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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_98 終結・魔王戦!~あの月を目指す、その前に~

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The C-Part_40秒の、そのなかで~はじまる、新たな日々!(8-2)~

@高天原市街~『リガー』/トシカズ・クロノの場合~


 そして当日。

 俺は変装済みの奴を乗せ、とある車を追いかけた。


 白い、平凡な乗用車。前の座席にはハジメ・ユタカ議員とその婚約者ファン ユウミ。後部座席にはパラソルらしきもの。

 そして、車内いっぱいに甘い甘い、ラブラブムードが満載されている。

 なのになぜだろう、なんだか胸が温かくなるのは。


「はあ……ほのぼのですねぇ、ほのぼのですねぇ……」


 アホの一つ覚えのように繰り返している本日のクライアントだが、その気持ちはちょっとだけわかってしまう。

 俺はたのしいひとりもんだ。彼女はいつでも募集中。モフモフのついてないリア充を見ると、爆発しろと毎度思う。

 なのになぜか、あの二人はにくめない。

 なんだろう。あの清らかであたたかい二人を見ていると、なぜだか浄化されていく気がするのだ。


「彼女ホントにアンタの分身?」

「奇遇ですね、わたしもしょっちゅうそれ思います」


 聞いた俺がばかだった。いや女装姿でキリッとすんなし。

 俺はため息とともに、清楚な白のブラウスをまとった女装野郎(なぜか似合っているのが永遠の謎)のアホっぷりを意識から追い出した。

 今は任務中なのだ。集中だ。

 クライアントがふざけてようがアホだろうが、任務はしっかりと遂行する。

 それが俺の選んだみちなのだから。



 たどり着いたのは、月萌東海岸。

 恋人たちの聖地として、夏にはとんでもなく混みまくったものだが、一山こえてシーズンオフの今では、すっかり静かな場所になっていた。

 砂浜から一段上がったあたりにパラソルを立て、レジャーシートを敷き、バスケットをふたつ出して、二人はピクニックとしゃれこみだした。


 互いの弁当を交換しあい、ときには「あーん」もなさるラブラブランチタイムを拝見しているのは俺たちだけではない。

 たとえば、向こうの岩陰。そっちの木陰。

 さらにいうなら向こうに見える男女二人はカップルのふりをしたニセものだ。

 でっかい女優帽の女に眼鏡の男。完全に『ちいさな芽吹き』のチョウノ・トリイ両議員じゃねーか。つまりは開き直ったとそういうことか。

 っていうか近くに停まった車の中で張り込みごっこしてやがんのはやつらの同僚のサクライ・イサワ両議員。

『芽吹き』党の名誉のために付け加えると、立国党や風見の党のやつらもいる。もちろん大地のやつらも。大丈夫か月萌国会。

 もちろん関係ない顔もいくつもある。そして全員ほのぼの幸せそうに見守っている。

 いや、どんだけいやがるよ。こっちゃシゴトなんだ。バレたらどーしてくれやがる。


「大丈夫です、あれらはいわば『おとり』ですので」

「はあ?」

「あらかじめ、無害な人物たちに情報をリークしました。

 隠密レベルからして、見つかるのは彼らが先。我らに目が向くことはないというわけです」

「はあ………………」


 いや女装姿でドヤんなし。

 やがてランチタイムを終えたふたりは、きれいに後片付けをしたかとおもうと、なんとふたりでビーチバレーをはじめた。

 かたや、いつも誰かのために駆け回っている若手議員。かたや、メイドアンドロイド。

 身体能力高めのと激高の二人による、いろんな意味で熱いラリーは、ユウミの強烈アタックで幕を下ろした。

 これはィユハンの顔面直撃コース。仕方ない、俺が泥をかぶるとしよう。

 やつを『逃げろ』とさらに奥の茂みに押し込み、俺がボールを受け止め、さりげない風に立ち上がった。


「よう、二人とも。奇遇だな!」

「あれっ、クロノさん!

