルクを売りたいなんてことは、わたしはちっとも思ってない。
いっそのこと天使なんてやめて、うちの子になってくれてもいいのよ?」
「気持ちは嬉しいですが、そういうわけにも……」
トラオくんが、申し訳なさそうに言う。僕も同じ意見だ。
「そうよね。
天使をやめるには莫大なTPがいる。
なにより、ふたりにはむこうの世界に、血のつながった家族がいて、かなえたい夢もある。
そのためには、ここでしかとれないミルクを生命線にしてるわけにもいかない。……
わかった。協力するわ。
ミルクに代わる、元気の源。
一つだけ、心当たりがあるの」
お姉ちゃんは、にっこり笑って教えてくれた。
マウントブランシェの奥深く、人知れず眠る神秘の洞穴。
その最深部に眠る『シャスタの泉』のことを。
「この山を流れ落ち、大海に注ぐシャスタ川。
その源流が、シャスタの泉なの。
マウントブランシェの生き物はみんな、この水の恵みを受けているわ。
もちろん、うちのひつじたちも、ひつじたちのミルクもね。
つまり、ミルクにふしぎな力を与える『なにか』は、泉のなかに眠っているはず。
神秘の洞穴、シャスタの最深部にね」
けれど、こうもいっていた。
「ただし、そこはこの辺でも特に魔力が濃いところだわ。
だから魔物も強いし、魔力にあてられて、体調を崩すかもしれない危険な場所なの。
だから、くれぐれも無茶はダメよ。
ここをベースキャンプにしていいから、ゆっくりと探索してみて」
閲覧ありがとうございます!
今日の私は……昨晩ヒャッハーしすぎて頭が回らない!
(訳:『賢者からのおくりもの』にご紹介いただけてしまったためにニャーとかミャーとか興奮していたので……ありがとうございますっ(何度も言うスタイル))
次回、さらにゆるーくダンジョンへ。
一番の敵は、寒さと空腹(※仲間の)!
どうぞお楽しみに!




