The C-Part_40秒の、そのなかで~はじまる、新たな日々!(6-2)~
「マジ?」
「え、一緒じゃないの?」
「……ふられた?」
「マジか――?!」
「だあああ! ちげー! ちげーから!!
そもそも俺らとアンナはべつに付き合ったりしてないからな振る振られるの間柄じゃねーからなOKッ?!」
イザヤが立ち上がってビシッとストップをかける。
ユウが落ち着いた様子でまあまあと声をかける。
「みんな、落ち着いて。
確かに俺たちは、アンナを月萌に残してソリスに行ってくる予定だよ。
でも、それはむしろ、アンナからすすめられてのことなんだ」
「え………………?」
聞けばこういうことだった。
「アンナはね、ホントに俺たちを見込んでくれてる。
だからこそ、行ってこいって。
なにものにもとらわれないで済む、若いうちに世界を旅して。強い人とも戦って。いろんなものを見てでっかい男になってこいって、言ってくれたんだ」
「まー、頭いいやつだと留学……てことになるんだろうが、俺らの取り柄はバトルだからな。
そんで、武者修行、てなわけよ」
「おー」
「おー」
なんて、スケールのデカい話。
それにオッケー言っちゃうこいつらもまたすごいけど。
「そういうことだったの……ごめんね、ついさっき小耳にはさんで『ええっ』て思ったものだったから」
「あー、それまさに今日言おうとしてたんだわ」
「ごめん、心配かけたね。でも、だいじょぶだから」
「あ、つかじゃあ、ヴィー子ちゃんはいっしょなのか?」
ルーファスの問いに返ってきたのは、はんぶんYESのはんぶんNO。
「いや。分体をひとり遣わしてもらうことにしたんだ」
「やっぱヴィー子は、おれたちみんなのヴィー子だからさ!」
ふたりの間にすわって、とうの本人もはにかんだ笑みを見せている。
いつも物陰からちょっとジト目で見てきた彼女も、こうしてみると可愛らしい。
「ルーとアウレアさんはここで就職すんだって?」
「おう、なんかこの島、肌に合ってな!
力仕事も警備もいっくらでも仕事あるし、もう移住することにしたんだ!」
「あたしも有志で工房立ち上げることにしたの。
ここまで一緒にやってきたみんなと離れがたくってね。
島の設備の拡充にかかわる契約してて、当面仕事には困らないから助かるわ」
ルーファスとアウレアはこの島が本当に気に入ったらしく、ホクホク顔。
「いっちゃんたちもどーよ? トラオと仲いいだろお前たちさ?」
「ここでも『パウカルト』需要あるかなあ? だったらうれしいけど」
「だね!」
兼業クラフターのイツキとザインも、明るい表情だ。
イツキは強化護符の一種『パウカルト』を作れる。俺もそいつのお世話になったけど、一枚でワザの威力や到達地点を変えられるこいつはマジに便利なものだった。
ぶっちゃけこいつのおかげで俺は、万年三ツ星を脱却できたと言っていい。
そしてそんな俺のバトルを見て、『パウカルト』の需要も跳ね上がった。
『ヴァイスシュバルツ』の匠の技の真似はできない、と考えていた連中も、俺の使い方を見て『これなら』と思うようになったというわけだ。
俺は『ヴァイシュバ』のお得意からアンバサダーに。同時に、ふたりの仲間になった。
「ねえ、そしたらさ?」
「一緒に来てくれるかな?」
はたして二人は、俺にそう言ってきて。
俺はもちろんとうなずいた。
『白兎銀狼』『しろくろウィングス』が卒シビを行う日、俺も試合を控えてた。
こんなん、絶対食われる。でも、出なければTP不足で降格確定。
果たして俺はその前日に胃を痛め、ドクターストップを受けた。
もうだめか。そう思った時に助けてくれたのが、ハルキだった。
世の中、こんな奴もいるんだ。
感動した俺は、ハルキのいる『うさねこ』に加入した。
と、いっても俺は、あまり集会とかには出ない、いわゆる『非中核メンバー』。
単騎のやつのサポートに入ったり、祝勝パーティーとかのはじっこにちょこっと参加して、かんぱいと祝杯をあげたりはしたけれど……
とくにすぐれたところも、強い信念とかもない俺は、どっちかというとその他大勢のまま、ぼちぼちとTPを稼いでいた。
そんな俺に転機が訪れたのは、イツカナの『追放』。
五ツ星、四ツ星がどんどん『動員』されては、『魔王軍』にくわわってった。
そうなると必然的に、平々凡々な三ツ星もそれなりに張り切らなければ、立ち行かない訳で。
さえない俺の出番も、必然的に増えた。
かといって、急に強くなれるわけもなく。
プレッシャーがまた胃にき始めたころ俺は、学園に戻ってきたザインとイツキと話す機会を得た。
なんだか意外と話が弾んで、そのまま流れで『パウカルト』を試し、便利さに目覚めたというわけだ。
そこからは、頑張る日々。
第七陣までの一週間は、これまでの一生で一番働いたかもしれない。
でも苦しさは、あのときよりマシだった。
『一人』で胃の痛みをかかえ、ドクターストップで絶望したときに比べたら、ぜんぜん。
それはたぶん、俺がもう『一人』じゃなかったからだ。
俺はいま、みんなと一緒にここにいる。
ともに学び、働き、戦った仲間とともに。
いつも未来が不安で、胃を痛めていた俺だけど。
きっと、なんとかやっていける。いまは、そんな気がしているのだ。
――フユキ、コトハ。
アルム島のお食事処を手伝うかたわら、カレッジで経営や調理、衛生管理などを学び、お店を継ぐ準備を着々と整えている。