 またお会いしましたね。先日はどうも!」


 ニコニコ走り寄ってくるわんこ、じゃねえ、ハジメ・ユタカ氏。

 ボールを渡すと「ありがとうございます!」何の疑いもない全開笑顔をご披露。白い歯が光った気がする。やばい、なんか撫でたい。すごいわんこっぽい。

 後を追って走ってきたユウミさんも「すみません、コントロールを誤ってしまいまして……当たりませんでした?」と心配してくれる。

 ィユハンの野郎によく似ているのに、真にたおやかでおしとやかなその姿を見ていると、なにもかも許してしまいそうになる。

 ともかく「え、ええはい、大丈夫でした」とごまかし、仲睦まじく去っていく二人を見送った。

 よしばれずにすんだ。胸をなでおろしつつ後ろの茂みをみれば、グッジョブと親指を立てる藪野郎がいた。


 その後、軽く波打ちぎわを散歩して二人は帰途に就いた。

 つかす離れずの位置で車を尾行。今度もバレることはなく、ユウミが通用門から屋敷に入っていき、ハジメ氏が車を発進させた。

 これにて任務完了。いまだに枝を頭にブッさしフェイスペインティングをキメた藪野郎が無駄にステキなイケメンスマイルで「ありがとうございました、いずれまた」と降りていくのを「へーへー」と見送り、俺の一日は終わった。






 いや、終わってなかった。

 るんるんと通用門を開けた藪野郎を待っていたのは、鬼の笑顔で仁王立ちするやつの妹だったのだ。


「おやメイリン。どうしたんですか、もしかしてお兄ちゃんに会いたくて」

「ええ、まあね?

 ちょーっとお話ししましょうか、今日の件について??」

「えっ? えっ? なんのことでしょう??」

「とぼけんなアホ兄貴――!!」


 怒号とともに、藪野郎は通用門に引きずり込まれていった。

 よし帰ろう。そしてたのしい車内外の清掃だ。

 俺は晴れ晴れとわが愛車を発進させたのだった。




 ――ファン メイリン。

 ィユハンの最愛の妹。いざというときには身代わりを務めることもある。

『楽しそうならレッツトライ!』がモットーの、自由すぎる兄の手綱をとる。

『はやく兄貴を片付けてあたしもいい人を……』が最近の口癖だが、重度のシスコン、かつ世紀のアイドルに憧れており縁談に見向きもしないため、そろそろ物理的に片付けようかしら (笑)と言い出した。

 しかし彼女自身も隠しているがブラコンのため、前途は多難のようである。


 ――ハジメ・ユタカ氏。

 愛しあう者同士が、月萌の身分制と『秘密主義』により引き裂かれることに疑問を覚え、これを変えるために立ち上がった若手議員。

 無限のガッツと優しさを兼ね備えた彼は『大神意』によっても荒れることなく、周囲に安らぎと癒しを与えつづけ、全幅の信頼を集める。

 また、月萌の『秘密主義』消滅までイツカナたちを一貫して支えつづけたことにより、かかげた目標を達成したとみなされ、国民からの支持もうなぎ上り。

 彼の『ちいさな芽吹きの党』は堂々与党に。その翌年は最大与党となり、党首の彼は総理大臣となった。

 ユウミとの約束通り、退任後に結婚。月晶宮での式は、世界中から仲間が集まる盛大なものとなった。


 ――ファン ユウミ。

 もともとはィユハンの『分身』。くぐつの体に宿り、社会学習のため働いていたときにハジメと出会い恋に落ちる。

 大恋愛の末に婚約を認められ、ハジメが総理をやめたのちに、人間の体をもらって結婚。それまでもそれからも、彼を献身的に支えた。

『愛するハジメさん』のこととなると無敵の強さを見せる。

 なお、人間となった後の方がむしろ強い。


 ――サクライ・イサワ・チョウノ・トリイ議員。

 ハジメ氏を見守る仲間たち。しっかりもののサクライさん、熱血和み系のイサワさん、不思議ちゃんのチョウノさん、さわやか眼鏡のトリイさんというバランスの取れたパーティー。

『ちいさな芽吹きの党』が支持を伸ばし、多くの仲間を迎えても、その絆はやはり特別で、のちのちまで家族ぐるみのあたたかいお付き合いをつづけた。

 どこかで聞いた名前? はて、何のことでしょう?


もともとこのへんは、まだライバルとして張り合うことのあるユーさんとハジメさんを描く予定だったんだけど……あれー?(*´∀`)ドウシテコウナッタ


次回、保育士見習いは無敵なのです! お楽しみに☆彡

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