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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_98 終結・魔王戦!~あの月を目指す、その前に~

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The C-Part_40秒の、そのなかで~楽しい宴(3)SIDE:B~

@月晶宮一階パンケーキショップ『めがみさまのおきにめすまま!』~トラオの場合~


 今日は、月晶宮のパンケーキ屋を借り切ってのパーティーだ。

 招かれたのは『エルメスの家』の子供ら。主催は、以前やつらにパンケーキをみやげにもってったハルキとエルメス。

 俺とサリイ、ハルオミとナナは、協賛者兼友人としての出席である。

 もちろんほかにも協賛者やゲストが来ているが……


「来てくれたのね、シィ! ありがとう!」

「こちらこそお招きありがとう! エルにまた会えてすごくうれしいわ!」


 そのひとり、シーナが入口から現れるや否や、エルメスは走り寄った。そのまま笑顔でハグ。

 めっちゃ仲いいこの二人、エルメスのカレッジ留学の時のバディなのだ。

 ともに過ごしたのは一か月、だが二人の間には固いバディシップが育まれていたというわけだ。


「わー、シーナおねえちゃんだー!」

「ほんものだー!」

「びじーん!!」

「とうといー!!」


 チビどもはわっとエキサイト。一部『尊い』とか言ってるやつもいる。どうしてそうなった。

 だが、突撃するやつらはいない。事前にしっかり言い含められていたためだろう――『ちゃんと食べ終わって、お口とおててをきれいにしてから遊びましょうね?』と。

 やつらにとってエルメスは恩人で、いつも愛情をくれるたいせつなひと。その言うことはいい意味で『ゼッタイ!』なのだ。


 こんだけ大好きな人物に婿、なんていったらそいつはめっちゃ憎まれそうなもんだが、ハルキは最初から意外なほど好かれていた。

 やつがけなげで強くて可愛いやつだ、というのもあるだろうが、決定打は『俺も『エルメスの家』を手伝いたい、だから結婚しても、ステラに住もう』と言ったことだろう。


 最後まで抵抗していた少年とも、その後何度か『エルメスの家』を訪問するうち仲良くなった。

 というか、むしろやつが一番ハルキべったりになってたりする。

 今も「やっぱげんちでたべるとかくべつだね、きーにいちゃん!」なんて全開の笑顔見せてやがる。クッソ可愛い。

 俺にはだいたい厳しいが、子供には優しいサリイも、それを見ていっぱいの笑顔。こっちも正直、クッソ可愛い。直視してられなくて目をそらした。


「おーやー? トラちゃん青春してるなー?」


 と、シーナが寄ってきた。そう、シーナは俺たちの旧知だ。


「べべっべつに俺はその……」

「いーっていーって。

 ふたりほんっとに仲良くなったのねー。ほのぼのするわー」


 くそう、温かい目で見守んなクソはずかしい。

 サリイはというと「シーナさん、しばらくぶりです!」とあくしゅあくしゅ。


「楽しそうね、サリイも」

「ええ。やっぱり子供ってかわいいですから。

 みんな、あんなに嬉しそうにして……ほんとうに可愛い」

「やっぱ子供たちにはお城でのメガパーティーより、こういうののが楽しかったかもね!

 ありがとね、ステキなパーティー企画してくれて!!」


 と、俺たちの後ろから、聞き覚えのある、ありすぎる声がした。

 振り返ると、ここにいるはずのない、いちゃーいけないはずのチビがいた。


「はあっ?! お前なんだってここに?!」

「えー? だってリアちゃんは『エルメスの家』の準レギュラーメンバーなかわいー近所のおんなのこだよー?」

 

 くるくるの金髪をツインテールに。リボンと生地をそろえたおしゃまなワンピースで装い、ぷわぷわのほっぺたに人差し指をぷにっとさしてこっちを見上げる。

 そんなあざとい幼女……に化けた女の正体は、現在結婚準備まっただなかの、ステラ領第二皇女殿下だった。


 いや。いや。

 こいつついこないだ、めたくそ大人っぽくよさげなドレス着てやがったよな?!

