The C-Part_40秒の、そのなかで~はじまる、新たな日々!(2)~
@高天原・とあるお屋敷~ミツルの場合~
俺はかつて、ノゾミ先生とともにこのお屋敷にお邪魔した。
カケルをさがして。結果は空振り。
けれど、ご主人たちは心優しく『これも何かの縁だから、何かあったら力になる。それらしい子を見つけたら、お知らせしますよ』と言ってくれた。
結局かれらの情報提供よりさきに、ヴァラさんによってカケルは見つけ出されたのだが……
発見と感謝を伝えに行けば、かれらはこころから喜んでくれた。
俺たちをずっと見守ってくれて、試合もライブも、お屋敷のみんなで見に来てくれて。
いつしか俺たちは、互いに交流を持つようになった。
その関係は、俺たちが魔王軍となったあとも変わらず……
何度ももらった寄付は、世界の敵となった俺たちを支えてくれた。
そして、今度も。
俺たち『オコミツふぁいぶ!』――ぶっちゃけ『アオゾラミッツ』+『おこんがー!』のメンツで結成した五人グループだ――が企画しているライブツアーに、スポンサーとして名乗りをあげてくれた。
俺たちは連絡を入れ、日時を合わせてお屋敷にお邪魔した。
感謝を伝えるために。
俺たちに優しくしてくれる、大切な先輩に会いに。
「でも……なんでここまでしてくださるんですか?
いつも、ご親切にしてくれて。魔王軍へのご寄付も、たくさんいただいていたし……」
アオバが率直に問えば、ご主人はああ、とほほ笑んだ。
「そういえば、話してなかったね。
わたしと亡き妻は、ずっと昔、歌手だったんだ。
君を、君たちを見ていたら、そのころを思い出したんだよ、不思議と。
妻の声が聞こえた気がした。『この子たちを応援してあげて』と。
その言葉の通りにしていると不思議と、彼女もそばで一緒に微笑んでくれている気がして……
わたしたちは結局、子宝に恵まれなかった。だから子や孫の世代の、若い歌手たちを、応援したくなるのかもしれないね」
優しい瞳、温かい声音で語られるその話を聞いてたら、じんわり目の前が曇ってきてしまった。
みればアオバもカケルも、うるうるしてて。
モモカちゃんとミクちゃんは、ハンカチを目に当ててる。
亡き奥様がむすんでくれた、ふしぎな絆。
そのおかげできっと、いまの俺たちはある。
それを思うと、胸の奥からメロディが湧き出してきた。
そっとやさしく、あたたかく、よりそうような愛の歌が。
――匿名希望の老紳士A。
若かりし頃は歌手。妻とも歌手活動で愛をはぐくみ、結婚。
引退後は静かに暮らしたいと素性を伏せ、居を移していた。
あくまで一般人として、ミツルとその仲間たちを応援。
推し活と、あたたかな交流は生涯にわたり続く。
ミツルから彼に贈られた『窓辺の天使のパヴァーヌ』は不朽の名曲。
――メイドアンドロイド(仮名B)。
もと歌手の老紳士が妻を亡くし、落ち込んでいるときに親戚からすすめられたメイドアンドロイド。
老紳士は妻にどこか似た彼女を娘のように可愛がり、彼女も紳士を温かく支えた。
偶然にもソラににていたことから、ミツルたちとの交流のきっかけとなった。
彼女自身もミツルたちのファンだったため、主人とともに推し活を楽しんだ。
@そのしばらく後。月萌空港~ミクの場合~
いったいどうやったら、あたしは『差別化』できるのだろう?
