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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_98 終結・魔王戦!~あの月を目指す、その前に~

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The C-Part_40秒の、そのなかで~はじまる、新たな日々!(8)~

CパートにCパートがついた感。はて。


2023.04.29

最後の一分のカッコをノーマルかぎかっこになおしました。

@高天原市街~『リガー』/トシカズ・クロノの場合~


 客待ちをしていた俺の視界の隅。知り合いの姿が飛び込んできた。

 ヒラヒラフリフリのメイド服を着、食料品やら日用品やらの袋を抱えた、銀色の髪の女。

 まっすぐこちらに歩いてくると、リアウィンドウをこんこんとたたきこうのたまわる。


『乗せてってもらえる? クロノ邸まで』

「えー…………」


 ただし、その顔に浮かぶ表情は柔らかい。

 だから逃げを打たなかったのだが。

 だが、俺の返事もお察しだ。

 理由は、クロノ邸と俺の関係。姓にクロノが付くところからお察しである。


『言ってたわよ。たまには顔出してほしいって』

「いや、……まあ。

 で、ちゃんとカネは払うよな?」

『マジ?』

「俺が次期当主の女をお持ち帰りしたイカレ野郎になってもいいんならいいぜ?」

『バカいってんじゃないわよ』


 軽口をたたきあいつつ、荷物をトランクに乗せて本人を助手席に。


「通用口だな?」

『ええ』


 かくして俺は『銀子ちゃん』を隣に乗せて、実家への道を走りだした。



『ていうかアンタ、まだタクシー運転手やってたの? まおうさまのアッシー君はついにクビ?』

「いや言い方。」

『だってアンタのことだから、高天原の黒服にでももぐりこんだかと』

「冗談だろ。……

 あんっな尊いもふもふちゃんたちの側に始終いてみろ、俺の理性がバイナラするわ!」

『…………うん、まあ。

 ほどほどになさいね?』

「えっなにその憐れむような眼? 違うからな! 違うんだからな!!

 俺のもふもふちゃんたちへの愛はあくまで清らかなもんなんだからな!!

 そりゃあ時には薄いご本の一冊二冊お布施のつもりで買ったりするけどそれだって粗末にすることなしに」

『アンタもかつては一応そのモフモフちゃんたちの仲間だったはずなのにねえ……』

「ヤメテ――!!」


 そう、こいつは俺の過去を知っていやがる。

 小さなころ俺と弟の世話を見てくれたのは、この女なのだ。

 おかげでいまだに、いまいち強く出れないとこがある。


「ったく。あのころは優しいお姉さんだったのになあ……」

『なんかいった?』


 おっと藪からなんとやら。俺は口笛を吹いてごまかした。


『まあいいわ。

 行くんでしょ。明日の『お茶会』、アンタも』

「あーまあ。一応……な」


 一応だが、いまだ俺はクロノの関係者ではある。

 公の名前で招待をされれば、顔を出さねばならない立場であったりする。


『リュウジ・タカシロ来るらしいわよ』

「へー」

『むしろ今回は彼がメインの招待客だとか』

「マジ?!」


 俺は思わず振り返りそうになった。

 あぶねえ。いやどう言う風の吹き回しだ。

 明日、個人的な茶会を催すファン ィユハンと、立国党のリュウジ・タカシロはけして仲のいい間柄じゃない――むしろ険悪と言った方が納得できるレベルだった。


「いや……なんでだ?」

『モフモフちゃん効果でしょ?』

「そうか!」

『秒で納得したし?!』


『銀子ちゃん』は笑いだした。

 けれど、やつも実のところそう思っているのは想像に難くない。

 やつが『シルバー』から『銀子ちゃん』に戻ったのは、そのもふもふちゃんたちのおかげなのだから。


 ともあれ、あとは他愛もない会話のみ。

 よく知る通用口まで彼女を送りとどけ、携帯用端末(ポタプレ)を通じて代金を受け取ると、俺は今日の仕事を切り上げることにした。



 翌日。

 ファン家の庭園に赴いた俺は仰天した。

 四党党首とリュウジタカシロがそろい踏み。しかもマジにたのしげに談笑している。まるでこれまでのギスギスなんか、夢か芝居かVRゲームかというレベルの和やかぶりだ。


 いやどうなってんだアレ。今日だけは『黒スーツのビシッと決まった実業家』というセッティングの俺は、弟――トシマサにすすっと歩み寄り事情を聴いた。


「マサ。どうなってんだアレ」

「うーん。なんていうかな。……

 リュウジ殿、辞めてからなんか超さわやかになったの知ってるよな?」

「おう」

「そしたら、党首様がデレた」

「はいっ?」

「いやそうとしか言いようねえんだよ!! なんかさわやかにあいさつしあうようになったと思ったらさあ!! あっつーま距離詰めて茶会の企画しーの、わざわざ直接好きなお菓子聞きーの!! まるでイケメン攻略RTAでも見ているかのような」「聞こえてますよ、クロノくん?」「わあああっ?!」


