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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_14 それはきっと、ラブコメで(2)

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14-2 こうりん! しろき ぼーくん!

 イツカがとび出していく。さすがに再び煙薬を吸い込み、五本の強化ポーションによる強化をうければ、ルナの呪文1.5回分くらいには追いついたよう。こんどは剣を打ち合う音が聞こえた。

 再び落ちてきたイツカにまたポーション五本。剣を打ち合う音が三つになった。


「らちがあかないわ。いったんクリアして!」

「うん!

『人のなしたるすべては洗い流されぬ。いまいちど、芽生えのときを告げましょう』――

『はじまりの一葉オリーブ』!」


 ルナはさらっとハト装備の覚醒技を使ってきた。

 Special Skill!! のポップアップののち、金色の輝きが天からやわらかく満ち、白い羽と緑の葉がやさしくふりそそぐエフェクトが、フィールド全体を包んだ。

『はじまりの一葉オリーブ』。一言でいうなら『戦況疑似リセット+維持する間は敵味方全部に漸次回復リジェネーション』という、ルカの『日輪』を無差別平和的にしたような技だ。


 もっともこの技は、時を戻すわけではない。

 ゆえにおれたちや観客の記憶とか、使ってしまったアイテムやポイント、フィールドの砂の一粒一粒が元の状態に戻ったりはしないものの、補助使いを絶叫させるには充分な効果を上げた。


 おれたち全員にかかっていた強化はすべてリセット。

 ルカとイツカに累積していたダメージも一発でゼロに。

 フィールドの下半分を覆っていたいちご色の煙も、あとかたもなくけしとんだ。


 そうしてルカの目が、ルナの目がおれをみつけた。

 四つの目が、天井近くの高みから、下にしっかりとむけられた。

 それを見上げるおれは、地面につま先を走らせ、最後のいちラインを描き上げる。

 その瞬間、リセットしえない『ただの地面の砂模様』が、錬成陣として完成。

 おれはそこに全力を注ぎこんだ。


「『閃光フラッシュ』!」


 あふれ出した閃光に二人が目を押さえる。もちろんルナはすぐに治癒キュアを唱えたが、その一瞬があれば十分だった。

 完全に目の前しか見ていなかったイツカは、目をくらまされることなく宙を蹴り、ルカのわきをすり抜け、ルナに組みつき、とらえた。


「ふぇっ?!」

「ルナ!!」


 不意を打たれ、バランスをくずしたルナはイツカごと落下し始める。すかさずルカが後を追ったが、落下していく人ふたりを一人の力で止めきれるわけもない。

 イツカなら着地はできたに違いないが、ルカも来てしまったなら放っておけない。

 大丈夫だからと声をかけ、おれは『フェザーフォール』のボムを投げた。

 魔力でできた白い羽毛に包まれ、三人は落下速度を減じる。

 イツカは体勢を立て直し、ルナを抱きなおしてしなやかに着地。

 そのわきで、ルカも着地。タッと距離を取ると、イツカに剣を向ける。


「カナタには毎度、ありがとうだけど……こ、今度はそれで譲らないわよ!

 イツカ、ルナをはなしなさい!

 ルナ、いまたすけるからねっ!」

「……………………ううん、いいよ」


 そのときルナが発した言葉に、イツカとルナ以外の全員があっけにとられた。


「わたし、イツカくんをすきになっちゃったかも。

 だから、降参する。いいでしょ?

 そのほうが、るかにもワンチャンできるし!」

「はあああああ?!

 ちょ、るな、なにいってるのいったい?!

 だ、だってこっちが負けたらカナタとライムの交際を認めることでそれはつまり」

「交際を『許す』、のっといこーる、『結婚する』じゃないよー?

 結婚じゃなく、お付き合いしている間は自由! ね、ワンチャンあるでしょ?」

「わ、ワンチャン……って、あの、ちが、ちがうのよカナタこれは、あわわ、べつにその、あたしはそのっ……!!」

「もー、往生際が悪いっ☆」


 ルナはどうやってかイツカを操ってルカに近づき、ガシッとルカを捕まえた。

 そして、ぐっとおれに差し出してくる。

 細腕の可憐なプリーストが、女の子とはいえ人ひとりをあっさりつかんでもってくる。絵面がおかしいと思ってしまうのは、おれの目か感覚がおかしいのだろうか。


「カナタくん。はい、敗者のカラス娘です。

 だっこでもモフモフでも、お好きに料理してあげてください♪」

「いやー! ちょ、だめ、そんな、こころの準備がああああ!!」

「料理って、なにもしないからね? 抱っこもモフモフも条件に入ってないし……」

「え、あ、そ、そうよね、そうよね……」

「いえ、本音はしてほしいそうなのでかまわずどうぞ」

「だめええええ!!」


 これはどうしたらいいのだろうか。途方に暮れかけたそのとき、救いの天使ならぬ、エクセリオンが現れた。

 レモンさんだ。今日はステージ仕様でばっちり決めた姿に、それだけで歓声が上がる。

 彼女があっさりとルカをだっこすれば、さらに歓声はヒートアップした。

 ちなみに、こちらはそんなにおかしく見えない。なぜなら彼女はエクセリオン。そして、ポーラーベア装備の恩恵で力の強いことは事前にわかっているからだ。


「はーいはいはい、それじゃあかわいーカラスちゃんはおねーさんがもらっていこーかなー。

 カラスちゃーん、きょうはおねーさんたちといーとこいこっかー。スイーツバイキングとかスイーツバイキングとかスイーツバイキングとかねー」

「え? え? ちょ、た、たべられる――!!」

「あなたたちもライムとおいでよ。いつものとこっていえばライムわかるから」


 あざやかなウインクをのこし、レモンさんは『縮地』で消え去った。

 ルカの人聞きの悪い叫びも消えてしまえば、フィールドはしーん。

 あとにはぼーぜんとするおれと、ビーストモードでぼーっとしてるイツカと、イツカをもふってご満悦のルナが残されて……


 たっぷり三秒後、よくわからない満場の絶叫が響き渡り、おれたちはそそくさと逃げだしたのであった。


いつもありがとうございます。

次回、スイーツバイキングにあいつらが!

暴走と掘り下げのカオス構成です。お楽しみに?!

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