The C-Part_40秒の、そのなかで~ゆったりと流れる時間を(9-2)~
2023.06.18
ぷっつり切れていましたので書き足しました!
そのなかで→そのなかで自分の気持ちを見つめなおすが、答えが出るのはもう少しさきのことである。
2023.05.16
かつてシグルドたちとイツカナをハメようとした場所でもある
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かつてベニーがシグルドたちとイツカナをハメようとした場所でもある
ここだけ読むと誤解生みそうなので修正させていただきましたm(__)m
@ステラの塔最上階『星の間』~シラタマの場合
『たまには、顔みせにきなさいよ。おいしいお茶あるから』
そうスピカに言われ、わたしは彼女のいるステラに赴いた。
わたしはスピカから生まれた『分体』。ゆえにその気になれば私たちは、意識感応で伝達ができる。ライカネットワークならぬ『虚無ネットワーク』だ。
それでも、お茶やお菓子を送ることはできないってなもので。
『それじゃ、お菓子持ってく。なにがいい?』
『『PAW☆PAW☆スイーツ』のマカロン全種詰め合わせ!
ステラがハマっちゃってるから、食べさせたげたいの』
『ん、了解』
スピカとステラは、母というか姉というか、まあ、そんなかんじの存在だ。気負うことはない。
約束の日、予約した詰め合わせを手に、わたしは『星の間』へ跳んだ。
『星の間』にはステラとスピカ、そしてシルヴェがいた。
かつて固く閉ざされていた『星の間』は、今日は天井と壁を開放してリアルスカイ満喫モード。
いつの間に植えたのか、とりどりのバラの花々が咲き誇り、あかるい日差しが降り注ぐなかでの、最高のお茶会だ。
『えへっ。りふぉーむしてみたの!
どう? すっごくあかるくなったでしょ?』
『リフォームっていうかすでに再構築だけどね……』
ステラはかわいく照れ笑う。
となりでスピカは微苦笑するけど、ステラを見るまなざしは優しい。
ステラは白を基調とした、日差しに透けるような透明感のワンピースにバラの花を飾ってどこか少女のよう。
スピカはもうすこしクールなかんじの色味とデザインのツーピース風で、デキる女感にキメている。
いつも騎士姿のシルヴェも、今日はお茶会の一員としてドレスアップ。白黒の色遣いが大人可愛い、ステラふうのワンピースドレスだ。
だいじょうぶ、今日はわたしも自信のコーデだ。
いつも小さい姿でいるので、もうすこし大きめにして。ふわふわの白うさみみに合う、白フワ系でいってみた。
「シラタマさん、今日のコーディネート、ものすごくかわいいですね。
すみません、ちょっとお耳をさわらせていただいてもかまいませんか?」
はたして、かわいいものだいすきのエリート星騎士はふおおおおっとなった。
極力隠していたみたいだけれど、シルヴェはかわいいものが大好きだ。実家の私室は、ぬいぐるみであふれている。
ステラが臥せっていたころは、心配でろくに家に帰らなかった彼女も最近は帰るようになり、ぬいぐるみライフを満喫しているらしい。
彼女のぬいぐるみ軍団に最近加わったのが、ソナタちゃんたちが作ったものをコピー・アレンジして商品化された『イツカナふわけも・くたくたぬいぐるみ』。
爆発的人気をほこるそいつは、当然ここにもかざられている。
ステラも、イツカとカナタに想いを寄せているのだ。それでも、かれらにはもう未来を誓ったものたちがいる。
だから、そのきもちを見守る愛に昇華しているのだ――ひとりのときには、そっとぬいぐるみを抱きしめて。
でも、だいじょうぶ。
ステラにはスピカが、シルヴェが、ソレアが、セレネがいる。
いざってときにはわたしだって。ロイヤルファミリーたちだっている。
もう、ほかの『虚無』に憑かれるようなことには、二度とさせない。
決意を込めてわたしたちは、そっとうなずきあうのだった。
――ステラ。
ステラ領を見守る優しき女神。100年臥せっていたけれど、いまではすっかりもとの元気を取り戻した。
イツカナたちにかなわぬ淡い思いを抱くけれど、それをパワーに変えてがんばる。
いままで、つらい思いをさせてしまったみんなのためにもと、最終試行のおわりまで、慈愛に満ちたより良い世界を目指した。
――スピカ。
ステラの悲しみから生まれた3S。彼女の最大の理解者であり親友。ステラが迷うときには、クールな知性でアドバイスを行う。
とにかくステラ大好き。だからこそ、ときには厳しいことも言う。
最終試行のおわりまでステラに寄り添い、力を貸し続けた。
――シルヴェ。
ステラ最高のエリートたる星騎士の筆頭。
ステラさまをはじめとした可愛いひと・ものが大大大好き。
第三覚醒に到達しており、人の限界を乗り超えて、ステラに仕え続けた。
『星の間』にかわいいものが増えていくのはだいたい、彼女の仕業である。
――シラタマ。
ステラを救ったイツカナたちへの『お礼』として、スピカが遣わせた分体。
白いけだまのようなうさちゃんの姿か、うさみみ少女の姿を取ることが多い。
『3S七人衆』の中では一番大人で、しょーもない方向に暴走する仲間たちを軌道修正するが、彼女には性に合っているらしく楽し気。
ほかの七人衆とともに、さいごまでイツカナたちとともに世界を見守り続けた。
@ステラ国首都ステラマリス・エイドリアン邸中庭~タクマの場合~
オレたち『六柱』は、イザというときには結束して戦う。
当然、その関係は密なものになる。
まあたまには逆に犬猿の仲になるってこともあるそうだが、オレたちはそうじゃなかった。
そんなわけで今日は、ベニー主催でお茶会だ。
場所は彼女の暮らすエイドリアン邸。かつてシグルドたちとイツカナをハメようとした場所でもあるっちゃあるが、そんな記憶ももうどこへやら。
スバルとふたり、お招きに預かった。
エイドリアンさん、シグ、サーヤ、エルとユフィ。
リアは家族での茶会が先約に入ってたのでいない。
あとはシイラに、アイリーンやメイ、コルネオのおっさんも来ている。
客観的にみりゃ大御所ばっか、その実は知り合いばっかの、気楽な集まりだ。
「今日はいい茶葉が手に入りましたし、シイラからも新製品の差し入れをたくさん頂きましたわ。
ですので、みなさまどうか楽しんでいってくださいませね?
