The C-Part_40秒の、そのなかで~悠久の時を、あなたと(3)~
@とある医療施設~『シャナ』の場合~
『さあ、とぶよっ! みんな、しっかりつかまってー!』
「はーーーーい!!」
『ミッドガルドおためしアイドル企画』でデビューしたあたしとダーリン。
もちろん、イツカとカナタのおしごとにはご一緒させてもらった。
このときに、六竜の仲間たちにもお声がかかった。
『あそべる森のコンサート』。スキルではやした森で、いっとき元気を取り戻して遊んでもらう。その必要性は、『ハートチャイルド』が生まれなくなっても、なくなることはなかったのだ。
世の中にはまだ、けがや病気で長く入院せざるを得ないひとたちがいる。
たとえ世界が平和になっても、スキルの民生利用の解禁が進んでも、それだけでは解決しきれない現実はまだまだある。
ミッションを守るために戦う必要のなくなったあたしたちは、これからもっぱら、それらとたたかうひとたちのために、チカラを使っていこうと決めた。
不動のダルダルっぷりが人気のズメイ。
いつもは干物幼女なのに、マイクを持たせたらノンストップDJになるオウリュウ。
でっかいベヒモスの体には、みんな楽しそうによじ登った。
水をあやつるレヴィアタンとダーリンは、暑い日のイベントではひっぱりだこ。
けれど一番人気だったのは、真っ白な羽がふわふわもふもふで、性格も優しいジズ。
ひとなつっこくて、だれとでもすぐ仲良くなってしまうジズは、大人にも子供にも好かれたし、ジズもよろこんでみんなと交流した。
そんなわけで『ジズのオソラドライブ』は、それ単独でコンテンツとして成立するほどの、大人気に。
というか、もとはあたしのコンサートのお楽しみだったのが、いつのまにかそっちがメインという扱いになっていくことに、ジズは心を痛めてくれた。
「あの、ボク。シャナのおしごとのじゃま、しちゃってるのかも……
そんなつもりじゃ、なかったの。ごめんなさい!」
ナカノヒト同士で顔を合わせた時には、そんなふうにまで言ってくれたけど……
「ぜんぜんいいよ。だってみんな、楽しそうじゃない。
あたしもジズをもふもふできて役得だし、なによりジズがうれしそうだとあたしもうれしいよ!」
「シャナ~!!」
けなげなジズにぎゅうっとしてもらうと、そのかわいさで胸がポカポカになった。
だいじょうぶ。あたしたちはあたしたちで、待ってくれてる人がちゃんといる。
そのことは、しっかり知っているから。
心無い言葉を陰で発してる人だって、全くいないわけじゃない。
けれど、そんなものはどっかよそでやらせとけばいい。
あたしたちは、あたしたちの歌を歌う。かれらは、かれらの歌を歌えばいい。
ただ、それだけのことだ。
どんな僥倖か、あたしたちの歌を聞きたい、そう言ってくれる人が世界に何人もいてくれた。
その人たちのために、あたしたちは歌う。
いつかこのさき、アイドルとしての人気がなくなっても。それでもあたしはかまわない。
あたしたちの歌を好きといってくれるひとが、世界に一人でもいる限り、あたしたちは歌い続けよう。
青空に向けて、深呼吸。
さあ、今日もまた、あたらしいステージが始まる。
――オウリュウ。
まさかの『マイク持たせたら離さない属性』発覚。しかもノリノリのDJっぷりは『だれおま』レベル。
そんなわけで、すっかり曲紹介がかりにおさまる。
そのキレキレっぷりから、活動開始から数か月でラジオの冠番組を持った。
しかしプライベートでは見事なまでに干物。意外ときれい好きなズメイがあきれて掃除してやるレベルである。
――ベヒモス、レヴィアタン、ジズ。
ドラゴンフォームの巨体が大人気の三兄弟。『森コン』とはまた別に、『ドラゴンさんとあそぼう!』という企画番組が新設されたほどである。
なお、レヴィアタンを『レヴィアたん』よばわりする輩はなぜか後を絶たない。
病気やケガとたたかうみんなのために、おごらず威張らず、今日も笑顔を届けに行く。
いやはや昨日はめんどーなことになりました。
毛糸用洗剤がなくって急いで買いに行ったり、残った冬物クリーニング出しに行ったら休みだったりで行ったり来たりorz
なによりしんどいのは、べろの先をかんでしまってこれが今も痛い……orz
でもまあ、その程度です。災難っても、かわいいもんです。
次回。月で働くあの人たちと、それを見守るひとびと。
まだ完全に固まってはいませんが、あと3~4話ほどでCパート編も完結の予定です。
NG集などは、あとがきの後にやれたらやります。
どうぞまったり、おつきあいくださいませ!