ナツキがこのごろ『フユキ、ちゃんとコトハおねえちゃんをしあわせにしてくれる?』と聞くので、決意が定まるまでそっと見守っている。
――ナツキ。
フユキの両親に養子として引き取られ、フユキの弟となる。
かわいく明るく気立てよく、両親や周囲の人に愛される。
家やお店を手伝いながらも、『漢の修行』と勧められ、小学校に通うように。
勉強も運動も小学校レベルをかるくぶっちぎっていたけれど、友達と過ごす日々が楽しくて、宿題を教えたり、一緒に遊んだり、ふつうの小学生ライフを満喫。
コトハをめぐっての恋のさや当てにおいては、ここのところあきらめモード。新しい恋探そうかなあと考えている。
――アキト、セナ。
高天原学園の教師を目指し、カレッジで教職課程を受講。四年後念願かなって学園に採用となった。
ときには生徒といっしょにハメを外し、まとめてノゾミに叱られることもあるが、友のように親身によりそい、誠実に接する姿勢はたしかな信頼を得ている。
なお恋人募集中だが、応募者投資がけん制しあったり、はたまた『この二人でいるのが尊い』と思われちゃったりして、そこだけはまだまだ前途多難。
――ヤヨイ。
このしばらくあと、後継者を選定。チカともども四ツ星としての学びに専心したのち、堅実に卒業を決める。
その後、ユキテルからの告白で正式にお付き合い開始。ともにカレッジめざして勉強しつつデートを重ねる、幸せな日々をすごしている。
――ロアン。
のんびりやさんの彼だが、なんとカレッジにスパッと合格。最短距離で念願の『給食のおじさん』になる。
とんでもなくイケメンの彼をめぐり、調理室は連日大バトル……なんてことにはならず、むしろ二秒でおばちゃんたちになじんで違和感ゼロのほのぼのライフを送る。
なお就職先は『おやつもつくりたいから』という理由で幼稚園を選んだ。
――ミキヤ。
優しすぎるロアンを心配し、死ぬほど勉強してカレッジに同時入学。一時は『俺もやつを見守るために給食のおっちゃんになるべきか……?』と悩んだが、『そんな理由で一生のしごとを決めちゃだめですよ?』と当の本人に諭されて、当時興味を抱いていた研究分野への道を歩む。
でも結局、いろいろあって同居している。
最近ロアンが『理想の嫁』すぎることに気づいてしまい、どうしたものか悩み中。
――クーリオ、ソウジ。
ふたりともに国立研究所で働く。
クーリオは『好きこそものの上手なれ』のことばどおり、食べ物系に実力発揮。たくさんの発明、発見をする。
なおその過程で『あじみがかり』ソウジにいろいろな耐性が付いたりしてしまったりしたが、本人はあっけらかんとしており、そのさわやかな漢ぶりが賞賛を集めた。
なおソウジの『双剣講座』はわかりやすいと人気で、双剣ユーザー増加に大きく貢献。ベスト・ジーニストも受賞した。
――トビー、アッシュ。
国立研究所本部からのヘルプ要請でアルム島支部より戻り、しばらくたまった仕事を片付けていたが、その間も休日にはアルム島へ。趣味をかねて島内建築に携わる。
業務が落ち着いたのちは島愛を認められ、ふたたびアルム島支部へ。建設チューバーとしてチャンネル開設、建築人口増加を目指して配信をはじめたものの『あんなんまねできねえッ!!』と信者が増えてしまう結果になったりした。
――アウレア、ルーファス。
もともと求職中だったが、島に移住&就職。アルム島発展の立役者として活躍。
数年後、周囲の祝福のなか結婚。領主館前庭で盛大に行われたガーデン・ウェディングはネット中継され、魔王島ウェディングのさきがけとなった。
なおアウレアはこれを契機にウェディングプランニングの勉強を開始。よきプランナーとなる。
――イザヤ、ユウ。
アンナのすすめでソリス留学を決める。
各地を巡って武者修行。ゆく先々で事件に出くわすが見事解決、最強のなんでも屋としての名声を得る。
その間も、ときおりアンナと連絡しあい、絆を確かなものに。
月萌帰国後、さらにパワーアップしたアンナと再びバトルする予定だが、観覧席の予約はすでにいっぱいである。
――イツキ、ザイン。
匠の戦い方をするふたりとして、コアな人気のあった兼業クラフター。
逆に言えば、かれらの戦いを支える『パウカルト』は有用性をあまり認識されていなかったのだが、とある少年と出会ったことで状況は一変。
『パウカルト』の作り方、活かし方を卒業前から広めることになる。
――とある少年、あらため、リオン。
かつてハルキに窮地を救われた『ハライタ少年』。
彼との出会いで『うさねこ』加入。イツキとザインとの出会いで『パウカルト』に目覚める。
卒業後は『パウカル・エヴァンジェリスト』として、世界をまたにかけて活躍。
高天原の遅咲きヒーローとして、生徒たちの希望の星となった。
HAHAHA!! 20人ですよ奥さん!(誰)
分けてよかったほんとよかった。
おかげさまで用事も順調に進んで胃が楽になってきました。
しかしほんとに遅咲きやなリオンくん。
「俺がまた出番あるとか思いつきもしなかった^^;」
気になってたけど機会つかめず、やっと出してあげられました。
あとはチームBsなんだよなあ……
次回、かもめ島の仲間たちと、それを訪ねる人たちの一幕の予定です。
ゆるゆるお付き合いくださいませ♪