……ってなんかこりゃやっぱオレっぽくないな。ま、気楽にやろうぜ!」
「おー!」
気取らないベニーの音頭で、ガーデン茶会は始まった。
ちなみにエイドリアンさんはベニーに『令嬢らしくしろ』とはいわない。彼女らしくないというのはわかっているのだ。
そうしてすきなだけ剣の道を究めることを許してくれた、そのおかげでオレは彼女に出会い、ともに修行することができた。
オレたち『スターシード』は特異な存在だ。煙たがられることだって多々あった。
けど、そんなのてんで気にしないベニーにオレは、どれだけ救われたことか。
性別こそ違うが、ベニーはオレの姉貴にして親友といっていい存在だ。
だから、本当を言えば。
「ねえ、いいの? 言わなくて」
「そうですよ。待ってますよ、ベニーちゃん」
そのとき、ユフィとシイラがこそっと言ってきた。
そう、ユフィとエル、シイラは俺の気持ちを知っている。
このセカイに架せられた『呪い』が解けた今、オレは旅に出たいと思っているのだ。
クエストとしての旅じゃない、ただ自由に世界を回る旅に。
それに、ベニーとも一緒に行けたらと思っているのだが。
『鈍感』『天然』と言われるオレだって、さすがにそれを言ったらいろいろとあるのはわかる。
実質の、プロポーズとなってしまう。
失礼な話かもしれないが、オレにそんなつもりはないし――ベニーにもそんなつもりはないのは見ればわかる。
結婚準備なうでしあわせいっぱいのエルの野郎は「いいじゃないですか、言ってしまえば。これが運命ということなのですよ!」なんてキャラぶっこわれかけてるが、これに対しては「お黙れ☆彡」とつっこんでおくのみである。
一番いいのはこの茶会で、ベニーの方から押しかけてくれることだけど。
いやいや、それでも、問題しかない気がする。
まあ、大丈夫だ。もう、エルマーの参加は決まってる。
二人で行くなら、だいじょうぶ。
割り切りかけたそのときだ。
エイドリアンさんが言い出した。
「ところでタクマ。諸国漫遊の旅に出たいと聞いたけれど、それは本当なのかい?」
「あ、ええ。ちょうど『六柱』もやめちまってるし、ちょうどいいかと」
「そうか。ではひとつ、頼みがあるのだが……」
そうしてオレは頼まれてしまった。
ベニーの修行の旅のボディーガードを。
――エイドリアン。
ベニーの父。型破りな娘の才を見抜き、大きな愛でそれを伸ばす。
タクマとベニーの気持ちを察して、かたちだけボディーガードの依頼を行った。
もしこの旅でタクマとくっついちゃったらそれでもいい、むしろそうなってくれるといいなーと期待している。
――ベニー。
タクマの剣の先輩。『六柱』のひとり。
しょっちゅうタクマのうちにもお邪魔して世話を焼いてくれるので、スバルには姉のように思われている。
反和平事件のときに気持ちを明かさなかったのは、隠したのでなく単に『言うの忘れてた』からのよう。
武者修行の旅に出て、月萌やソリスのつわものたちと剣を交わし、訪れた平和を満喫。そのなかで自分の気持ちを見つめなおすが、答えが出るのはもう少しさきのことである。
――ユフィール。
『六柱』のひとり。エルナールの姉にして、シルヴェリアのいとこ。
彼女もかわいいもの大好きなので、キュートな子供姿によく化ける『リアちゃん』と弟の婚約は『私得』。
たださすがに新婚夫婦の邪魔はできないんで、いっそかわいい年下男性でもみつけようかしらと思っていたりしている。
――シイラ。
シナモンいろのうさみみがチャームポイント。食品まわりをいろいろたばねてる才媛。ユフィール、ベニーとは学生時代からの仲良し。
アスカは特訓で彼女に会えなかったのをめちゃくちゃ残念がっていたが、このしばらくあとに会見がかなった。
二人ともうさちゃんだいすきなので、すっかりうさ友に。二人のタッグで生み出された『さくふわうさちゃんクッキー』は、ステラで大人気になった。
次回、新章突入。
旅立つ者たちの姿を描きます。
どうぞ、お楽しみに!




