The C-Part_40秒の、そのなかで~はじまる、新たな日々!(6-1)~
さて……話者の少年は何者でしょう?
@アルム島のお食事処~とある少年の場合~
魔王島あらため、アルム島に新規開店する食事処。そこに今日は有志が集まっている。
あのころ、学園に残ってともに頑張った仲間と、ここで戦ったメンバー。
そのうち、都合のつくものが集まっての、たのしいランチ&お茶会である。
おいしい島料理を食べ終え、お茶とお菓子をお供にまったり言葉を交わすうち、話題は『今のこと・これからのこと』になった。
「フユキとコトちゃんとナツキは、このお店で働くんだよな?」
「ああ。
まずはアルバイトとして、学業に無理のない範囲でだが。
それでもできる限り月萌の本店にも行って、たくさん勉強させてもらうつもりだ。
料理はコトハたちだから、俺はその他。できることは何でもやってみる」
「『たち』?」
アキトがハナシを振れば、フユキは相変わらずイケメン全開でアンサー。
その一部に疑問の声が上がると、やつとコトハさんの間にはさまって腕を抱くナツキが、かわいらしく笑った。
『えへへ。オレねっ、将来のゆめをきめたの!
お姉ちゃんや、お父さんみたいなすてきなお料理ができるひとになりたいんだ!
おなかがすいてるひと、みーんなをしあわせにできるような、そんな料理人に!!』
「父も、筋がいいとほめてくれてるんです。
いまは、無料でクッキーやスープをお出しして、ご常連の方に少しお味を見ていただいたりしてるんですけど、皆さんおいしいって。
今日のクッキーも、ナツキが焼いたんですよ」
「おお……!!」
コトハさんが優しく頭を撫でてやると、ねこみみピコピコ嬉しそう。
この構図、まるごとぶっちゃけ尊い。見てるだけで幸せになる。天使か。天使だ。
とたん、みんなめっちゃクッキー食い出す。俺も負けない。うまい。おかげであっつーまクッキーは売り切れた。
お茶を片手に、話は進む。
こんどはフユキが逆に問い返した。
「そういうアキトとセナはどうなんだ。
カレッジに入ったら教職課程を取りたいと聞いたんだが」
「ああ。
ウチってさ、まだまだ先生足んないじゃん。
何だかんだ、お世話になったしさ。このさきノゾミ先生が産休とか……まあ二回目以降になっちゃうかもだけど、とったときにでもちょっと、たしになれたらなって」
「みんなのその後も気になるし。
それこそノゾミ先生みたく、生徒を支えてやれる先生になりたいって。
まあ、……柄じゃないかもだけど」
セナの照れた言葉に、そんなことない、とみんなが口を揃える。
確かに、以前のセナは若干とっつきにくかった。綺麗だけどめっちゃ気が強くて、無断でモフろうとしてひっぱたかれたやつもいると聞くとなおのこと。
けれど、ミライとの接触が増えた頃からか、丸くなったと噂されるようになった。
実際、うさねこ首脳となったセナは、そんな怖さのない、ずっと話しやすい男になっていた。
俺がここに今いるのも、一つにはそれがあるのだろう。
「セナさん、お顔が優しくなりましたよ。お話の仕方も。
いまではまるで、みんなのお兄さまのようです」
「やっぱり、ミライさん効果ですかね?」
ヤヨイさん、チカさんのことばにセナはうなずく。
「俺もそう思ってる。
なんだろな、優しくなっちゃうんだよな、ミライといると。
ちょっと触られたとかなんとか、つまんないこと怒る気なくなるっていうか、むしろミライにならいくらでもモフってほしいかもっていうか」
「ってかいまのセナぜんっぜんスキねーから勝手にモフるとか無理だし」
「アキトが隙だらけなんじゃなく?」
「だっておまえたちみんな仲間だもーん。それを相手にピリピリする意味ないし!」
「よーしみんなー、アキトモフるぞー!」
ニコニコ笑う馬首脳に、イルカ首脳もいい顔に。
俺たちは謹んで、アキトの金色サラサラのたてがみやちょっと細めのうまみみ(さすがにしっぽは遠慮した)をモフモフさせてもらったのだった。
ひとなつっこい首脳がツヤツヤのサラッサラ(一部三つ編み)になったところで、話は再開。
セナがやさしく問いかける。
「ヤヨイちゃんとチカちゃんは、もうすこし高天原にいるって聞いたけれど、そうなの?」
「はい。わたしたち、まだまだ学ばなきゃならないことありますから。ね、チカちゃん」
「ええ。
せっかくみなさんが平和にしてくれたこの世界なんですし。
こんどはわたしたちが、世の中をよくするお役に立ちたいですから」
「『マーセナリーガーデン』を引き継いでいただく方も、ちゃんと見つけませんと。
そこは俺たちを見習わないでねと、先輩方にも言われてますので」
「えらいわー……」
彼女たちは、俺たちより年下だ。そしてかわいい。
まるで妹みたいなのに(つかチカさんはチナツのリアル妹だ)、こんだけしっかりしてる。
「ユキテルも冥利に尽きるだろうねー?」
でも誰かが言うと、ヤヨイさんはぱっと赤くなってしまう。
あわあわ言い訳をしだすところが可愛いけれど、こういうのはほどほどに。
クーリオがうまく話題転換してくれた。
「はいはーい、かわいこちゃんタイムここまでねー。
とりま、ろあたんとみっきー! ふたりはどうするつもりよ?」
「うーん、私は小学校とかで給食のおじさんになりたいかな?
