1Re-5 カコさんとの約束
すみません、所用で投稿遅れました……!
2020.04.06 いくつか修正しました(詳細はあとがきにて)
「俺たちがきたとき、ちょうど黒服が来たんだ。
で、ミライが召されたって……」
「ごめんイツカ、おれ状況見えてない!
最初から話して。まずなんでおれ、ミライんちいるの?」
「運んだ」
「はっ?」
前振りもなんもなしに話し出すイツカ、混乱するおれ。
みかねてカナン先生がフォローしてくれた。
「ああ、どうせミライんちで合流するなら、運んじまったほうがいいだろって……
ティアブラにインしてる状態のお前を、車に乗せて運ばされたんだ」
「ええ……」
おれの混乱の半分は、呆れにかわった。
イツカのやつ、フリーダムすぎだろ。おれは先生に謝らずにはいられなかった。
「……ごめんなさい先生」
「まあ、いつものことだ。
俺もミライとおばさんが心配だったし、渡りに船だったからな」
実はカナン先生は、ミライのお兄さんと同い年で、いちばん仲が良かった友達の一人だ。
その関係で、ミライとも仲がいいし、ここアリサカ家ともお付き合いがあるのである。
まあ、それはいい。とりあえずおれは、事態の把握を再開することとした。
イツカに向き直ったおれはしかし、すぐまた混乱に見舞われた。
「それで、『黒服が来て』って、高天原からの人だよね?
その人たちが、ミライは高天原にいきましたって?」
「ああ」
「えっと……ミライが戻ってきたんじゃなくて?」
「ああ」
状況が、読めなかった。
なんで突然、高天原からの人が来るのか。そしてミライはかえってこないのか。
問いをかさねるとイツカは、苛立ちとやるせなさをあらわにした。
「………………どういうこと?」
「わかんねえよ。
ミライは『列聖』の条件クリアして、ガッコのそばで倒れてた。だから高天原の病院に収容されて、目が覚めたらまんま研修いきだと。
そんなん納得いかねえ、ひとことミライと話させろっていっても『規則ですので』の一点張りで!」
「そんな」
おれの口からはもう、それしか出てこなかった。
『高天原に行ったら、卒業まで連絡できない』。
もちろん、里帰りもほぼ無理だ。
かといってカコさんが会いに行くこともできない――高天原エリアに出入りが許されるのは、αか、その候補か、シティメイドだけだからだ。
震えるカコさんの右手を、思わずぎゅっとにぎっていた。
けれど、どうしていいのか、なんて言ってあげたらいいのか、わからない。
だって、おれにはわからないのだ。
そんな消え方をしたミライを、見つけられるのか。いやそれ以前に、おれが探しに行けるのか。
おれの高天原いきに必要なのは、TPがあと約4万。
すぐに稼げる額ではない。イツカとミライはもういないのだ。
通販とオークションへの出品もしてあるものの、収益は……
「よしっ!」
そのときイツカの声が聞こえた。
見ればやつは、ぐっとカコさんの左手を握って、力強くこう言っていた。
「俺がミライを連れて帰ってくる。
一緒に卒業して、笑って帰ってくる。
で、何があったのか聞いてくる。
もしなんか問題があったなら、一緒に解決する!
ぜったいだいじょぶだって。カナタもすぐに100万達成して合流するから!」
「……イツカくん」
カコさんはぽかんとする。
おれも一瞬ぽかんとしたが、そうだ、それこそおれたちが言うべきことだ!
できるかできないかじゃない、とにかくやる。それでいくんだ。
気づいたおれは、内心イツカに感謝しつつ、全力で便乗した。
「そうですよカコさん!
おれたちふたりで、ミライを守ります!
それで……何とか状況、連絡します。
たしか、パーティーとかあったりすると、高天原の外の人でも郊外の迎賓館とかに招待してもらえること、あるじゃないですか。
その機会を利用するとか、いろいろ方法はありますから!
だから、その間、ソナタをお願いできますか?
やっぱり、ほら、女性同士じゃないとわからないこととかも、たくさん出てくると思うし……」
「カナタくん……!」
するとカコさんは、自分からニコッと、明るく笑ってくれた。
「……よく考えてみたらこれって、政府の人が保証してくれた、のよね?
『ミライは、たしかに高天原にいるんだ』って!
どこか、知らない場所にさらわれたんじゃない。お兄ちゃんだって勤めてる、夢の高天原よ。
そうよ、ミライはきっと大丈夫。
ぜったい無事で、頑張ってるわ!
……だから、お願いイツカくん、カナタくん。
高天原でミライを見つけて……何があったのか聞いてきて。
そしてぜったいに三人で、無事に帰ってきて。やくそくよ?」
けれど最後に、一粒だけ涙がこぼれた。
2020.04.06 10:57
『 前振りもなんもなしに話し出すイツカ、混乱するおれ。
みかねてカナン先生がフォローしてくれた。』の位置を変更しました。
地の文を追加しました。
『 まあ、それはいい。とりあえずおれは、事態の把握を再開することとした。
イツカに向き直ったおれはしかし、すぐまた混乱に見舞われた。』
『 状況が、読めなかった。
なんで突然、高天原からの人が来るのか。そしてミライはかえってこないのか。
問いをかさねるとイツカは、苛立ちとやるせなさをあらわにした。』