The C-Part_40秒の、そのなかで~ゆったりと流れる時間を(9-1)~
2023.06.30
なんと! 逆の意味になっておりましたです……修正いたしました……
自分じゃなきゃ絶対にダメ、というところは
↓
自分じゃなきゃ絶対にダメ、というところ以外は
@ステラマリス城、ティールーム~ルイーズの場合~
「もうすぐですね、リアの結婚式も」
「えへへ……。
エルにゃんとはずーっといっしょだったけど、あらためてっていうとカンガイあるなあ……
っていうか結婚準備タイヘンすぎ~……なんでまえまえから準備してたのにこんな忙しいの~……」
金髪の妹はティーテーブルにへたんとつっぷした。
わたしは深くうなずかずにいられなかった……わたしのときも本当に忙しかった。
招待客や会場、料理や引き出物の状況が変わることもある。ドレスのフィッティングなどは、直前でなければ意味がない。
どれだけ準備を重ねていても、式の直前はめまぐるしいもの。
そう、母上から聞いていたにも関わらず。
式にこぎつけたときの達成感と幸福感の半分くらいは、もしかしたら今日までの準備の忙しさ、それらから解放されたことからきているのではないかとすら思ったものだ。
「そんなにも忙しいのか……
きーさまとの式のときにわたしはこなせるだろうか……」
緑髪の妹は不安げ。むりもない、彼女はそうでなくとも忙しいのだ。『エルメスの家』の運営のために、子供たちのためにいつも走り回っている。
母上が優しく微笑んだ。
「大丈夫よ。自分じゃなきゃ絶対にダメ、というところ以外はどんどん任せていけば、何とかなるわ。
エルにもたよれるひとはいっぱいいるでしょう?」
「ええ、それは。
でも、子供たちとの時間は削れません。
あの子たちは、腹を痛めて産んだ子でこそありませんが、それでも我が子と思う存在なのです」
「エルはほんとうに、あの子たちを愛しているのね。
でもねエル、逆に考えてみて。
たとえば母上がまだ、父上と結婚式をしていないとして。
このたびめでたく挙式することになったら、エルはどう思う?」
「それは……せっかくの晴れの日なのですから、目いっぱいに楽しんでいただきたいと……そのためならば、お手伝いも、すこしの我慢も……あ……」
「もちろん、どれくらいがんばれるかは、その子によって違うからそこは目配りをしてあげなきゃだけど。
お願いできること、少しずつ、相談してみればどうかしら。
さいわいみんな、エルときーさまのしあわせを願ってくれているのだから」
母上のとなりで、父上も優しくうなずく。
エルはふんわり、うれしそうな顔になる。
「はい。話してみます!
こどもたちと、きーさまと一緒に!」
「がんばれエル!
おねーちゃんたちもできることは手伝うんだからねっ!」
「はい!」
リアもさっきまでのへたりぶりはどこへやら、ニコニコと手伝いを申し出る。
ひとのためなら頑張れる、それはリアのいいところだ。
しかしこれはエルナールとユフィールも巻き込む気ではなかろうか。あんまり無茶ぶりはしないでやってほしい。そこは見ておいてやらねばならないだろう。
むちゃぶり、と考えてふと頭に浮かんだのは、タクマだ。
いつも母上にむちゃぶりをくらっては、期待以上の結果を出す大天才タクマ。
一時はエルメスの婿にとの話も持ちあがったほどの彼だが……
これは今、共有しておく方がいいだろう。わたしは口を開いた。
「ところで、このことは聞いているか。
先だってスバル殿に相談されたのだ。
タクマが、ソリスに行きたがっているようだと」
――ステラマリス十二世 (マリーさん)&シュトラール。
ステラ領の女王とその配偶者。奥さまは『ソードマスター』、旦那さまは『プラチナムーン』という最強夫妻。ほわほわして見えるが、決めるところは決める。
三人の娘たちの結婚式がおわったのち、長女ルイーズに王位を譲る。
その後はよきじいじ、ばあばとして娘家族を見守った。
――ルイーズ。
ステラロイヤルファミリーの長女。このしばらく後に王位を継ぐ。
女王となったことでセプテントリオン党の党首を退き、国議会の議長となったが、堅実かつバランスの取れた運営で信望を得た。
夫との間に長女を授かったのちも、可能な限りで執務を続け、働く親たちや恵まれぬ子に優しい国のありかたを模索し続けた。
――ヴァレリア&エルナール。
ステラロイヤルファミリーの次女とその婚約者。ふたりともに『六柱』の最強カップル。自由すぎるヴァレリアをエルナールが優しく御する関係は結婚後も変わらず。ついにはルイーズの許可を得て王室を飛び出し、世界を旅してまわった。
次回は、そのころ催されていたふたつのお茶会。
かたや女神たち。かたや、貴族たちのやんごとなきお茶会の予定です。
どうぞまったりお付き合いくださいませ!




