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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_98 終結・魔王戦!~あの月を目指す、その前に~

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The C-Part_40秒の、そのなかで~悠久の時を、あなたと(1)~

約束のブラッシング回!

つまりもふもふ白オオカミきょうだいをもふもふする回です。

 @天狼フィルの星霊界~フィルの場合~


 本来、我らは別にえらいわけでも何でもない。


 我ら大星霊は『星に選ばれし人間』に力をよこす職能代行――つまりはNPC。

 この身は『マザー・ステラ』の選びし戦いの形を具象化するため、形づくられし泡沫(うたかた)にすぎぬのだ。


 それでもやはり、これはいいものだ。


 白のカナタとシグルドが操る、極上のブラシふたつが、毛並みを優しくくしけずっていく。

 あくまでVRだ。わかっているが、それでも上手なブラッシングは天国だ。


『うん、そこ、そこ、おー…………』


 やつらはイヌ科の体のあつかいをわかっているようで、いいタイミングで耳の付け根だのあごの下だのをかいてくれるんだからたまんない。


『やっぱおまえらの味方してよかったわー……こんどから味方するやつはブラッシングで決めるよーにするわー……』

『兄さん』


 そばに控えた(フィロ)がたしなめてくる。くそ、そのおふくろ譲りの目で見られると弱いんだ。


『わーったわーった、冗談だって』

『兄さんの場合は冗談に聞こえないから困るんですよ……』


 フィロはふうっとため息をついて、くるっと丸くなる。


『お前はもうちょっと肩の力抜かないと。ほれ』

『まったく、誰のせいだって思ってるんですか、……あ、もう少し右で』


 今日は俺と同じ、白の天狼の姿をとった弟の肩を、体重をかけすぎないよう優しくフミフミしてやると、立ち耳がたれんと垂れていく。


 いつもはステラ軍所属の研究者『フィロ』として、ゲームのバランスを取り、プレイヤーたちのケアをしているのだ。そりゃ、こまかく気を配らなきゃできないことだけど。


『あの『もふもフォレスト』んときみてーんでいーんだよ。むしろあんくらいでちょーどい』

『うわああやめてください黒歴史なんですからそれ――!!』


 フィロはバッと立ち上がって毛並みを逆立て、両前足で頭を抱えてへたん、伏せの姿勢になってしまう。


『しかも今日はカナタさんだっているのに……ううう……はずかしすぎて犬になりそうです~……』

「おれは気にしてませんよ?」


 恥ずかしいと犬になるって理屈はよくわかんないが、カナタはニッコリうさプリスマイルでそっとフィロの後頭部に手を置く。


『……カナタさん』

「おれだってもふもふは大好きですから。もふもふは正義ですから。間違いありません!」

『カナタさん! 一生ついていきます――!!』


 そうして温かく言ってやればもうフィロはメロメロ。ウルウルしながらスリスリだ。

 カナタはしょーもないでっかいわんこと化した弟を、優しく抱えて受け止めてやる。

 ほほえましいその様子をみて、シグルドがエキサイト。


「な、なんてうらやましいっ!

 そうか、わんこ姿ならカナタさんは許してくださるのですねっ!

 かくなるうえはわた」「ステイ!」


 下心あふれる着想は、実行に移す前に阻止された。

 的確に発されたカナタの『ステイ』によって。



「まったく、どうしてあなたはそう邪心に満ち溢れているんですか……っていうかよくそれで『清冽なるフィル』の加護を失いませんね……」

「それはほら、見た目がそれなり清らかですので☆」

「…………だそうですが」


 清らか風にニッコリ笑うシグルド。いつものうさんくささどこやった。

 うろんな目でそれを見たカナタは、俺に意見を求めてきた。


「あー、なー……カナタももう知ってると思うが、いまのステラの貴族ってのはアレだ。『血統書付き』ってやつなんだよ。

 強い適性を持つ者たちによる計画的な婚姻を何代も何代も繰り返したことで、ちょっとやそっとじゃ適性が揺らがないようになってる。

 まあ、相当なクズならまた別だがな?

