The C-Part_40秒の、そのなかで~ゆったりと流れる時間を(4)~
@とある教会・礼拝堂~ルキウスの場合~
――マルキア。我らはお前に、償うことができたのだろうか。
『誰かが悪役になれなきゃだろ?』それが、彼女の口癖だった。
理由は彼女の半生にある。彼女の父マルクスは政略婚のため、やむなくその妻――我が妹リュキスを『捨てた』。そのときすでにリュキスは身ごもっていたが、事情を理解していた彼女は、言い出すことなく身を引いた。
やがて訪れた再会の時、マルクスはこうべを垂れ、何一つも申し開きをしなかった。みずから悪役となったのだ。知らず悲しみを与えてしまった娘のために。
母リュキスの言葉ですべてを知った彼女は、父を許し、ふたりの結婚を祝福した。
しかしその後彼女は、対月萌工作員の筆頭としての役割を進んで引き受けた。
『誰かが悪役になれなきゃだろ?』とそういって。
大好きな剣の腕をみとめられ、『六柱』に推されたというのに、それを辞退して――それも、それまでの悪評により落選したというていを取ってくれ、と条件を付けて。
思うに彼女は、幻滅していたのだろう。
父母の結婚に際し、彼女は家を出ている。
当時荒れていた彼女を、マルクスの家に入れたくない、そう渋る者がいたためだ。
それはひとえに我々の身勝手のため。無垢な少女をそれほど傷つけ追い詰めた我らの落ち度なのだ。マルクスがそう言いだす前に、彼女はタンカを切って飛び出した。
自分だけが悪役になったのだ。愛する母の幸せのために。
彼女は幻滅していたのだ。説得されて初めて改心するような、愚鈍な男どもに。
自らの国の、愛する子供たちの未来を、こんなものどもに任せてはおけないとそう思ったのだろう。
それから十年、縁談もすべて一笑に付し、浮いた噂の一つとてなく、マルキアはひたすら任務にまい進してきた。
その彼女が、恋をしたという。まさしく青天の霹靂だった。
リュキスとマルクスの意志を受け入れた以上、わたしにも責のあることだ。叔父として上司として、陰に日向に彼女を見守り、手を差し伸べてきた。
すくなくとも自分ではそのつもりだった。
ようやくそれが、功を奏してくれたのか――やっと、やっと癒えたのか。大人の、男の身勝手で、凍り付いてしまった無垢な乙女の心が。
もちろん恩着せがましく言い出すつもりはない、だがそうである以上、そうなのかと聞くこともまたできない。
見守り、推し量るしかあるまい。これまでのように。
と、ふいにマルキアが振り返った。
天井そばのステンドグラスからふりそそぐひかりのなか、愛する男の腕を取った彼女は、やわらかい微笑みとともにこう言ってくれた。
ありがとう、おじさま、と。
われらが聖なる四魔王――イツカたちとカナタたちにより、この世界に平和が訪れた。
かれらのカリスマが続く限り、そしてその仲間たちの武力と志が十分なものであるかぎり、それは続くことだろう。
そのことにより起きたのは、軍縮の動き。
マルキアの結成した直属チームのひとつ『シエル・ヴィーヴル』は、その半数が予備役転向したため事実上解体。
残るメンバーはいまひとつ――『チームBs』に編入か、それともと議論がなされている。
もっとも、マルキア本人もいずれ、一時的にでも剣を手離さなければならなくなる。
彼女は3S『虚飾』の適合者だが、『虚飾』は生殖能力を抑制する。
フラグメント服用なしでもダントツに強い彼女だが、あえてわざわざ危機にさらすわけにもいかないし……
妊婦に剣を取らせる外道など、いかに領軍とてできはしない。
それでも彼女は、それを望んだ。
近いうちに『チームBs』は、そして元『シエル・ヴィーヴル』の三人は、異なるチームリーダーを頂くこととなる。
それでも彼らは、それを受け入れてくれた。
世界が変わり、我らもまた変わらなければならないときが来た。
それでもふしぎと、その前途は明るく思えるのだ。
それはきっと、それをもたらした、イツカたちとカナタたちのおかげなのだろう。
ときにやさしく、ときにまぶしく輝くその笑顔を思い浮かべれば、胸の内にわくわくと、あたたかな力が湧いてくるのだから。
――ルキウス。
ステラ領軍総司令。マルキアの叔父。陰ひなたに彼女を見守り手を差し伸べてきた。
マルキアもそのことは認識しており『男だからって頼らない』スタンスの彼女も、彼には絶大な信頼を寄せていた。
そんなわけで彼女の子供たちも彼になつき、かわいい姪孫たちに目じりを下げる日々を送る。
――マルキア。
貴族の事情に振り回されて波乱の少女時代を過ごし、一時は男性不信だったものの、なにかと心を砕いてくれた叔父ルキウスによりそれも克服。
運命の出会いで恋に落ちたパレーナは、どことなく彼に似ている。
パレーナとの間に二人の子供を授かるが、いずれも文武両道で、母が最高のライバルと目した『青嵐公』ノゾミとの手合わせを求め月萌に渡った。
――パレーナ(パレーナ八世)。
白鯨のトーテムの若長。一族は老いが遅く長寿であるため婚期も遅く、子供が少ない。そのため、無類のこども好き。
ハルキとともに『エルメスの家』や『ハートチャイルドハウス』を手伝ったりと、世界のこどもたちに愛情を注ぐ日々を送った。
マルキアとの間に子供たちを授かったのちは、かれらを最優先に、大切に育てるが、ときどき溺愛が暴走し、とうの子供たちに叱られたりも。
――『チームBs』。
『エルメスの家』出身者によるチーム。全員コードネームがBで始まる。
Blaze――火器使いの少年ランディ。Bless――竜人族のプリーストである男の娘カイ。Blitz――カードキャスターの少女フレイ。Blade――剣士の少女ミラ。Braid――糸使いの少女・ミラの双子の妹ミクの五人。
『シエル・ヴィーヴル』解体後も存続。レム&ジュディ、マールを加えて地域の平和のために活動。とくに子供たちに人気で、かれらをモデルにしたアニメも作られた。
今月中に……おわらなそうなCパート……((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
しかし来月には終わりそう。そんなかんじです。
チームBsがほぼほぼ出せなかったのが悔やまれます。
ここまで設定しといてウワアアン。
次回は趣を変えて、まったりモードの島のみなさんの様子をお送りする予定です。どうぞまったりおつきあいくださいませ。
※明日は所用により投稿時間がずれてしまいそうでございます。
申し訳ございませんが、どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m




