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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_98 終結・魔王戦!~あの月を目指す、その前に~

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The C-Part_40秒の、そのなかで~旅立つ者たち(5)~

 @『月送り』の宴の会場~コウジ・タカシロの場合~


 ルク派というものが消えてなくなるまで、わたしはその成員であったとそう思っている。

 あのときアスカ様に頭を下げたのは、そもそも月萌が滅びては元も子もない、そう判断したためだ。

『御大』は、その決断に感謝を述べてくださった。

 そして、『ツクモエマザー』――セレネ様も。

 そのおかげで、今があるといっていい。

 わたしはいま、誰かに糾弾されることなく、ここにいる。

 盃を手に、月を見上げて。


 今夜は満月。

 あの月に、お世話になったあの方々は無事、おつきになっただろうか。

 そして、心穏やかな酒を飲んでおられるだろうか。

 月の空にかかる、大きな地球を見上げながら。


 そうだといい。そうであってくれますように。

 そう言いあいつつ、われらは盃を開ける。

 あの方々がここに、地上にいたころのように。



 ――アカシ&コウジ&アオイ・タカシロ。

 全員タカシロ分家の者たち。あくまで親戚同士であって兄弟ではないが、親しい者たちには『信号ブラザーズ』などと呼ばれていた。

 得意分野を生かし、管理派として、ルク派として動いた。

『御大』をいたく慕っており、彼が月で働くようになったのちは、月と地球を行き来しながら、月萌と世界のために働いた。




 @空のうえ~とある元・指揮官の場合~


 月へのお召しは意外と早く、あれから数年の後に訪れた。

 もとより、天命を受け入れるつもりだった。

 妻はまだ若く、子供たちもこれから。その人生を、年寄りの世話で縛らせたくはなかったから――

 かねてより、無理な延命はしないでほしいと意思表示を行い、そのときにむけての準備もしっかりと進めていた。


 思えは仕事人間だった私。

 一線を退く前には、子供が家出したことも、妻と離婚寸前になったこともあった。

 それでも、妻子は泣いてくれた。

 数少ない友、元部下の中にも心からの涙を見せてくれたものがいた。


 イツカ様がたが泣いてくださったのには、すこし驚きながらも、あの方らしいと思われた。

 このさき、この方々は幾度こうして泣くのだろう。

 それを思うと、不憫な気持ちにすらなる。


 それでも、わたしにできることはもう、なにもない。

 私の人生は、終わりを告げた。前を向いて、進んでゆくだけだ。



 視点はすでに、体の目からは離れていた。

 横たわる自分の体を見下ろし、その命運を見定めた私は、さてと顔を上げる。

 するとそこには、透き通るような輝きに満ちた、ふたりの天使がほほ笑んでいた。


「お疲れ様です、ようこそこちらへ」

「さあ、ともに月へ。

 皆様のための宴が始まります」

「宴……?」


 伝承に聞いていた。死したもののもとには、美しい天使が迎えに現れ、ついてゆけば月の宮殿での宴と、ゆったりとした楽しみの日々とが待っていると。

 いまならばわかる。それが、真実のことなのであると。


 天使たちに手を引かれ、すっと舞いあがっていけば、屋根を抜け、空を抜け、わたしは月へと至ったのだった。


 天使たちは私の手を引いて、月をぐるりと一周した。

 表から、裏へ。そして、裏から表へ。

 わたしはすでに、人の身を脱している。 

 だから、見えた。

 眼下に、『裏側』の様子が。


 月の表の『裏側』、人の目では見えぬ領域には、おどろくほどに壮麗な、それでいて懐かしい城と庭園が広がっているのが見えた。

 これは――そうだ。

 私たちが、さいしょにこのセカイに入るときに訪れた、『歓待の園』だ。

