The C-Part_40秒の、そのなかで~ゆったりと流れる時間を(5)~
2023.06.30
誤字修正いたしました!
うさほほ笑み→うさプリな微笑み
@アルム島スパ・リラクゼーションルーム~マヤ・オオトリの場合~
ミッション『エインヘリアル』の終結による軍縮の波は当然、月萌にも押し寄せていた。
その嚆矢となるべく、ルリ先輩は大使的立場で『シーガル聖王騎士団』へ。
わたしもそのしばらく後に予備役転向、アルム島へと赴いた。
引っ越しのあれやこれをとりあえず片づけた私は、まっさきにスパへGO。
シャスタさまたちのおかげで、アルム島のアクアリゾートはめっちゃ充実している。動画で見て以来、ずっと来たくて仕方なかったのだ。
露天風呂にプール、室内風呂。心赴くままに目いっぱい楽しんで、リラクゼーションルームへ。
そこでわたしは若干のカオスに出会った。
海と空と地の匠さんたちがマッサージいすでぶるぶるしている、これはいい。
風呂上りレティシアさんがホットアイマスクをつけてでろんとしてる、これもいい。
タカヤくんが腰に手を当ててフルーツ牛乳一気飲みしてる、これもおかしくない。
「っていや、学長?! アイザワさんにナンバラ副首相?!」
この学長というのは、わたしたちの代の学長だ。ミソラちゃんの前にいた、悪名高いあいつではない。
アイザワさんは、反管理派の理事で、親同士が親しいからよく知っている。
ナンバラ副首相は、ゴジョウ首相のサブを担う側近。
そんな大御所が三人揃って浴衣姿でまったりお茶を飲んでいる。
さらに言うなら、アルム島攻撃に加わった同僚たちや、人間やアンドロイドのエージェントたちも何人も、テレビをみたり扇風機の側で涼んだりとくつろぎまくってる。
いや、いやいや。
「なんつーか、知り合いばっかやんこの空間……」
私の口から思わずこんな言葉が漏れた。
私はいったい、どこに来てしまったのだろう。
混乱しているとぽんと肩をたたかれた。ユリ先輩だ。
昔のような、明るい笑顔で「コーヒー牛乳、飲む?」と冷えた牛乳瓶を差し出してくれた。
「あ、ありがとうございます!
覚えててくれたんですね、ユリ先輩……」
私の湯上りチョイスはフルーツ牛乳よりもコーヒー牛乳である。
けれど、それをユリ先輩が知ったのは10年ほど前。高天原時代のことなのだ。
その後軍務を経て、使い捨てられる形で追放されて。
とっくに、忘れていてもおかしくなんかないのに。
「うん、少し前までは忘れてたかも。
でもね、思い出したんだ。ここでマヤの姿をみたら、なんかね」
ニコニコ笑う先輩の顔を見ていると、なんだか学生時代に戻った気がした。
「あ、ふたり見ーっけ!
