16-2 魅惑のプリン休憩とライカ先生のバトル講評!(2)
笑いが収まれば、次はアスカの番だった。
「次、アスカー。
おれのマスターだってことは故意に忘れていくよー。
ボロクソにしといて何だけど、力量も作戦もハイレベルだったと思う。
ハヤトはやっぱり剣士だ。おれとの適合化はたしかに進んでるけど、まだ聖騎士みたいにはいかない。実際斬りあいがはじまれば、神聖魔法のことなんか頭から飛ぶ。
だったら最初に君との連携でガッと使わせておいて、あとはひたすら攻撃、自分が補助。というのは現実的だし、いいチョイスだよ。
さっきも言ったけど、あれで四ツ星は軒並みやれるからね。
それ以上の戦略も、がんがん作って試してみて。きみたちならできるから。
つかぶっちゃけた話、アスカはすでに完成度が高い。
追い込んで覚醒させようにも、バトルをよく研究してるから、なまじな作戦じゃどうもならない。
だからあえて、おれは一歩上。禁じ手に手を染めてみた。
ひとつは神聖防壁を変形させてのぶっ刺しあーんど拉致。
いまひとつは退魔円陣による回復封じを使ったうえでの人質プレイ。
きみたちプレイヤーがこんなことやったら、あっという間に能力適性は『堕神官』になる。
つまりこの高天原ではお目にかかれることのない攻撃なんだけど……。
つぎ、これやったらさっくり対策してくるよねきみ。
いっそこのおれを卒試の課題として出して、サクッと卒業しちゃったほうがいいかもねー?」
「もーなにライカ、ツンデレ? そんなに褒めても甘いものと機能アプデくらいしか出ないよ?」
「ごっつぁんです!!」
アスカが素直じゃない喜び方をする。って、さらにアプデがあるのか。どうなっちゃうんだこれ。
おそろし面白いので、おれはあえてそれを楽しみに留めておくことにした。
「では最後、カナぴょん!
ぶっちゃけビビった。投げすてたはずの銃が空中から斉射してくるとか、もう別のゲームでしょ!
いやー、ゲームってこわいねおもろいねー。あのモードのおれじゃなかったらやられてたよ。
まあ難を言うなら、カナぴょんならそうなる前にもちょっと動けたんじゃないかな?
たとえばハーちゃんがイツにゃん奪還に来たときだ。
ルカっちのときのあれみたく、とっさにトンネル掘っておれの足首引きずりこむとか。
そのタイミングなら、さすがにおれの対応も難しかったからね。
とかなんとかいったけどきみも、全体として優等生なデキといってよかった。四ツ星相手でも充分やれるから、自信持ってね。
っていうかほんときみも一体どう覚醒させたらいいかだねー。
ぶっちゃけきみは、王子黒騎士戦で覚醒してていいレベルだからね。
……っというわけでアレのヒミツ教えてぷりーずっ!」
ライカはぽんっとおれの胸にとびこんできた。
変身したその姿は、両掌に乗るくらいのロップイヤーこうさぎ(白)。
ちっちゃなちっちゃなルビーのような、つぶらな瞳がきゅる、とおれをみあげた。
あざとい、あざとすぎるぞライカ。うさぎ好きには最高のごほうびだ。
おれはその愛くるしい姿としぐさ、手に伝わる柔らかさとぬくもりにホワーンとしながら白状した。
「新機能の『予約斉射機構』だよ。
おれの魔擲弾銃のグリップにはボタンがついててね、それを押すと三秒後にフルオートで全弾斉射するように改造してあるんだ。
反動はもともと、出ないように作ってあるから問題ない。
それをおれの投てきスキルで無回転で投げあげて、ライカを……」
そのときおれの胸をとんでもない罪悪感がしめつけた。
こんな、ほわほわちんまりのうさちゃんを狙うなんてっ!!
「あの……ごめんね、痛かった? 怖くなかった?
おれ、なんでもしてあげるから言って?」
『ぷぅ』
手の中のほわほわは小さく鼻を鳴らして甘えてきた。よし。
おれは一世一代の決意を表明した。
「ごめん、この子うちの子にするから。」
「じゃあおれもカナぴょんちの子になるー!」
「いやちょっと待て、ちょっと?!」
それを聞いたアスカがわーいと飛びついてきて、ハヤトが慌てる。
一方で理事という肩書を背負った変態は、イケメン全開の真顔で変態的発想を披露した。
「そうか、バニー姿ならカナタくんは何でもしてくれるのか……」
「野郎がやったら通報しますので。」
「即答!」
「え、だめなのー?
おれ、カナタにおねがいがある時はうさみみつけてこよーってこころのメモちょうにメモしたのに」
ミライは無邪気に聞いてくる。
ぽん、とはねたうさライカが頭に乗っかり、とてつもなくかわいらしい。
おれはこころのスクリーンショットを全力で撮りつつこたえた。
「ミライはそのままでいいんだよ?
ミライにはもう、可愛いいぬみみがついてるでしょ?」
「じゃー俺は?」
「イツカはふるもっふ一回で」
「えーマジかよ!」
イツカは黒の猫耳をイカ耳にして不満げだが、おれはやつを毎日ブラッシングしている。つまり実質条件ナシなのである。
破格の優遇に気づいてないやつは、こどものように口を尖らす。
「んっじゃー、ハヤトだったらー?」
「ハヤトはね……うーん……意外とうさみみ似合いそうだから、どっちでも!」
「げっ何だよその究極の選択!」
「えっなにっハーちゃんがそんなことしてくれるんならおれがたのまれるー!」
ハヤトが慌てれば、アスカがガタッと立ち上がる。
そんなこんなで、おれたちの特訓一日目は、もふもふしく終了したのであった。
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今日こそいおう、まじですか!!
次回はマウントブランシェ派遣隊のお話。Aランク冒険者とは思えないゆるさでお送りします!
お楽しみに!