 ふいにそう、思い至った。


『ここにふたたび来ることができるのは、特別なときだけ。

 魂を鍛え、『人間』としてアースガルドに生まれいずることのできるようになったとき、あなたがたはここに迎えられるのです。

 そのときには、時を超えて、会いたかった過去の人とも、会えることでしょう』

GM(グランドマザー)がそう告げた声が、鮮やかによみがえった。


 ここに着地するのか、と思ったが、どうやらそうではないらしい。

 天使たちはニッコリ笑って、私の手を引き飛んでいく。

 目指すのは、月表の東地平線の方向。

 すいと表裏の境をとびこせば、眼下にはこれまたなつかしい景色。

 ティアブラ・ミッドガルドだ。


 キャラメイクをして、最初にワールドに入るときには、この高さから『はじまりの町』へ、『はじまりの広場』へとダイブした。

 もう、半世紀以上もまえのことなのに、昨日のことのように思い出された。


 あのころは、ただただ、楽しかった『ティアブラ』。

 友達と一緒にクエストをうけて。必殺技を覚えたり、冒険者ランクが上がればすなおにうれしくて。

 ――その先に何が待っているのか知っていても、それはやはり、楽しく輝かしい時間だったことに間違いはなかった。

 あの頃の友の半数はすでに鬼籍にはいり。さらに半数も、どこかに傷みを抱えているものがほとんど。

 かれらももう間もなくこうしてここに来ることだろう。そして、そのあとは――


「来られますよ、ここにも、また」

「このセカイはすでに、それだけの猶予を得ました。

 まあ、できるのなら、一度アースガルドで肉体を得てからまたおいでいただきたいものですが……」

「それでも、しばらくのんびりするぐらいは、大丈夫です」


 天使たちは口に出す前に答えてくれた。

 そして、きれいな指で行く手を指さす。


「それよりまずは、ほら、あれを」


 促されるまま前方を見れば、地平から登る、青い月。

 みずみずしい輝きに満ちたそれは、ああ。


「『地球の出』です。

 ――あの地球は、アースガルドのそれを模して形作られています。

 アースガルドの地球もとても、美しい場所です。どうぞ、愛してあげてくださいね」

「もちろん!」


 私はおおきくうなずいた。

 だって私は、もともとそのつもりで、このセカイに降り立ったのだから。


 しかし、なんと、なんと美しい光景だろう。

 生身ではけしてみることのできない奇跡に、涙があふれた。

 やがてすっかりと地球がのぼりきれば、そこはふたたび『歓待の園』のうえ。

 天使たちはわたしを優しく気遣いながら、ゆっくりふわりと舞い降りていった。


 そこではすでに、友たち、恩あるひとたち、亡き両親たち。

 そしてなんと『御大』と『御前』までもが、笑顔で手を振っていたのたった。




 ――とある元総司令官(51)。

 御大ことルクの命で、『シーガル先遣隊』処断を指揮した。その後約束通り真実が明かされ、イツカやカナタ、先遣隊メンバーたちとも和解を果たし、穏やかな生活を送る。

 その後胸の病の再発により、三年後に死去。家族に看取られての最期は安らかなものであった。

 前身は、『エヴァーグレイス』に棲むちいさな海鳥モンスター。アースガルド転生後は、ちいさなヨットハーバーにつとめるようになった。


月面から地球の出は見られないだってぇぇぇ?! しまったあああ!!(昨日の日向の叫び)

ほんとは月と地球で互いに「のぼってるねー」「みんなどうしてるかねー」と2サイトのんびり酒宴回にしたかったんですが、そんなわけでこうなりました。


ルクとセレナは、亡くなったわけではなくふつーに参加です。

女神ぱうわぁです。


こちらのコウジは日本の色彩の黄色系の柑子色からきています。つまりきいろちゃんです。というとなんかとたんにこいぬちゃんぽくなる不思議。


次回、うさうさしき旅立ち。

ソーヤとシオン、ソリステラス留学へ!

どうぞ、お楽しみに!

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