ねえねえ、お昼まだならどーう?」
と、横合いから弾む声がした。
振り返ると浴衣姿のルリ先輩が、人懐っこい笑顔でぱたぱた走ってくるところだった。
ハッ、このパターンは。
私とユリ先輩はすかさずキャッチの姿勢に入った。
はたしてちょっとおっちょこちょいなルリ先輩は、何もないところでつまずいて、私たちの胸に飛び込んできたのだった。
――マヤ。
ルリとユリの後輩。飛行機を愛するしっかりもの。
プライベートではちょっとおっちょこちょいになるルリをサポート。一部でルリちゃん係と言われていた。
予備役転向でアルム島に。シーガル騎士団に所属し、島を守りつつ南国ライフを楽しむ。
――レティシア。
もともとはミライツカナタとソナタちゃんのいちファンのスナイパー。ソナタちゃんのかわいさに参ってプリーストになり、見事お友達に。
だからほんとはいつでも護衛についていたいのだけれど、人の身ではそうもいかないため、休む時は徹底的に休み、鍛えるときは徹底的に鍛えるを繰り返すうち第三、第四覚醒まで到達。最後の試行の終わりまで護衛を続けた。
――タカヤ。
フルネームは『タカヤ・タカヤス』。なのでみんなが彼を『タカヤ』と呼ぶ。
母の再婚でこうなったのだが、むしろネタになるんでグッショブと思った強メンタルのもちぬし。
そのコミュ力と運転技術で、最後の試行の終わりまでミライツカナタの『おくるまがかり』をつとめた。
――ソリスからきた匠たち。
魔王島開拓に際しソリスからきた最初の10人。自ら整えたアルム島に惚れ込み、多くが魔王戦争終結後も島に残った。
空の匠のアーク、草原の匠のアルネヴ姉妹はアルム島本土に帰ったが、まとまった休みにはたびたびこの島を訪れた。
――カナぴょんに憧れる鳥装備さん(※ハンドルネーム)。
管理派による夜襲に報酬目当てで加わった賞金稼ぎ。カナタのあざやかな作戦とうさプリな微笑みにはーとを撃ち抜かれる。賞金稼ぎよりエージェントに向いていたことが判明、才能を開花させる。彼をモデルにしたスパイ小説は大人気となったが本人は『俺こんなにカッコよくないッスから』と苦笑。
一線を退いたのちはアルム島で悠々自適の生活を送った。
――先々代学長。
ノゾミ世代の学長。生徒を守ろうとする気概のある男で、衛星落下事件のさいには生徒たちとともに学園に残り、これを食い止めようとした。
のちに管理派との争いに負けて早期退職することになるが、なにかと若者たちを元気づけてきた。
全てが終わってようやく肩の荷が降りた彼は、若い頃の趣味だったパラセーリングを楽しむ予定である。
――ナンバラ議員。
ゴジョウ派のひとり。イワオさんの側近。めっちゃ働いてやっと休暇を取ることができた。
かつてイワオさん不在時、せっかく党首リュウジの側近につけてもらえたのに、力量不足から護国派に押されていたことを後悔していた。休暇後はその気持ちも癒え、ハチャメチャ愛され首相の手綱をしっかりと取り、名宰相と言われるようになった。
――ミチル・アイザワ。
反管理派の学識者。ノゾミたちと一緒に常に予防線を張り続けていたが、その必要もなくなり理事を退職。休みにはアルム島で骨休めしつつ、学究の日々を送った。
――『ナイツオブラウンド』No2~11(1、4、8、10、12以外)
もともと月萌側のアンドロイドエージェントたち。自爆攻撃を命じられ、『魔王軍』に救命された。
トニーことNo12にリーダーをおっつけ、もとい任せて得意の分野で働いた。
その後No1、4はアイドルに。8、10は広い世界を見たいと飛び立った。
残るメンツはしばらく島を拠点に働くつもりである。
――月萌軍飛行隊指揮官(匿名希望)
魔王戦第六陣で北部隊に配属。アルム島北の崖への攻撃を指揮。部下たちを逃がすため、やむなく森のはたにフレアボムを投下した。
その攻撃は温存されていたコトハの『スイート・ミルキィ・レイン』で即時消火され、救われた気持ちを抱く。
ミッション『エインヘリアル』終結後の早期退職プログラムに応募しアルム島へ。今度はこの地を守りたいとの志を胸に、たくましく働いている。
――とある月萌軍人バディ。
魔王戦第六陣で南部隊に配属。アルム島への斉射を行ったが、闊達に戦うイツカの姿を直接に見て、自分たちとの現状への疑問を強める。
ミッション『エインヘリアル』終結後の早期退職プログラムに応募、アルム島で働きながら自分を見つめなおす。明るく楽しい南国の毎日にいかんせんシリアスになれなかったりするが、それもいいかもと思い始める今日この頃である。
あれれ、なんとかなった……?!
次回、星降園の仲間たちの様子をお送りする予定でございます。
どうぞ、まったりおつきあいくださいませ!