 地獄耳のィユハンがニコニコとマサを招く。これはいじられルート確定だ。

 でもマサもまんざらでもない様子なんで、不肖の兄は笑顔で見送る。


「兄上殿もお久しぶりです。ご息災でしたか?」

「え、あ、はいっ」


 いや見送れなかった。

 そんなわけで俺もしばし、うそといつわりとほんのちょっとの真実をまぜこぜにしたビジネスばなしを披露するハメに陥ったのだった。




 ――『リガー』/トシカズ・クロノ。

『みどりの大地』有力者一門クロノ家の次期当主となるはずだった男。

 年子で実力も伯仲した弟トシマサとの跡目争いを避けるため家を出た過去がある。

 すでに争いは決着しているが、エージェントの方が性に合うので戻る気なし。

『愛する魔王様がたのアッシー君』として、かっちょいい車での登場が必要な時は馳せ参じ、世界のどこにでも送迎を行う。

 それ以外の時には個人タクシーやってみたり、いろいろ自由に暮らしている。


 ――『サイレントシルバー』/銀子ちゃん・銀ちゃん

 クロノ家の次期当主トシマサの右腕。

 魔王戦を契機に、『坊ちゃん』ことトシマサと再び、こころの絆を取り戻した。

 心通じた昔馴染みとして語らううち、ゆっくりと恋の芽が吹き、ただいま交際中である。


 ――トシマサ・クロノ。

『みどりの大地』有力者一門クロノ家の次期当主。国会議員。

『サイレントシルバー(銀ちゃん)』を使ってイツカナたちに敵対したが、ことごとく失敗。それを通じ忘れかけていた絆、ほのかに抱いた恋心を思い出す。

 数年後、大恋愛ののち、彼女を妻に迎えることとなる。


 ――ファン ィユハン。

 世界をまたにかけたネットワークを有する商家『ファン』の現当主。

 終戦により政治的対立を終えたリュウジ・タカシロ氏に自ら接近、友情を築く。

 表の社会への『復帰』をのぞむエージェントたちの支援をしつつ、自らの分身であった『ユウミ』と、ハジメ氏の恋の行方を見守っている。

 自分もやっぱ、レモンさんに真剣にアタックしよっかなーと考え中。




 そのしばらく後。

 俺の携帯用端末(ポタプレ)に、不可解なメッセージが届いた。

 いや、内容は、単純な送迎依頼なのだが――


「いやいやいや?!

 なんだってファン家のご当主様が?!

 わざわざお抱えでもねえ男に運転頼む?!

 部下の兄貴にあたるエージェントだから、そういう理由でいらっしゃいますかね??」

『はいまさしくそのとおりです☆彡

 いやあ、みんなその日に限って休暇を申請してきまして。

 実家の親御さんが急病とか、急な法事の予定とか、急なハライタとかでは仕方ありませんよね☆彡』

「それぜってー嘘だってわかってるだろアンタ??」

『てへっ☆彡』


 画面越しにてへぺろをキメる成人男子。別に可愛くねえ。


『まあそういうことで。報酬はもう振り込んでおきましたから』

「いやまてなんだこの額――?!

 アレか?! 実は暗殺の依頼とかいうアレはなしだからな?!」

『いえいえそんなぶっそうなお話ではありませんて。

 ただ、ちょーっと観察ターゲットをしっかり尾行してほしくって、なおかつぜーったい彼らにはみつかりたくないと、ただそれだけのお話です☆彡』


 なるほどつまり。


「覗きですか」

『覗きです。』


 ほう、なるほどなるほど。

 つまりやつの分身であるお嬢さんと、やつの親友のラブラブデートをこっそりと見守りたいと。

 悪びれもせずに答える様子に毒気も抜けた。


「了解、じゃあ当日指定の場所で」


とりあえずリアルの状況はひと段落しましたー!!


なんでこんなハンパな切れ方になったかというと、ちょっとシリアスな恋物語風になってしまって『これ……違う!!』とリテイクしたためです。

いつかお目にかける機会がありますれば。


次回、続き。海を見るラブラブカップルと、それを物陰から見守る(※一部バレている)たくさんの人々の一幕です。

どうぞ、お楽しみに♪

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