お料理すきだし、お掃除もすきだし、こどももすきだし……」
ロアンがニコニコのんびりほんわかと指を折る。
マジメな顔してるとキリリッとしたイケメンなのに、いったいどう表情筋つかったらこうなるのか。いまだに謎だ。
そのとなりではミキヤが器用ゆえの迷いを口にする。
「俺はなー……器用貧乏ってか、特化したものなんなんだろな。料理は好きだけど、一日それにかかわってたいかってーとそこまででもないし。
まあ……クラフトとか警備とかでバイトしながら、カレッジでもっと勉強してみるかな。
そういうクーリオは研究所で料理系やるんだろ?」
「おうよ! どーせならしごとにしてみないかって!
ちな、ソウチャンはあじみがかりな!」
「いや警備とかもするからな?」
クーリオのバディのソウジが、さわやかに苦笑する。
「あと、高天原で双剣の使い方レクチャーしてくれとかも頼まれたりしてるから、そのへんもぼちぼちな」
「おー」
「双剣使いめずらしーからねー」
「なんでかな、そんなに難しくないと思うんだけどなー。でも双剣仲間増えてほしいし頑張るわ!」
「おー!」
空色の髪に負けないくらいさわやかにキメる。おもわず拍手した。
「仲間っていえばな~。建築仲間もふえねーかな~」
「ミキヤも研究所くればいーじゃん。基地設営んときいい腕だったし」
トビーとアッシュ、建築特化の異色バディが言いだす。
ミキヤはまんざらでもなさそうだ。
「んー。バイト募集あるんならいってみるかなあ。
あ、とかトラオにクラフト仕込むってよくね?」
「あー」
「あー」
だがそのナイスアイデアには、驚きの返事が返ってきた。
「それなー。いちど試してみたけどあいつ、クラフター適性ほぼほぼなかったわ」
「マジ?!」
「マジマジ。温泉部のあれとかはあいつのリアルスキル」
「あんっだけ炎とか操ってるのになんでかなー……ぶっちゃけイズミの絵の立体化みたいなもんできてきて即時リアクトブレイクしたわ……」
「ひえええ?!」
イズミの絵の立体化。考えただけでトラウマになりそうだ。
「ま、まあ。そんなわけでミキヤさ。建築科とかでなんかあったら、声かけさしてもらうわっ!」
「休みの日はこっちきたりもしてるし、また話そうぜ」
「さんきゅーでっす! よろしくでっす!!」
「ありがとうございます、お世話になります」
トビーとアッシュがいそいで話題を締めくくると、ミキヤとロアンはそれぞれの仕方でぺこりと一礼した。
そのとき、アウレアさんが思い出したと手を打った。
「そうだ、イザヨイくんたち!
聞いたわよ! ソリスに武者修行に行くって!
アンナちゃん一緒じゃないって……どうして?」
ハッ! 顛末書いたらこれとんでもねえ長さになる! と気づき、二話にわけました。
少年が何者か……マニアの方にもわからない自信があります(アカン)
なんたって登場以来、一度もでてきてませんから……
次回、つづきと答え合わせです。
どうぞ、よろしくお付き合いくださいませ♪