そんなことをデビューのころ、ひそかに悩んでいた。
アオバは悩んでいたことがある。
自分のパフォーマンスには、あたしたちほどの価値がないのでは、なんて。
そんなことなんかぜんぜんない。
なぜってアオバのダンスは――いや。
アオバ本人がもうすでに、きらきらしていたのだから。
むしろ、アオバたちに救ってもらったのだ、あたしの方が。
『しろくろウィングス』の妹グループ的位置づけで、デビューの決まったあたしたち。
プリティ系、なんて言ってもらってはいたけれど、あたし自身はちょっと悩んでた。
シャキシャキサッパリ系と、ふわふわキュート系のふたりの組み合わせという類似点、そして、アイドルとしての、さらには闘技者としてのポテンシャルの差。
へたすると、悪い意味での『妹』になりかねない。
モモカはまだいいのだ。ひたすら天然聖女系のルナに対し、モモカはかわいいくせにとんでもない破壊力を秘めたプリティ肉食獣系。違いと魅力がハッキリしている。
それに対してあたしは……
実力は確かと言われつつ、戦う姿はルカに比べて地味。見た目も、性格も、ルカに比べたら『ふつう』。
悩んでいた。いったいどうやったら、あたしは『差別化』できるのだろうと。
それがすっと消えてなくなったのだ。
ミツルが曲を書いてくれて、アオバが踊ってくれたら。
ああ、これが。これがあたしたちのステージなのだ。
『しろくろウィングス』でも『ミライツカナタ』でも、『うさもふ三銃士』でも、このカタチにはならない。
あたしたちは、あたしは、これで、いいんだ。
そんなことがすっと胸に落ちてきて、そこからはただあたしはあたしとして歌い、踊ることができるようになった。
そのうち『妹グループ』という冠も、つくことがなくなっていった。
そうして、今。あたしたちは本格的に旅立つ。
いつも一緒だった、いつも助けてくれた『しろくろレモン』の翼の下から飛び立つのだ。この、『オコミツふぁいぶ! 単独ワールドツアー』で。
その背を押してくれたのは『しろくろレモン』の三人だった。
三人とも、わかっていた。後発グループゆえの悩みも。
わかって、見守ってくれていた。
それを知ったらもう、涙ボロボロで。
心底から幸せだと思った。このひとたちと、同じステージを踏むことができて。このひとたちと、友と言える間柄になれて。
「いってらっしゃい。がんばって!」
「オンエア見るからね!」
「たのしみにしてる!」
忙しい中予定を合わせて、見送りに来てくれたみんなの笑顔を見ると、なんだかまたウルウル来てしまう。
両親たち、先生たち。ソレイユプロのみなさん、支えてくれた支援者の方々。
先日やっと共演できた『学園モンスターダンサーズ』とその関係者さん。
ツアー終了時に共演予定の新グループさん。
学園で、『魔王軍』でいっしょに活動したみんな。
その真ん中にいるのは『しろくろレモン』、『ミライツカナタ』、『三銃士』。
ふと気が付いた。ルカやルナ、アイドル仲間たちがあたしたちを見る目は、最初から『妹』を見る目じゃなかった。
いまとおなじく、対等の仲間を見る目だったと。
わきあがる、いっぱいの嬉しさに包まれてあたしは、全力で手を振った。
「いってきます!」
がんばってきます。そして、もうひとまわり大きくなって、帰ってきます、と。
――ミク、モモカ。
一ツ星の一般生徒からたたき上げ、悩みつつ成長してきたふたり。いつしかファンからの相談が多く寄せられるようになった。
『親身にこたえてくれる』『心にしみる』と信頼が集まり、お悩み相談チャンネルはライブ配信並みの人気コンテンツに。
それぞれミツル、アオバと結婚したのちも、そんなわけで支持は衰えず。
新米ママチューバーとして奮闘する姿が、世の母親たちの人気を集めた。
――アオバ。
ミクに好意を寄せつつ、意見の相違からバディを解散した過去があるが、想いを通じてからは順調に交際をつづけ、初ワールドツアー後にプロポーズ。数年後いろいろあったのちに結婚した。
元バディのミツル、ソラ (カケル)とはその後も仲良し。
ときどきちょっとヤキモチを焼かれつつも、よきパパとなる。
――ミツル。
いろいろあってずいぶん前向きになったけれど、なにかとモモカにひっぱられてく構図は相変わらず。
『自分には前世の責があり、それにつきあわせるわけにはいかない』と一度は交際を解消しようとしたが、逆に『ミツルくんの責任はわたしの責任よ!』ときっぱり言われる。
最後にはルクに『前世の責任はもう十分果たしてる、あえて言うならあんなにもお前を愛し支えてくれる女性を幸せにすることこそが、いま果たすべき責任だ』と説かれ、モモカにプロポーズ。
その後は月に居を構え、作曲やライブなどの活動を行い、前世の仲間も現世の仲間も分け隔てなく心を癒し、幸せを紡いだ。
――ソラ (カケル)。
自分なりに『前世の責』の償い方を考えた末、その高い3S憑依適性を生かし、信頼のおける人々のもとで各種研究に協力することにした。
一方でその美貌と澄んだ歌声、ちょっと天然なキャラでアイドル・歌手としての呼び声も高く、いつしか『被験者系アイドル』という異色の存在に。
レモンにあこがれたり、ルリアにあこがれたりしながらミツルたちの幸せを見守ってきたが、そんな彼を見守ってきた女性と結ばれた。
――アマミヤ ショウト。
カケルの実父。やっと帰ってきた息子を優しく見守る。
ライブには必ず参戦。愛する妻、『サイレントシルバー』の暗躍で仲良くなったマシバ ユウト氏やその家族とともに、元気にペンライトを振る。
隣家の壁がまぶしくて目が痛い(頭までいたい)今日この頃です。
執筆に影響出てきてるので模様替えしようかなと考え中^^;
次回、モンスター系新グループと、高天原入学を視野にがんばるシスターズと、それにかかわる人々ひとびと。
どうぞ、お楽しみに!!