 あれは幻覚か。幻覚だったのか。

 俺はステラマリス城で開催された、イングラム家のアルの結婚式を思いだしていた。



 イングラムの茶屋は、ステラ領一の茶屋だ。

 王室御用達の高級茶から、庶民がガブガブ飲めるカジュアルな茶まで広く扱い、茶にも客にも愛情をもって接し、広く愛されている。

 その長男の結婚式なんてったら、そんじょそこらの式場では手に余る。

 そのため、ステラマリス女王陛下が城の前庭を解放。町から、各地から、海外からも人を呼び、盛大に式と披露宴が行われたのだ。


 でかい結婚式にも何度も出ていたが、こいつはそのなかでも文句なくトップクラス。

 ぞくぞく集まってくるのはそうそうたる顔ぶれだった。

 あっちを見りゃロイヤルファミリーとその婚約者まわり(ハルキたちだ)。こっちを見りゃ、六柱に六獣騎士に女神ソレア。ステラ領軍も、上の方から何人か。もちろん女神ステラも星騎士らに守られて列席だ。

 ステラ国会各党党首や党関係の有力者、貴族たち。月萌からも総理イワオのおっさんだに党首たち。セレネもイツカナ&アスカハヤトとともに顔を出している。

 食品業界の重鎮、そのほかいろんなえらいさんや知己、近所の人らがわさわさと。

 一度会った時には病み上がりで心配になる風情だったシンじいさんも、すっかりシャキッとしてタキシード着込んで一族の先頭に立って堂々出迎えてんだからパねえ。


 そこに『エルメスの家』の子供らが、よそゆきの服でめかしこんで到着。

 みたこともねえほどの人の多さに、ワクワクしている子供もいたが、気圧されてフリーズしてるやつ、泣き出しそうなのもいる。

 エルメスが見かねたか『さあ、こどもたちにはお菓子があるぞー!』とまとめて連れてった。


 とりあえずほんとに菓子と部屋は用意してあり、子供たちはスタッフや俺たちといっしょに別室から式を見物し、祝いの料理もそこで食べ。

 どうしても話したい相手がいるやつだけ、先輩の『シエル・ヴィーヴル』『チームBs』同伴でそいつを訪ね、はやめにお帰り、となったのだが……


 その後俺たちは、エルメスから相談を受けた。

 やはり今日は、子供たちに気の毒な事をしてしまったかもしれない。

 なにかそのぶん、楽しませてやれることはないだろうかと。

 知恵を絞って考え付いたのが、このパンケーキパーティーというわけだ。

 今後関係が深くなる『エルメスの家』との懇親会というかたちで。

 イングラムの茶屋に非はないので、負担をかけないつもりだったが察したのだろう、『どうか使って』ととっときの茶葉を提供してくれた。



 おかげでチビどもも笑顔、笑顔。

 さらっと混じってるオミナナ夫妻(結婚してないがあれはもう夫妻でいい)はもう親のよう。オミにーちゃんたちもステラにくればいーのにーなんて言われている。


「しかしほんとあいつら、チビにもてるよな……」

「何言ってんの、一番モテてるのはトラでしょ?」

「そうよ、トラがぶっちぎりの抜群だわ?」


 と、サリイとリンカがころころ笑ってのたまわる。


「はっ? 俺なんか『トラオも(※呼び捨て)遊びに来てもいーんだからな!』なんて言われた上に頭までよじのぼられるんだぜ? プロレス技とかかけられるしよ!」

「こどもは嫌いな人にそんなことしないわよ」

「むかしのトラだってそうだったでしょ? イワオさんがうちにくると、元気のない日でもぱっと起き出してイワオイワオーってよじ登って」

「覚えてねええっ!!」


 なんだと。俺はあのおっさんにそんなことをしてたのか。

 俺は学校に上がるころまでは虚弱なガキだった。生まれたときは半分死にかけで、トラのように強く育つようにと『トラオ』と名付けられたといういわくつきだ。

 そのせいだろう、幼児の頃のことはあまりよく覚えていなかったりする。

 しかしそうか、やつがいつもやけに俺に温かい目を向けてきやがるのはそういうわけだったのか。

 くそう、俺はあいつに今後どういう顔をして会えばいいんだ。つか当然サクラもそのことは知っていただろう。ちっちぇーくせにやけに姉貴面してると思ったらそういうことだったのか。