 たとえばフィルの加護をもって子犬ちゃんに変身し、その姿で油断を誘ってカナタをどーにかするとかしたらさすがにアウトだな」

「っ!」


 さすがに動揺したのか。シグルドは片眼鏡の奥の碧眼を見開き、震える声でこう言った。


「な…………

 なんという究極の選択!!」

「選択肢生成すんなその条件で。」

「いやそっちかい。」


 俺も思わず突っ込んだ。

 しかし奴めはさらに重症だった。


「えっ?! ということは迷わずあなたさまだけにすべてを捧げよと?! わかりました、このシグ」「去勢しますか?」


 ごーじゃすな笑顔のカナタからは、トンデモやばいオーラが立ち上っていた。

 大星霊なんぞかるく上回る、強者のソレが。


「すみませんでしたっ!!!!」


 当然俺たちは即座に平伏した。


「いえ、フィルさんはなんで平伏なさってるんですか?」

「下っ端の管理不行き届きをお詫びいたしますっ!!」

「あ……いえ、あなたが詫びられることでは。

 もう、大丈夫ですから。どうか頭をお上げになってください」


 顔を上げれば、優しい笑顔でふんわり撫でられた。

 絶対的強者によるアメとムチ。なるほど、これはシグルドも夢中になるわけだ。


「シグルドさんも。あんまりふざけていると、サーヤさんが泣きますよ?

 そうしたらおれも 本 気 で おこりますからね?」

「すみません、つい……

 もちろんです。サーヤを泣かせるようなことだけはこのシグルド、たとえすべての加護を失うことになろうとも、絶対にしません。わがすべての誇りにかけて」


 シグルドに対しては改めて軽くたしなめ、しっかりと握手。

 そうして、カナタは言った。


「それでこそあなたです。

 では、そのサクヤさんもお待ちですし、そろそろお暇しましょう。

 フィルさん、よろしいですか?」

『おう、ありがとな。

 またいつでも来てくれ。歓迎するぜ』


 本当を言えばちょっと名残惜しいのだが、それをいうのも野暮だろう。

 土産に星霊界のみに産するレアアイテムを渡すと、二人を人間界へと帰還させた。


『……いいコンビですね、なんだかんだ』


 フィロが言う。


『だな。

 あの分なら、アースガルドでもうまくやっていけるだろうな』


 シグルドは『ハビタント』、もともと『エヴァグレ』のモンスターだった存在だ。

 よってこのプログラムを終え、アースガルドの人間として生まれ出ても、俺たちプロジェクトチーム以外、何の後ろ盾もない状態となる。

 それを補うのが、この『中つ国』ミッドガルドで得た人脈。

 とくにスターシードたちは、アースガルドにリアルの基盤を持っている。彼らとの個人的な結びつきは、有形無形に彼らを助けることとなる。


 カナタはやや警戒心が強い。妹たちを守るためもあろうが、簡単には他者をそばに置かない。

 そのカナタが、なんだかんだああまで近くにいることを許しているのだ。

 うまくやっていけることの、なによりの証左である。

 それについてはフィロも同意見のようで。


『ええ。

 そもそも、あの子たちからはじまったこのこと(プロジェクト)なのです。

 あの子たちにこそ、ひとりでも多く、良き仲間ができてほしいものですから』


 やつらが去っていった方向を、優しい目をして見送っていた。



 ――フィル&フィロ。

 ステラの大星霊と、その弟。フィロは普段は、ステラ軍の研究者に身をやつしている。

 その正体は『プロジェクト・ソウルクレイドル』運営チームの中核を担う者たちである。

 豪快で自由な兄と、気配りの弟のナイスコンビ。

 リアルでも補い合い、セレストやチームメンバー、プロジェクト参加者たちをしっかり支えた。

 なお、二人ともに白い大きなもふもふオオカミの姿こそが本態である。


もふもふはせいぎ。( ´∀`)bグッ!


次回、そのころのサーヤちゃんとマールとスバルちゃん。

悠久を生きそうなのが一人しかいないのは、この回の後半にしようと思ったら長すぎたためです。

どうぞのんびりおつきあいください♪

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