 やつらも当然、このパーティーの協賛だ。これからイツカナといっしょにここに来る予定である。よし、逃げよう。

 0.0000000000001秒で決意した俺は「わりい、ジジイから着信あったわ!」と言い訳をつけ、会場から抜け出すことにした。


「あ、トラっちー! あとであたしもアルムおじいちゃんとこいくからって! ご招待状渡しに行きたいからっ驚かないでって、伝えといて!」


 リアの声が俺の背中を追ってきた。

 へーへーと返事をし、引っ込みのつかなくなった俺は月晶宮の庭園で、ジジイに通話《コール》をかけてみた。



 ジジイことフォルカ=アルム=クルーガーは、ぶっちゃけ幽霊だ。

 いまでは『島の主』をやってるが、それは俺がなかばむりやり引き留めてのもの。

 ほんとうなら、いつ、ガチに召されてもおかしくない。

 だからこの通話《コール》に、返事はないかもしれない。明日になったら、手紙だけ残して領主の部屋から消えているかもしれない。そんな不安はふとしたときにつきまとう。

 まあ、これがマジに『ゲーム』なら、やつともログアウト後、また会えるとはわかっているが――


『なんじゃトラオか。どうした、こどものころの黒歴史でも暴かれて逃げ出してきたか?』

「ってなんだって開口一番ピンポイントで当ててくんだよジジイ!!!」


 安堵がこみ上げれば、それはまんまツッコミにかわる。


『そりゃーお前のひいひい爺さんだからな!』

「あー。つまり経験者ってわけな」

『で、どうした。そんだけでもないんじゃろ?』

「あ、おう。なんかリアがご招待状渡しに行きたいからヨロシクって言ってたぜ」


 このジジイは、ステラの貴族だ。絶対的上司である王家の人間には、超絶敬意を払う。

 島のことを通じて親しくなったといっても、サプライズ訪問などしたらひええええとなってまんま召されかねない。こういう根回しは必要だ。

 さりげにさりげなく言い切った俺は、携帯用端末(ポタプレ)を耳から離す。

 だが、予測された『ひえええ』は、いつまでたってもやってこない。

 不安になって携帯用端末(ポタプレ)を耳におしつけると、聞こえてきたのはすすり泣き。


「……ジジイ?」

『いや、……嬉しすぎての……

 ワシはとっくに死んだ人間じゃ。なのに、殿下は結婚式にお招きを下さる。

 なんと、……なんとっ……』


 男泣きに泣く声。どうやらうれしすぎて涙腺に来たらしい。


「そうだぜ。だから、その日まで死ぬんじゃねーぞ。

 リアの次はエルメス。姉貴や俺、イツカナだってそのうちやんだからな?

 死んでる暇なんてねえんだからな!」


 もうどうせなら、このまんま生き返っちまえ。そんな想いを込め、俺は携帯用端末(ポタプレ)の向こうに声を届けつづけた。




 ――アルム&レクチェ夫妻。

 トラオたち子孫の支えもあり、第三次試行(最終試行)終了までアルム島の主を続ける。

 なお、ひょんなことであの世から召喚されてしまったティーゲル・フラン夫妻と和解、安心のあまり召されかける一幕もあった。

 島内には夫妻の銅像が建てられ、ガチに幽霊写ることもある、なんなら世間話もできるかもしれないパワースポットとして、毎日世界から観光客が訪れる名所となった。


 ――トラオ、サリイ。

 カレッジ卒業後結婚。在学中から実業家として活躍。あふれる商才とアイドル性を生かし、世界の子供たちの幸せのために尽力した。


 ――イワオ・ゴジョウwith『残雪』。

 なんだかんだで月萌国総理におさまる。

 愛する孫サクラの婿探しですったもんだしつつ、時に『いまいち事務方はあわない』とぼやきつつ、明るく元気な愛され総理として任期を全う。

 一線を退いた後は、『残雪』とともに世界を回って修行と温泉三昧ながら、いざというときには駆けつけて、充実の日々を過ごした。


 ――ハルオミ、ナナ。

 カレッジ在学中に結婚。すっかり通じ合った老夫婦をほうふつとさせるほのぼのカップルとして、学内に幸せを、ときには胸焼けをふりまいた。

 ハルキ・エルメス夫妻を月萌から支え、月萌・ソリステラスの友好につとめた。


 ――ハルキ、エルメス。

 ハルキの十八の誕生日に結婚、公約通りステラに居をかまえた。

 それまでもそのあとも、『エルメスの家』のこどもたちのため愛情を注ぐ。


 ――シーナ。

 カレッジ卒業後、外務関係に就職。

 ソリステラスにエルメスを訪ねたり、ときには月萌に迎えたりと、家族ぐるみの付き合いは生涯続いた。


この人数一話で納められるわけがなかった。

人生とは「あたりまえ」を学んでいく場なのですねわかります(爆)


次回、宴にまつわるおとなたち。

正解のないなか迷いつつ、時に割り切り、時に驚き笑顔をみせます。

どうぞ、お楽しみに!

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